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没入感あふれるエモい体験を。「モネ 連作の情景」内覧会レポート

2024.02.15

没入感あふれるエモい体験を。「モネ 連作の情景」内覧会レポート
「ぜ〜んぶモネ」ってすごくないですか?
2月10日から大阪中之島美術館で始まった「モネ 連作の情景」。最初っから最後までほんとにモネだけ。9日に開催された内覧会をレポートします。

モネは1840年パリに生まれ、少年時代をフランス北部ノルマンディー地方のル・アーヴルで過ごします。1865年、サロン(官展)に初入選するものの、その後落選し続けて生活は苦しかったといいます。1874年に仲間たちと開催した展覧会で「印象・日の出」を出展し、まもなく「印象派」と呼ばれるようになります。
1867年のパリ万博で葛飾北斎らの浮世絵が出品されると、それを見たヨーロッパの画家たちは震撼し、「ジャポニスム」ブームが沸騰します。モネも浮世絵から影響を受けた1人で、技法もさながら、森羅万象、ものごとをとらえる精神的な感覚にまで日本の影響を受けていたのかもしれません。

《睡蓮の池》1918年頃 油彩、カンヴァス 131.0×197.0cm ハッソ・プラットナー・コレクション
©Hasso Plattner Collection

さて今回の「モネ 連作の情景」はそのタイトル通り「連作」をキーワードとする回顧展です。約70点ものモネの作品が国内と海外から集められ、「積みわら」「睡蓮」などをモティーフとした「連作」にフォーカスしながら、私たちはモネという1人の画家の人生を追いかけることができる展覧会となっています。

会場に入って最初の部屋(第一章)で一際大きく目を引くのが「昼食」(1868−1869年)。まだ「印象派」という言葉が存在しなかった時代の、若かりし20代のモネが愛しい人たちとの大切な時間を描いた作品。日本初公開です。
二つ目の部屋(第二章)には「印象派」と呼ばれ始めた頃の、セーヌ川流域を拠点に各地を訪れて描いていた作品が集められています。「モネのアトリエ舟」(1874年)にあるように、モネは舟に乗って川から陸地の風景を描いていたようです。雨が降っても描き続けられるように屋根付きにしたんですって。
三番目の部屋(第三章)には、同じ場所だけれど、時刻や天候、季節を変えて移ろう景色を描き留めた作品が並びます。「あの日、あの時、あの場所」と同じ情景は二度と見ることができないと言わんばかり。テーマごとに並列展示してあるので、モネがその時その場所で何を見ていたのか、そんなことに思いを馳せながら見比べることができます。
英仏海峡に面した観光地、エトルタにある奇岩を描いた「エトルタのラ・マンヌポルト」(1886年・日本初公開)は「ラ・マンヌポルト(エトルタ)」(1883年)と並んで展示されています。波の様子や丸く開いた岩の穴から差し込む光など、見比べているうちに自分がその場に立っているような錯覚を抱きます。
この部屋は海を描いた作品が多いからでしょうか。ちょっぴり北の海風に当たっているようなひんやりとした感覚を持ちました。
さあ、次は四つ目の部屋(第四章)。テーマは様々ですが、いよいよモネが長い画家人生の中で到達した「連作」の手法を見ることができます。1880年代中頃から10年近く描き続けた「積みわら」シリーズや「ウォータールー橋」シリーズなどが並びます。

私が今回、絵の前から離れられなくなったのは「テムズ川のチャリング・クロス橋」(1903年)と「チャリング・クロス橋、テムズ川」(1903年)の並列展示でした。
これらはモネがロンドン滞在中に宿泊したホテルの部屋からの景色を描いた作品です。トワイライトタイムに霧の奥でかすかに見えるテムズ川とそれにかかる鉄道橋の様子を描いています。ほぼ同じ構図で同じ画角のもの。でも色の違いからか、受ける印象は全く違います。
「テムズ川の〜」の方は太陽がモヤ〜っとオレンジ色をしていて、川に差し込み反射するところまでをピンクへのグラデーションで表現されています。
一方、「チャリング〜」の方は黄色い太陽から川面の光は黄緑色までのグラデーションでその一瞬をとらえています。
どちらの作品も穏やかで、汽車から放たれる煙が逆光で白く光り、ず〜っといつまででもぼんやり眺めていられる風景。実際に見たことがないのに、「ああ、確かにこんな時間があったよね」と、まるで自分も同じホテルの窓から眺めていたような気持ちになります。ボーッと全体が霞む中、川面にキラキラと輝く小さな光のビーズたちがゆらめいて見えるのが不思議です。
こういう情景はふっと目を離したすきに、光の加減も明るさも色も変わってしまって、さっき心を奪われたあの瞬間はもう二度と戻ってこないことを知るわけですが、モネは美しいその一瞬を永遠にキャンバスの中にとらえてくれたのですね。この絵を見て受け取る郷愁感というのか、記憶の蘇りによってじわ〜っと心が温かくなるのは、もしかしたら時間に追われる現在の私たちへの、モネからの贈り物なのかもしれませんね。
そして最後、五つ目の部屋(第五章)はモネの集大成、「睡蓮」と彼が愛した自宅の庭に誘われます。
縦型の「睡蓮の池」(1907年)を眺めていると、まるで自分の足元まで池が続いているような没入感を味わえます。
あとは…、多くは語りません。ぜひ会場でモネの大きな愛情に包まれて幸福感を味わってくださいね。

昨秋から1月末まで東京展が開催され、大阪に巡回してきたこの「モネ 連作の情景」は日本初公開作品のほか、東京では展示されていなかった大阪のみ公開の作品が12点あります。勉強や仕事、子育てや介護で慌ただしい日々を送るみなさんだからこそ、1時間だけでもいいから時間を作って、モネからのギフトを受け取りに来てください。
「モネ 連作の情景」
【会期】2024年2月10日(土)〜5月6日(月・休)
【会場時間】10:00〜18:00(17:30最終入場)
【休館日】月曜日(4/1、15、22、29、5/6は開館)
【会場】大阪中之島美術館5階展示室(大阪市北区中之島4−3−1)
【観覧料】一般2,500円、高大生1,500円、小中生500円
詳しくはhttps://www.ktv.jp/event/monet2024/
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miyoka
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