大阪・関西万博(主催:2025年日本国際博覧会協会)では、一部の海外パビリオンレストランに、地域並びに世界で評価されているシェフが関わっています。
バーレーンパビリオンに併設されているカフェのメニューを考案・監修している、Tala Bashmi(タラ・バシュミ)シェフもそのひとり。34歳の若さながら、数々の賞を受賞した次世代の料理界を担う実力派シェフです。
料理界が注目するライジングスター、タラ・バシュミ シェフ
中東・北アフリカの料理界の未来をリードしているバシュミ シェフに、これまでの経歴や日本での生活について聞きました。
- バーレンでの経歴について
湾岸諸国(Khaleeji; ハリージ)料理やアラブ料理を見つめ直し、新たな形で表現するシェフとして、バーレーンの食文化を現代的に刷新し、「料理」と「ガストロノミー」の間のギャップを埋めることが私の使命です。
幼い頃から、バーレーンの歴史家である父の影響を受け、料理への情熱を育ててきました。父の中東伝統料理や食材に対する膨大な知識は、味や調理法への理解を形づくり、新しく革新的な方法で再解釈したいという思いを抱かせてくれました。
最初の仕事は「Baked by T」という個人のベーカリーショップでしたが、すぐに大成功を納めました。この成功が後押しとなり、バーレーンの五つ星ホテルで修行を始めました。最初は精肉部門からスタートし、さまざまな厨房で経験を積みました。さらに洗練された技術を求めて、スイスの料理専門学校「Culinary Arts Academy Switzerland」に進学し、ミシュラン2つ星レストラン「PRISMA(プリズマ)」(東京都港区)や「グランドホテル レ・トロワ・ロワ(Grand Hotel Les Trois Rois Basel)」で著名なシェフたちと共に貴重な経験を積みました。
その後世界的に権威のあるグルメアワード「World’s 50 Best Restaurants」(世界のベストレストラン50)の中東・北アフリカ地域版『トップ・シェフ MENA』(2019・シーズン4)で、決勝まで進出しました。この経験が「Fusions by Tala」の立ち上げにつながり、現在も「Gulf Hotel Convention and SPA(ガルフ・ホテル・バーレーン・コンベンション&スパ)」で、バーレーンの味を新たな視点で表現し続けています。
- バーレーン料理の特徴について
バーレーン料理は、アラブ・ペルシャ・インドといったさまざまな文化圏が織りなす彩り豊かな織物のような料理です。これは、バーレーンが長年にわたって貿易の要であったことが背景にあります。特徴としては、伝統と革新の両方を祝福するような、力強く複雑な味わいが挙げられます。
私がよく使用する食材のひとつに、乾燥ライム(ルーミー)があります。これはバーレーン料理に欠かせない万能食材で、料理に深みと酸味を与えます。バーレーン館のカフェでは、「Tikka roast beef sandwich(ティッカローストビーフサンド)」などのメニューにルーミーを使用しています。デザートでは珍しいですが「ルーミーソーダ」という冷たいドリンクにも使われており、日本の来場者の間で非常に人気があります。
祝祭などの特別な場面で振る舞われる料理も多く、たとえば「Ghoozi(グージー)」は、じっくりローストした羊肉を丸ごと香り米の上にのせ、玉ねぎ、レーズン、カシューナッツ、レンズ豆をトッピングした伝統料理です。また「Machboos(マクブース)」は、バーレーンを代表するスパイスライスで、柔らかな羊肉や鶏肉、エビ、魚などとともに、サフランやスパイス、ルーミーの風味を効かせて提供しています。
「Saloona(サルーナ)」はトマトベースのスープで、肉や野菜を煮込んだバーレーン風のシチューです。朝食には「Balaleet(バラリート)」と呼ばれる、甘い味付けのヴェルミチェッリ(Vermicelli; 極細パスタ)に薄焼き卵をのせた甘辛ミックスのシンプルでありながらもおいしい伝統料理も好きです。
万博のカフェのメニューには、これらの伝統料理を現代的にアレンジしたものもあり、「エッグ&トマトサンドイッチ」は、バーレーン風の卵とトマトの炒めを焼きたてのパン(khubbus; クッブス)に挟み、伝統料理を気軽に楽しんでいただけるようにアレンジしています。
- 今回の来日と和食の印象
今回の日本訪問は本当にすばらしい体験となりました。日本の料理人が持つ精密さと献身的な姿勢はとても刺激的で感銘を受けました。日本料理の「旬」「調和」「うま味の深さ」といった価値観は、私が掲げる「伝統の現代的再解釈」という理念とも重なっています。
数年前、1カ月ほど日本を旅しながら技術を磨き、日本料理の繊細な技術を学びました。現地のシェフたちと交流し、地域ごとの味に触れ、日本独自の食材への理解は、私の料理観に大きな影響を与えました。
そして、今回の2025年大阪・関西万博に関わることにより、和食との関わりがさらに深まりました。この経験は、シェフとしての視野を広げ、新たなアイデアを生み出し、料理哲学をブラッシュアップさせてくれます。
- 日本での休日の過ごし方
日本に滞在するときは、時間がある限り日本の食文化に浸っています。市場や伝統的な店、屋台を巡り、現地の味を探求しています。日本のシェフたちの仕事ぶりを観察したり、新しい料理を味わったり、珍しい食材を学んだりすることで、常にインスピレーションを得ています。
食べ物以外にも、歴史的な名所や日本の豊かな文化遺産に触れることも大好きです。新しい味を発見したり、何世紀も続く料理の伝統を知ることは、私の創造力や世界のガストロノミーへの感謝の気持ちを育んでくれます。
また、日本の陶器も大好きで、新しい器を探して買い集めることを心から楽しんでいます。職人の技、細部へのこだわり、時を超えた美しさは、私の“料理演出”へのこだわりと共鳴しています。
万博・バーレーン館カフェの異国色あふれるメニュー
6月23日(月)から提供している、新メニューを試食させてもらいました。
※表示価格は全て税込
日本の居酒屋のスタイルに倣って、日本で買った小皿や角皿で料理を提供しているというバシュミシェフ。新メニューの「Tomato Tahina(トマト・タヒーナ)」も日本の居酒屋で食べられるトマトサラダをバーレーンスタイルで仕上げた一品です。トマトサラダにゴマドレッシングをかけて食べる方も多いと思いますが、タヒーナは炒りゴマのペーストなので、ゴマドレッシングに近い味がします。お酢とタヒニドレッシングの酸味で、トマトのフレッシュな風味が際立つので、これからの季節に打ってつけの料理です。日本のレストランで働いていた経験もあって、日本料理への愛情が感じられます。
そのほか、「Aloo Bashir(アルー・バシール)」「Mehyawa Caesar Salad(メフヤワ・シーザーサラダ)」「Ghoozi Brioche(グージー・ブリオッシュ)」「Lumi Ice Cream(ルーミー・アイスクリーム)」を新メニューとして提供しています。
バーレーンパビリオンのメニューはこちらから
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