東京、名古屋で好評を博した劇団四季のオリジナルミュージカル「ゴースト&レディ」が、12月7日から大阪四季劇場(大阪市北区)で幕を開けます。5日に行われた舞台稽古では、米国人演出家のスコット・シュワルツさんが「壮大なラブストーリーであると同時に、ワイルドな冒険も楽しめる作品です」と作品の魅力を熱く語りました。
■ナイチンゲールとゴーストが紡ぐ物語
原作は、「うしおととら」「からくりサーカス」で知られる人気漫画家・藤田和日郎さんの中編コミックス「黒博物館 ゴーストアンドレディ」(講談社)。19世紀の英国・ロンドンを舞台に、近代看護の礎を築いたフローレンス・ナイチンゲール(フロー)と、劇場に棲(す)むゴースト・グレイとのラブストーリーを、史実を織り交ぜながら、描いています。
シュワルツさんは、「原作を読んだ時、自分の中の感情が高ぶって、羽ばたき、原作が歌を歌っていると感じました」と振り返ります。藤田さんから「舞台は舞台の作品として存在してよい」と背中を押されたそうで、「漫画の再現でなく、原作のスピリットをとらえつつ、心の琴線に触れる舞台化を心がけた」と話します。
■四季が挑む日本発の新作ミュージカル
物語は、ロンドンのドルーリー・レーン劇場に棲むゴースト・グレイのもとに、一人の女性が「私を殺してほしい」と現れるところから始まります。看護の道を志すも、家族の反対に遭い、生きる意味を見失っていたフロー。グレイは「絶望の底まで落ちたら殺す」との条件を提示します。死を覚悟したフローは、自らの信念を貫くべく、グレイとともにクリミア戦争の傷病兵の看護へと向かいます。
■大阪でさらに進化
5日に報道陣に公開された舞台稽古では、心を揺さぶる楽曲が、力強く情感豊かな歌声に乗って響き渡り、空中バトルやマジックといった冒険活劇がスパイスとなり、ロマンスの要素まで盛り込んだ王道ミュージカルが披露されました。テンポよく畳みかけるような場面転換など観る者を飽きさせない多彩な演出に加え、ラストには胸を打つ感動が待っており、本公演への期待が一気に高まりました。
脚本・歌詞は高橋知伽江さん、作曲・編曲は富貴晴美さんの「バケモノの子」でもおなじみのコンビが担当。シュワルツさんは、「四季がゼロからつくり上げた日本発の新作ミュージカル。チケットの売れ行きも順調と聞き、うれしく思います」と笑顔を見せました。
シュワルツさんは「キャラクターの感情の揺れ幅がより高く、深まった。俳優がキャラクターを知っていくことで、解釈が深まったと思います」と手ごたえを語り、「大阪公演では、微調整を加えているので、作品自体も成長し続けています」と自信をのぞかせます。そして、「芝居の幕が降りたとき、みなさんの心に触れる作品になれば」と話していました。「ゴースト&レディ」は、2026年5月17日まで大阪四季劇場で上演されます。
西部マキコ エンタメライター。初出の話を引き出すインタビューが得意。初めての劇団四季観劇は、学校行事で見た「李香蘭」。好きな作品は、「ウィキッド」と「オペラ座の怪人」。
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