あの子の子ども 第1話レビュー
“高校生の妊娠”を真正面から描いた、蒼井まもる氏の同名マンガを原作としたドラマ『あの子の子ども』。主役の川上福(さち)を演じるのは、映画『交換ウソ日記』のヒロイン役で第47回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した桜田ひよりさん。透明感あふれるかわいらしさと確かな表現力で、Z世代から絶大な支持を得ています。そして恋人役の月島宝を演じるのは、細田佳央太さん。昨年放送された大河ドラマ「どうする家康」への出演や『七夕の国』(7月からDisney+)で主演を務めるなど、目覚ましい活躍を見せる若手実力派です。
第1話は、中学生のころから付き合い始めた福と宝が、高校2年生までどんなふうに愛を育んできたかが、ういういしさたっぷりに描かれていました。手をつないで土手を歩く2人の間には、優しい空気が流れているよう。宝が福を見つめる視線から、福のことをとても大切に思っていることが伝わります。
幼なじみから恋人同士になった2人の、初めてのキスは中3のクリスマス。うまくできなくて、照れ笑いしあって、小鳥のあいさつのようなファーストキスを交わす2人がかわいすぎます。自分のファーストキスはどんなだったかな……と思い出したり、いつかこんなふうに好きな人とキスするのかな……と憧れたりした人もいるのでは。
福はそのときに「この先の初めて、ぜんぶ宝とがいい」と強く思うのです。別々の高校に進学しても2人の交際は続き、そして初めて結ばれる日を2人で決めた福と宝。高校1年生の花火大会の日。大好きで大切な恋人と、ふれあいたい、もっと近づきたい、と思うのは自然なことですよね。福と宝のように、お互いを思いやれる関係はすてきです。
しかし、高校2年生のあるとき避妊に失敗してしまいます。避妊具が破れていたとわかり、焦ってスマホで対処法を検索する福と宝。72時間以内にアフターピル(緊急避妊薬)を服用すれば妊娠を防げるらしい、と知り、宝は医療機関の処方箋をもうために「明日一緒に病院に行こう」と提案。陸上で活躍する宝は、翌日に大事な地区予選を控えていましたが「こっちが大事」ときっぱり言い切ります。この宝の迷いのなさに驚きました。自分たちがしたことの責任を取るのは当然、とも見える決意の表情です。
福は、もしも病院に行って家族や学校に知れたら宝と会えなくなるかもしれないと心配しますが、宝に地区予選に行ってほしいために自分1人で病院に行くことを決意します。
翌日、婦人科クリニックへ向かう福のスマホに、親友の矢沢 望からビデオ通話の着信が。アタリを5枚集めると“ダンシングヒヨちゃん”がもらえるらしいお菓子を買い続け、やっと2枚目が出たのだ、と。矢沢を演じる茅島みずきさんは、昨年公開の『交換ウソ日記』でも桜田さんの親友役を演じていました。ゼクシィのCM出演や、実写版「【推しの子】」(11月からAmazonPrime)の出演でも話題です。
そんな矢沢の背後でワイワイしているのは福のクラスメイトの飯田智宏。このビデオ通話だけでも絶対明るい人だとわかる飯田役は、グローバルボーイズグループJO1の河野純喜さんです。メインボーカルだけでなく、持ち前の明るさと天然キャラでバラエティでも大活躍の河野さんは、明るいムードメーカーの飯田役がぴったりです。
高校生らしく無邪気な矢沢と飯田の雰囲気に反して、通話を切った福は不安でいっぱいの表情。クリニックで受付をする福ですが、問診票に記入する間に不安に負け、受診せずに逃げ出してしまいます。宝からの電話で気を取り直し、もう一度クリニックへ行くものの、すでに診察時間は終わってしまっていて……。アフターピルの服用は性行為の後72時間以内。不安なまま、これから福はどうするのでしょうか。
高校2年生で1人でアフターピルをもらうために受診することは、勇気がいるかもしれません。不安げな福の姿に「福みたいにどうしたらいいかわからなくて1人で不安でいる女の子がいったいどれぐらいいるんだろう」と胸が苦しくなりました。決して、未熟な彼らだけの責任ではないとも感じました。
愛し合う福と宝にほっこりした気持ちになると同時に、はたして自分のときはどうだった? 自分だったらどうする? 自分の娘や息子に同じことが起こったら? と考えさせられる第1話でした。
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文:早川奈緒子
川崎市在住のフリーランスライター。10代の子ども3人の母。「たまひよ」など主に子育て系メディアで取材・ライティングを行う。
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