『あの子の子ども』 第4話レビュー
誰にも気づかれないように、ファミレスのトイレで妊娠検査薬を使った福。その結果は「ひとりじゃないかもしれない」のナレーションからおそらく陽性だとわかります。受け止めきれない現実を、宝(細田佳央太)に伝えるべきか迷う福。半分以上とけてしまったアイスクリームから、福がどれだけちゅうちょしたかが伺えます。そこへ、宝から「話したいことがある」とメッセージが届き、福もようやく「私も話したい」とメッセージを送ることができました。
一方、福のクラスでは、学校を休んだ福を心配する矢沢(茅島みずき)と、そんな矢沢を気にかける飯田(河野純喜)の姿が。コンビニで、当たりが5枚揃うと“ダンシングひよちゃん”がもらえる「ヒヨコラムネ」をいくつも買ったのに、はずればかりで当たりが出ないことにいらだつ矢沢と、なんとか矢沢を元気づけようとあれこれ話しかける飯田。この2人の関係にいつもほっこりします。そして矢沢がなぜそこまで“ダンシングひよちゃん”にこだわるのかも気になります。
ところで、福たちのクラス担任の沖田(橋本淳)が、ホームルームの様子を見ていた生活指導の山田(松門洋平)に「(生徒に)慕われるとナメられるは違う」と注意され「ポイズン……」とつぶやくシーン。生徒から「おっきー」と呼ばれる沖田は、実は『GTO』に憧れて教師をめざしたのだとか。「ポイズン」の一言だけで「言いたいことが言えなかったんだな」とわかることに、『GTO』の偉大さを感じました。
さてその日の夕方、公園で部活帰りの宝を待っていた福。保健体育の授業で習った「人工妊娠中絶」について思い出し、「時間が戻せたら、宝ともうエッチしない。大人になるまで」と自分の行動を振り返ります。
待ち合わせに現れた宝は、陸上で関東大会進出を決めたにもかかわらず、どこか曇った表情。そして宝は福に「しばらく、やめたい……」と話を切り出します。自分は性行為のリスクをわかっているつもりでわかっていなかったこと、もしも妊娠をしたら傷つくのは福で自分は代われないと気づいたこと、などを福の手を握りながら、ゆっくり話す宝。福のことを何より大事に思っているからこそ傷つけることがこわい、だから性行為は大人になるまでやめておきたい、と伝えます。
福は、宝が自分と同じ気持ちでいたことに少し安堵の表情を見せたように思いましたが、こぼれ出る涙で言葉が詰まってしまいます。逃げるように走り去ろうとする福を宝が引き留めると、福は泣きながらここ数日の体調の変化と、妊娠検査薬の結果を話します。「大丈夫だから」と受け止めようとする宝の手を振り払い、「大丈夫じゃない!」と絞り出すような声で叫ぶ福。これまでの不安をぶちまけるように、心とは裏腹の言葉を宝に投げつけてしまいます。涙なしに見られないシーンでした。
これまで不安におそわれるたびに「宝がいれば大丈夫」とおまじないのように繰り返していた福。だからこそ福の「全然大丈夫じゃない!」という言葉に、胸が締めつけられる思いがしました。妊娠したかもしれないことへの大きな不安や、知らない未来への怖さ、そして自分が自分でなくなるような感覚。大人の女性でも、予期せず妊娠したときに福と同じような不安を感じた人は少なくないでしょう。まして高校生の福では、抱えきれないはずです。
「妊娠しているかもしれない」現実は重く、チョコレートをわけあうように、宝と半分こできないことです。1人で泣いて、考えて、福が出した答えは……。
ドラマ『あの子の子ども』は、ゆっくり少しずつ、登場人物たちの心の動きが描かれるから、つい感情移入してしまいます。今回は福の涙がつらすぎて、私も涙が止まりませんでした。来週は福の笑顔が見たいな、と矢沢のような気持ちで、次回放送を待っています。
見逃し配信はこちら(TVer)
見逃し配信はこちら(カンテレドーガ)
文:早川奈緒子
川崎市在住のフリーランスライター。10代の子ども3人の母。「たまひよ」など主に子育て系メディアで取材・ライティングを行う。
カンテレIDにログインまたは新規登録して
コメントに参加しよう