『スノードロップの初恋』第8話レビュー
前回のラストで、朔弥(宮世琉弥)が人間ではないこと、そして「今年のクリスマスに死ぬ」という自分の運命を知ってしまった奈雪(小野花梨)。その翌朝、奈雪は会社を休んで姿を消してしまいます。
奈雪の行方がわからず気をもむ朔弥ですが、それでも人がどうして死を恐れるのかを理解できません。そんな朔弥に、伊勢(杉本哲太)は「死んでしまえば、その人と二度と会えない。笑い合ったり語り合ったりすることができなくなるのは、さみしいと思わないか?」と助言します。その言葉に、朝から奈雪を探し続けていた朔弥は、自分の感情が「さみしい」のかもしれないと気づいたようです。
ところで、このシーンで気になったのは、伊勢がこっそり薬を飲んでいたこと。たしか6話でも薬を飲んでいた気がします。なにかの病気でないといいのですが……。
一方、自分の運命を知った奈雪は父・祥平(古河耕史)の墓前へ。祥平が死を知ったときどんな気持ちだったのか、その最期に思いをはせます。そこへ現れたのは、伊勢でした。奈雪は、祥平の親友だった伊勢に、祥平についての話を聞きます。家族に病気のことを隠しながら最期まで厨房に立ち続けた祥平。「こわくなかったのかな」と言う奈雪に、伊勢は「食べてくれる人たちの笑顔を大切にしたかったから、ギリギリまで料理の仕事を続けたのだろう」と語ります。奈雪は父の生き方を知り、何を考えたのでしょうか。
そんな中、奈雪を探し望月家に戻った朔弥。そこへ陸(岩瀬洋志)が帰宅します。陸は、父が亡くなってから、家族の一切を奈雪が引き受け、大変だったことも隠していたと振り返ります。そんな姉だから、自分の運命を知ったら1人で抱え込むだろうと心配する陸。朔弥に「姉ちゃんに死期が近づいていることは絶対に言わないでほしい」と頼みます。
朔弥と出会ったころから、今も「姉ちゃんの運命を変える!」と言い続ける陸。ずっと姉に守られていた陸が、姉を守りたいと願う姿に、胸がじーんとしました。朔弥は、陸に「姉ちゃんのそばにいて」と言われ、また奈雪を探しに出かけます。
陸のけなげな愛情とともに、和真(曽田陵介)が奈雪にかける温かなまなざしも印象的でした。奈雪が、夜の会社でクリスマスメニューを見つめながら、自分の運命について考えているところへ現れた和真。奈雪が落ち込んでいると察した和真は、完成したばかりの特別メニューのスープを差し出します。
「奈雪が頑張っていることはみんなにも伝わっている。しんどいときはいつでも言って」と奈雪を励ます和真。「奈雪とこれからも一緒に頑張りたい」という和真の言葉は、普通なら勇気づけられるはずですが、でも自分の運命を知っている奈雪は複雑な表情を浮かべます。奈雪を思う和真の優しさが、切なくもあるシーンでした。
奈雪を探し続けながら、伊勢から言われた「死んでしまえばその人とは二度と会えない」という言葉を考える朔弥は、夜になってやっと奈雪を見つけます。「奈雪がいなくてさみしかった」と、新たな感情を知った朔弥。それまで人に「死を恐れることはない」と言っていた朔弥でしたが、奈雪を目の前にして、「死を恐れることは……」の続きを言葉にできません。死神だけど、人間が死を恐れる気持ちを理解したのでしょうか。
「私、平気だよ!」と泣きそうな笑顔を見せる奈雪。朔弥は奈雪にかけよって、後ろからぎゅっと抱きしめます。大切な人と過ごせる時間がわずかだとわかった2人の切ない表情に、胸が苦しくなりました。前回は恋する気持ちを知った朔弥でしたが、今回は人を愛する気持ちを知ったのかもしれない、と感じました。
奈雪が父の最期を知ろうとしたように、死について考えることは、今をどう生きるかを見つめ直すことにつながるのかもしれない、と考えさせられた第8話でした。
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文:早川奈緒子
川崎市在住のフリーランスライター。10代の子ども3人の母。「たまひよ」など主に子育て系メディアで取材・ライティングを行う。
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