自分にとっての支えとは…伊藤健太郎主演『未恋』スタート
2025.01.10
『未恋〜かくれぼっちたち〜』第1話レビュー
健斗役はNHK大河ドラマ『光る君へ』(2024年)などの伊藤健太郎さん、みなみ役は元宝塚歌劇団月組トップ娘役の愛希れいかさん、ゆず役は乃木坂46の弓木奈於さんがつとめています。
1月9日の第1話では、健斗が、モチベーションの低下から連載を休むことにしたゆずの気持ちを盛り立て、自宅に押しかけて来た彼女を受け入れるなどするうちに、恋愛へ発展する様子が描かれました。
健斗の足元に居座るチワワの存在と「散歩」というキーワード
そんな彼女のもとに現れるのが、健斗です。ゆずは自宅を飛び出しますが、彼はそれを追いかけます。いつしかその追走劇は河川敷にまで及びます。そのやりとりはコメディタッチで描かれながら、実は非常に重要な場面になっていました。
ゆずをなんとか説得する健斗ですが、その足元に、散歩中に逃げ出したであろうリードをつけたチワワがやって来て、そのまま居座って動かなくなるのです。ゆずは機を見て再び逃走。しかし健斗は足元のチワワがあまりに落ち着いてしまったため、身動きをとることなくそのまま夕暮れを迎えます。
この場面はまず、健斗とゆずの設定と人柄をあらわしていると読み取れます。
さらに「散歩」もキーワードになっています。突っ走るように仕事をしていたり、慌ただしい生活を送っていたり、なにかと休まらない毎日を過ごしている人は多いと思います。このドラマでは、そのスピードをちょっとペースダウンさせること、そして「走る」のではなく「歩く」ことの大事さを提案しているのではないかと感じられるのです。もう一つは、健斗とゆずが毎日「散歩」を一緒におこなうことで、リフレッシュにつながったり、関係性が発展したりする部分。「散歩」がドラマの展開的なところで大きな意味を持ちます。
この二つの意味で同場面に出てくる「散歩」というワードが生かされており、なかなかおもしろい構成であるとうならされました。このような見せ方は、第1話の演出家・木村淳さん、脚本家・吉田ウーロン太さんのうまさではないでしょうか。
「自分にとっての支え」について考えさせられる
私たちはなんのために働いたり、生活したりしているのでしょうか。お金、目標、家族などいろんな理由がそこにはあると思います。それらが心の支えにもなります。
しかし、ゆずはどこかそれを見失っている風でした。「お金なんて捨てるほどある」というセリフから、そこに執着がないのは明らか。また、人間関係において孤独であるようにも映ります。売れっ子漫画家でありながらアシスタントをつけていないように思えるところからも、彼女が一人を好んでいることが分かります。あと、世論を気にし過ぎているところから、「読者」への疑いも持っているはず。
そんなゆずにとって、「自分を支えてくれる」「この人のためならがんばれる」という相手が健斗なのです。健斗と出会ったことで、ゆずは少しずつ生気を取り戻していきます。
では健斗は……というと、はっきり明かされていません。第1話ではゆずが支えになったようにも思えますが、まだまだ謎めいています。なんなら第1話では、実は健斗はそれほど「自分」というものを出していませんから。終盤には、健斗とかつて親密な関係性にあったようなみなみが登場し、分かりやすい三角関係ができあがります。次回以降、それがどうなっていくのか楽しみです。
見逃し配信はこちら(カンテレドーガ)
第2話先行配信はこちら(FOD)
文:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
カンテレIDにログインまたは新規登録して
コメントに参加しよう