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吉岡里帆の起こした「バタフライ・エフェクト」が、永山瑛太との駆け落ちを決意させた? 消しても消えない思いの向こう側へ

2023.11.08

吉岡里帆の起こした「バタフライ・エフェクト」が、永山瑛太との駆け落ちを決意させた? 消しても消えない思いの向こう側へ

『時をかけるな、恋人たち』第5話レビュー

前回の終盤で、未来人の翔(永山瑛太)に惹かれていく思いを封印し、「すべてを忘れる覚悟をした」と決意した廻(吉岡里帆)。翔にも「私の記憶が消えたら、もう会いに来ないでほしいの」と別れを切り出していました。くうぅッッッ!!!私の中に住むリトル川平慈英がむせび泣いているよ。

そんな廻のもとに、後輩の広瀬(西垣匠)から「常盤さんのことが好きです」とメッセージが届きました。かつて思いを寄せていた広瀬が婚約者の梓(田中真琴)と別れたと聞いても、廻は完全にうわの空。「ありがとう、気持ちうれしいです。またゆっくり話しましょう」と返信するも、翔への思いに踏ん切りがつかない廻は応える気になれず、すぐに自分の返信を「削除」しました。おや、「送信取消」じゃないんかい?
廻の任期終了を翌日に控えたパトロール基地には、30年後の2053年からやって来た矢野健也(今野浩喜)が連行されていました。話を聞けば「歴史上で明日バス事故に遭って亡くなるはずの妻・美郷(安藤裕子)に、ひと目だけでも会いたい」とか。しかし、過去に干渉し歴史を変えることはご法度。「ならばせめて思い出のあるレストランへ」と懇願する健也に同情した廻と翔は一緒に店へ向かうが、妻とはケンカ別れも同然で積年の悔いが残っていた健也は隙を見て逃げ出してしまう。

厳戒態勢が敷かれるなか、美郷の前に姿を現す健也。だが張り込んでいた隊員たちに身柄を拘束され、記憶を消されて元の時代へ。美郷も歴史をなぞるかのように、バス事故で命を落とす。「結末が決まっているのなら、何のためにタイムトラベルはあるんだろう?」──。歴史に抗えず、悲しい結末を黙って見守るしかない無力さを痛感した廻は、「(たとえ歴史を)変えられなくても!」とつぶやき、健也のために得意の「つじつま合わせ」を思いつく。
メッセンジャーアプリの「削除」機能を用いた廻のつじつま合わせが、どうにも切なかった。自分の端末からメッセージは消えるけれど、相手の端末からメッセージが消えることはない。この仕組みを利用して生前の妻に思いを告げた健也でしたが、歴史との整合性を図るために妻からのあたたかい言葉を消さなければなりません。一瞬ためらう健也に対して、「大丈夫ですよ、(メッセージを)消しても思いは消えませんから」と優しく語りかける廻。今週の涙腺決壊ポイント、間違いなくここでしょう。
思えば、今回のサブタイトルは「バスクラッシュ・エフェクト」。2005年に日本で公開されたSF映画『バタフライ・エフェクト』をモチーフにしたことは想像に難くありません。過去に戻り、現在・未来を変えようとする主人公の切実な姿は、蝶の羽ばたきのような一人のささやかな営みがトルネードを巻き起こし世界を変えていく──といった寓話に満ちていました。これすなわち、健也のために廻が起こしたつじつま合わせは「バタフライ・エフェクト」と言えませんかね。

さらに廻の起こした「バタフライ・エフェクト」は、廻自身に大きな影響を与えたんじゃないかしら。別れを決意していたにもかかわらず、「私たちが一緒に暮らしていくにはどうしたらいいか」と言って及び腰だった翔との駆け落ちに乗り出すのが何よりの証拠でしょう。エンディングによれば、行き先は「1983年8月10日」。タイムボードに乗って恋の逃避行へ出る二人を、広瀬が目撃していましたね。あーもう情報過多すぎて、来週が待ちきれません!

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文:岡山朋代
編集・ライター。ぴあ、朝日新聞社「好書好日」など主にエンタメ系メディアで取材・執筆を手がける。

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