樹(草彅剛)と真琴(中村ゆり)、左手の指輪で「裏切れない誰か」がいることを痛感【草彅剛主演ドラマ『終幕のロンド』】

2025.11.17

樹(草彅剛)と真琴(中村ゆり)、左手の指輪で「裏切れない誰か」がいることを痛感【草彅剛主演ドラマ『終幕のロンド』】
後半戦に突入した、草彅剛さんの主演ドラマ『終幕のロンド―もう二度と、会えないあなたに―』(カンテレ・フジテレビ系/毎週月曜よる10時)の第6話が11月17日に放送されました。
『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』第6話 風吹ジュン、中村ゆり、永瀬矢紘、草彅剛

『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』第6話 風吹ジュン、中村ゆり、永瀬矢紘、草彅剛

第5話終盤では、遺品整理会社に勤めるの鳥飼樹(草彅)が、生前整理の依頼人・鮎川こはる(風吹ジュン)の娘・御厨真琴(中村ゆり)と静岡県伊豆へ。そこで、こはるの駆け落ち相手で真琴にとっては面識のない父親の足跡を探します。しかし真琴が体調を崩した上、土砂崩れで交通機関が運休になり、帰れなくなってしまいます。

そして第6話では、一泊することになった樹と真琴のもとに、真琴の夫・利人(要潤)から電話が…。高熱で寝込んでしまった真琴のかわりに電話対応した樹は、事情を包み隠さず話します。もちろん利人は、“遺品整理人と依頼者の娘”以上の関係性を疑います。

▶樹と真琴の指輪、「裏切れない誰か」がいることを強調

『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』第6話 草彅剛

『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』第6話 草彅剛

ここに来て一気に「大人のラブストーリー」が加速し始めました。間違いなく樹と真琴の間には、“遺品整理人と依頼者の娘”とは違う感情が芽生えていると思います。

ただ樹には、5年前に亡くなった妻の記憶が色濃く残っています。一方の真琴には、夫婦としては冷めた関係性であるにせよ夫がいて、しかも御厨ホールディングスという大企業の次期社長候補の妻という立場上、スキャンダルは御法度。お互いに抱えている背景が、一歩踏み出すことを躊躇(ためら)わせます。本当にいじらしいですね!
『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』第5話 草彅剛、中村ゆり

『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』第5話 草彅剛、中村ゆり

映像的な見せ方も秀逸です。眠る真琴の左手を布団の中に戻すとき、薬指に光る指輪。翌朝、看病して眠る樹の左手を取ろうとした真琴は、その指輪に気づく。互いに“指輪”という存在を意識することで、距離は縮まりながらも「裏切れない誰か/裏切ることが許されない誰か」がいることを痛感させる。この構図が実に巧みです。

しかし、だからこそ苦しさと愛おしさが同時にあふれてくるのでしょう。真琴の父親探しは、自分のルーツをたどるだけではなく、「これは鳥飼さんと私だけの大切な思い出にしたかっただけなのに」と彼と過ごす時間の尊さにも気づく旅でもあったのです。

この想いは、口に出してはいけないもの。でも、言葉にせずにはいられなかった。中村ゆりさんは気持ちの揺らぎと迷いを繊細に表現していましたし、その肝心な言葉を聞き取れず「すみません。もう一度、お願いします」と言ってしまう樹の様子も、草彅さんならではの“抜け感”があってとても良かったです。

あらためて大人の恋愛はすんなりといかないことが分かります。

▶︎自分の持ち物が取られそうになると執着心が湧く利人

そんな二人の間に割って入るのが、利人です。ちなみに筆者は“俳優・要潤”の大ファンなのですが、要さんにドンピシャで似合うのが利人のようなキャラクターなんですよね。

利人は、真琴に対してとにかく冷たいです。真琴は夫婦関係がうまくいっていないながらも彼に向き合おうとしてきました。しかし利人は対話を拒みます。一方、陰では絵本作家である真琴の担当編集者・森山静音(国仲涼子)と浮気をしています。
『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』第5話 要潤、中村ゆり

『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』第5話 要潤、中村ゆり

ちなみに利人は社会的な地位があるため、人前ではキリッとしています。また社長である父親・剛太郎(村上弘明)とは経営方針が噛(か)み合わず、第6話でも「会社を継ぐのは私です。これ以上、負の遺産を、先々に残さないでいただきたい」と剛太郎に苦言を呈します。

要さんはこういう苦しみを抱えた“サイテー男”を演じるのが抜群にお上手なんです。要さん独特の冷たいクールor冷たそうな見た目と口調は、利人のような役をやると俄然(がぜん)生きてきます。

利人は、それまで真琴に無関心だったのに、樹の存在によって徐々に感情的になっていきます。利人はきっと、真琴のことを“所有物”だと思っているのでしょう(実際に真琴はそのように感じているようです)。自分の持ち物が人に取られると思うと、途端に執着心が湧いてくる。しかも利人は、前述した剛太郎との衝突により次期社長の座も危うくなります。
『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』第5話 要潤

『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』第5話 要潤

つまり利人は、欲しいものを手に入れるまでは全力で追いかけるタイプ。そして手に入れた途端に興味を失ってしまうのではないでしょうか。要さんが演じると、余計に利人のそういう性格や雰囲気が増幅されますよね。

樹、真琴、そして利人。それぞれが抱える過去と現在、そしてまっすぐな愛情と歪(ゆが)んだ愛情――。それらが複雑に絡み合う『終幕のロンド』。後半戦はますます目が離せません。  
文:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
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