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福(桜田ひより)と宝(細田佳央太)、ともに踏み出す一歩【あの子の子ども】

2024.07.30

福(桜田ひより)と宝(細田佳央太)、ともに踏み出す一歩【あの子の子ども】

『あの子の子ども』 第6話レビュー

前回に引き続き、いつもの神社の境内でこれからのことを話し合う福と宝。宝が妊娠や出産について調べたノートには、もし出産して育てられない場合、里親制度や特別養子縁組などの制度があることも書かれていました。そして、福が心身ともに不安定なのはつわりのせいではないか、とも。

宝と一緒にノートを見ながら、福は自分が妊娠について知ろうとせずに、手術をしてなかったことにしなきゃ、と思っていたと振り返ります。野田先生(板谷由夏)の話を聞き、宝のノートを見た福は「もし中絶手術するとしても、なかったことにはできない。だから、逃げないでちゃんと考えたい」と宝に話します。この言葉に、福がこれまでと比べてぐんと成長したように見えました。知らないばかりではこわいと感じることも、きちんと調べて知ることで、自分がどう向き合えばいいのかがわかるんだろうな、と、正しい知識を得ることの大切さを改めて感じました。
福と宝は「1つずつちゃんと考えて2人で決めよう」と決意します。でも、未成年の2人が命についてどんな選択をするとしても、保護者の同意が必要。まずは家族に妊娠を伝える必要がありました。

その後、福と宝はそれぞれの母親に妊娠について話すことに。福を自宅まで送り届けた宝は、「試合の時、いちばんこわいのはスタートの前、オンユアマーク。でもスタートの音が聞こえたら、あとは走るだけ」と福を励まし「ゴールは決まってないけど、最後まで一緒に」と伝えます。このシーンで、福と宝がどんなことも2人で一緒に乗り越えようとする、深い絆と信頼を感じました。
6話は、福と宝の身近な人たちのことが描かれ、その関係性の温かさに胸がじんとなる回でもありました。
まずは、学校を休んだ福を心配する矢沢(茅島みずき)と、矢沢を励まそうとする飯田(河野純喜)です。矢沢がヒヨコラムネの当たりカードを集めるのは、福に連絡する理由がほしいからだと見抜いている飯田は、呼吸をするように矢沢に「好き」と告白し続けていました。矢沢は飯田に対してかなりの塩対応ですが、でも飯田には素直な気持ちをぶつけられるようです。福にとって、心から心配してくれる矢沢の存在があってよかったと思ったし、福を元気づけたいのにどうしたらいいかわからない矢沢に寄り添おうとする飯田がいてくれてよかったな、と感じました。
続いて、妊娠について調べるために学校を休んだ宝に大会の賞状を届けに来てくれた、陸上部仲間の笹部(前田旺志郎)。「おまえが1日サボるごとに、おれとの差が0.1秒開くからな」と、何気ない言葉で宝を気遣う優しさを感じました。
さらに、福の母・晴美(石田ひかり)と、宝の母・直実(美村里江)についても、その人柄がわかるシーンが。専業主婦の晴美と、介護士でシングルマザーの直実は、全然違うタイプの母親に見えます。でも、わが子の成長を喜びながら大切に育ててきた思いは同じでしょう。晴美も直実も子どもの気持ちを優先していて、それぞれが子どもにかける言葉に深い愛情を感じました。
福も宝も、母親からの愛情を感じているからこそ「妊娠」を伝えてどんな反応をされるのか、とてもこわいのだ思います。きっと信頼していたのに裏切られたと思われるんじゃないか、失望して傷つくんじゃないかと親の気持ちを想像するからこわいのでしょう。
これから、福と宝がどんな選択をするのか、そしてその選択によって、矢沢、飯田、笹部といった友人たちや、学校の先生、そして家族との関係がどう変化していくのか……。周囲の人たちの人柄の温かさが伝わってきたからこそ、次回以降、2人を取り巻く環境がどんなふうに変化していくのか、少し胸がざわつく感じがしました。
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文:早川奈緒子
川崎市在住のフリーランスライター。10代の子ども3人の母。「たまひよ」など主に子育て系メディアで取材・ライティングを行う。
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