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宝(細田佳央太)の母・直実(美村里江)が福(桜田ひより)に打ち明けた過去

2024.08.20

宝(細田佳央太)の母・直実(美村里江)が福(桜田ひより)に打ち明けた過去

『あの子の子ども』 第8話レビュー

福の兄の幸(野村康太)が川上家に帰宅したシーンから始まった8話。川上家では福と母の晴美(石田ひかり)、宝と母の直実の4人が話し合っていましたが、福の父・慶(野間口徹)が海外赴任で不在ということもあり、日を改めることに。

その翌日、直実から福に着信があり、月島家を訪れた福。直実は、なんと福に「中絶してください」と頭を下げるのです。そして自身が中絶を経験した過去について話し始めます。

当時の苦しい胸の内を打ち明けながらも「自分はあのとき中絶を選んだから、宝を産むことができた」と直実。福に「あなたにも宝にも、まだまだ自分のためだけに生きてほしい。たくさんの経験をして大人になってから親になるほうがいい」と伝えます。直実は、宝が小さいころからずっと描いていた夢を実現させたい思いもあるのでしょう。「生まれてこれなくさせたのは、宝のお母さんに言われたからだと思えばいい」と、自分の全てをかけて福を説得しようとします。

そんな直実の手を、そっと握る福。緊張すると手が冷たくなる宝と同じように、直実の手も冷たかったのでしょうか。福はきっとその手から、直実が自分たちのことを真剣に考えてくれていると感じたのかもしれません。
そのあとの福の言葉のひとつひとつがとても感動的でした。「大切な話を聞かせてくれてありがとうございます」と直実の過去の痛みに寄り添いながら、さらに「これから相談に乗ってほしい、お願いします」と頼むのです。そんな福の強さにも驚きました。

福と宝がお互いを思い合う気持ちは、太くて揺るがない樹木のようだと感じました。高校生という未熟な年齢かもしれないけれど、大切に思う人と支え合おうとする強さ、一緒に歩んでいこうとすることの勇気を、福と宝が教えてくれている気がします。
8話では、矢沢(茅島みずき)の意外な気持ちが明かされる場面もありました。遅刻をした福と、音楽の授業に出たくない矢沢が校舎わきのベンチで話すシーン。矢沢を探しに来た飯田(河野純喜)はスマホを取り出し、「矢沢にブロックされた、着拒(着信拒否)も! 解除するように言って」と福に助けを求めます。ところが矢沢に「早く教室に戻れ」と拒否され、しぶしぶその場を離れる飯田。いつも通り矢沢にストレートにアピールする飯田の後ろ姿を見ながら、矢沢は「好きだよ、私も」と福に自分の思いを告白します。「でも、どうしたらいいかわからなくなっちゃって」と、矢沢。友だち思いで優しい矢沢ですが、大切な人に思いを伝えられない不器用さと、何かひっかかることがあるようです。福も飯田も、そんな矢沢のことをよくわかっているんだろうな、と感じるシーンでした。
ストーリーからは少し外れますが、冒頭のインタビュー映像で兄の幸が話していた外国語が何語だったのかも気になりました。わかった人はいるでしょうか? 幸はギョーザづくりで肉汁を守ることにこだわったり、福に唐揚げを取っておいてほしいと頼んだり、ケチャップを買ってレジにスマホを忘れてきたり……不思議な雰囲気を醸すキャラクター。でも彼の存在は、8話の冒頭でもそうだったように、深刻な場面にすこしやわらかな風を吹き込んでくれると感じます。

さて、8話のラストではついに福の父・慶が登場。海外赴任から帰国し「5月なのに暑すぎる。終わりだな、地球も」と地球に悪態をつく慶。次回、慶は福と宝にいったいどんな言葉をかけるのか……ドキドキですね。
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文:早川奈緒子
川崎市在住のフリーランスライター。10代の子ども3人の母。「たまひよ」など主に子育て系メディアで取材・ライティングを行う。
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