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福(桜田ひより)の母・晴美(石田ひかり)の優しさの理由

2024.09.03

福(桜田ひより)の母・晴美(石田ひかり)の優しさの理由

『あの子の子ども』 第10話レビュー

前回、川上家と月島家との再度の話し合いで、福(桜田ひより)に「お父さんと彼とどっちを選ぶ」と究極の質問をした父・慶(野間口徹)。福は「選ぶなんて嫌だけど、選ばなきゃいけないなら宝(細田佳央太)を選ぶ」と答えます。話し合いは決裂し、ショックを受ける様子の慶。月島家の2人が帰ったあと、言葉をなくし椅子に座り込む慶に、母・晴美は「買い物に行ってきます」と声をかけ、福と出かけます。慶に1人になる時間を作ってあげる、晴美の配慮だと感じました。

いつも福を包み込むように優しい言葉をかけ、「元気でいてくれればいい」と福の味方でいる晴美。10話では、そんな晴美の過去も明かされました。
大学卒業後に就職をしたものの仕事も人間関係もうまくいかず、眠れず、食べられなくなり、思わず橋の欄干に手をかけた晴美に声をかけたのが慶でした。そのあとに2人が食べたものは唐揚げ。晴美が家族を元気づけたいときに唐揚げを作るのにはこんな理由があったのか、と納得したエピソードでした。

川上家と月島家の話し合いのときには、慶のあまりに一方的な物言いに「離婚しましょう」と言い放った晴美だけれど、晴美いわく「あれは交渉」。福と2人で買い物に行く道すがら「お父さんはいつも自分だけが正解で、家族はそれに従って当然だと思ってる」と話す晴美。母の口から初めて聞く父の悪口に、それでも一緒に生きてきたのは「好きだからだよね?」と聞く福に、晴美は「好きだからというより、いなくなると困るから。でもそういう存在がいるのはすてきなこと」と話します。

家族と一緒に生きる幸せを守ってきた晴美。晴美の大きな愛情に、福は自分を信じる勇気をもらったのではないでしょうか。
もう一つ印象的だったのは、宝と陸上部仲間の笹部隼人(前田旺志郎)とのシーンです。隼人からの電話を受け、笹部家で夕飯をごちそうになった宝。その後、夜のベランダでラムネを飲みながら、隼人は実は家族と血がつながっておらず、特別養子縁組で迎えられた、という事実を宝に話します。

親から「隼人が私たちのところに来てくれたから、父と母になれた。大好き、生まれてきてくれてありがとう、って何度も言われた」と笑いながら語る隼人。宝のよきライバルでありつつ、いつも宝を気にかける優しい隼人ですが、それはこれほど愛情深い両親に育てられたからなのでしょう。家族とは、血のつながった人だけではないというメッセージが心に響くシーンでした。

自分の両親が離婚したときの思いから、特別養子縁組に少し抵抗があった宝ですが、隼人の話を聞いて考え直したようです。生まれてくる子どもにとって、どんな選択がいいのかを、真剣に考えていることがわかりました。
帰宅した宝は、母・直実(美村里江)に「おれの子どもの頃からの夢は、駅伝出場じゃない。母さんを喜ばせることだよ」と伝えます。そしてもう一つの新しい夢は「福とおなかの子と家族になること」だと。宝の言葉を受け止めた直実ですが、宝のために貯金してきた学費の通帳を見つめて一人涙する表情から、その複雑な胸の内を感じました。

翌日、福は担任の沖田先生(橋本 淳)に妊娠のことを話し、通学を続けられるかどうかを相談します。福も宝も、自分たちで考えて決めた道に一歩を踏み出しました。次回予告では、少しずつ2人の高校生活が変わり始めそうな雰囲気です。2人のこれからを、晴美と直実のように温かく見守りたいと思います。
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文:早川奈緒子
川崎市在住のフリーランスライター。10代の子ども3人の母。「たまひよ」など主に子育て系メディアで取材・ライティングを行う。
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