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福(桜田ひより)の強さとつながる人の温かさに涙腺崩壊

2024.09.17

福(桜田ひより)の強さとつながる人の温かさに涙腺崩壊

『あの子の子ども』 最終話レビュー

ついに最終話。福(桜田ひより)と宝(細田佳央太)の生き方や、その周囲の人たちの温かさに、涙腺が崩壊し、何度も涙しながら見た回でした。

登校した福はクラス中に妊娠を知られたことに気づき、机の上に置かれた避妊具を目にして教室を飛び出します。階段で登校した矢沢(茅島みずき)と出会いますが、目をそらされてしまいショックを受ける福。そんな福に声をかけたのは養護教諭の足立(菊池亜希子)です。矢沢に軽蔑されたかもしれない、と心配する福に、足立は自分が過去に不妊治療をしていた話をしながら優しい言葉で励ましました。
そして、福の父・慶(野間口徹)は宝と福と改めて話の場を持ちました。そこで慶は、生まれてくる子どもを認知することや養育費をどうするかなどを冷静に話します。宝が、通信制の高校に転学して働きながらいずれは通信制の大学で教員免許取得を目指したい、と考えを話すと、それを聞いた慶は、宝に福の実家で同居することを提案します。

一度は「出ていきなさい」と福を突き放した慶ですが、タイミングが早かったけれど実は赤ちゃんの誕生を楽しみにしているのだと言うのです。父親なりに、娘がお嫁に行くときのシーンを想像していたのに、その順序が狂うこととなったことに泣き崩れる慶。慶の愛情と優しい人柄が伝わりました。
そして合唱祭の日。レポート提出によって合唱への不参加が認められたため、教室で自習をする矢沢のところに、飯田(河野純喜)が現れます。この2人のやり取りから、矢沢が歌を歌えない理由や、飯田のことを好きなのに付き合えない理由、そしてSNSで福のことをブロックした理由も明らかになりました。
矢沢が抱えているものを想像すると胸が苦しくなるけれど、きっと飯田がそばにいれば大丈夫。飯田のいちずな思いと明るい笑顔がそう思わせてくれるシーンでした。
その後、宝と一緒にクリニックを受診した福は、受付に掲示されたボードを目にします。そこには、未成年が安心して受診できるように配慮した説明書きが。院長の野田先生(板谷由夏)が約束を守ってくれたんですね。福は、野田先生に出産する意思を伝え、分娩予約を希望します。ここで野田先生が初めて福のおなかの子を「赤ちゃん」と言ったことが印象的でした。

福は通信制高校に転校することに。福はクラスメートが終業式に出ている間に、自分の荷物を取りに登校します。すると机の上には矢沢からのダンシングひよちゃんのプレゼントとメッセージが。SNSのブロックも解除されていて、これからも2人は友だちでいられることがわかりました。その後一度は帰路についた福ですが、再び教室に戻り、クラスメートたちにあるメッセージを伝えます。自分の選択を誤解されたままにしない福の強さに感動しました。
帰ろうとする福を呼び止める矢沢。歌うことが怖かったはずの矢沢は、合唱コンクールで歌う曲であり、福にカラオケで歌ってもらったRADWIMPSの『正解』を福に向けて歌い始めます。そこへクラスメートたちも合流。福が参加できなかった合唱をみんなで歌うシーンも、涙、涙でした。
一方、転校前に親友の隼人(前田旺志郎)と一緒にトラックを走る宝。これまで宝が走るとき、ゴールの向こう側に思い浮かべる一番ほしいものは元気に手を振る福でした。でもこのとき宝の目に浮かんだのは、赤ちゃんを抱っこして優しくほほ笑む福の姿。愛する人と生まれてくる命が、これからの宝の生きる力になるのだ、と心が温かくなりました。
高校2年生で妊娠した福と宝が懸命に悩みながら道を模索する姿と、さまざまな登場人物たちの意見が描かれた本作。命の重さと、人のつながりの温かさを教えてくれるドラマでした。福の妊娠はまだ始まったばかり。これから長い妊娠期間を経て、福と宝は少しずつ親になっていくのでしょう。ドラマの最後で、福の「この子の大丈夫に、安心になれるように」という言葉とやわらかな笑顔に、彼女たちの未来を応援したい気持ちになりました。
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文:早川奈緒子
川崎市在住のフリーランスライター。10代の子ども3人の母。「たまひよ」など主に子育て系メディアで取材・ライティングを行う。
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