「今日、あなたの常識が一気にひっくり返ります」
そんな仰々しい言葉で始まった、世界最大規模のおむつコレクション『O-MU-TSU WORLD EXPO』(2025年6月24日)。主催したのは一般社団法人日本福祉医療ファッション協会(本社:兵庫県尼崎市)、会場は世界中から人が集まる『EXPO 2025 大阪・関西万博』の「EXPOホール」です。
O-MU-TSU、つまり、おむつ。赤ちゃんだけでなく、高齢や病気、障がいで排泄をコントロールできなかったり、トイレまでの移動が困難な人たちが着用している...というのが一般的なイメージです。しかし、今回のおむつコレクションでは、そういった概念を取っ払い、おしゃれなファッションアイテムとして「おむつライフ」を楽しむことを目的にしています。1,900名収容のホールが予約で満員となり、急遽、ライブ配信も決定するなど、開催前から大きな話題となっていました。
ことの発端は、総合プロデューサーの平林景さんが、若い車イス女性から聞いた「おむつ姿を友だちに見られたくない。だから旅行に行けない」という言葉。「おしゃれって、誰かに見せるためだけのものじゃない。自分が『これがいい!』と選択肢を増やせることが重要」と話し、機能性だけで語られがちだったおむつの概念に一石を投じることが目的としています。
「おむつって言葉、好きじゃない。古くない?」
トークショーに登壇した演出家・テリー伊藤さんも、「おむつって言葉、好きじゃないんですよ。古くない? だから僕はね、ペーパーブリーフって言ってるんですよ。長旅のとき、ペーパーブリーフをはいてますよ」とコメント。そして、「ほかにも使いようがないのか、と。例えば、長時間ドライブで次のサービスエリアまで間に合うかなと。あと、映画館とか」と話すと、進行役の平野裕加里さんも「フェスのとき、トイレの行列がすごくて。そういうときにあればいい」と答え、客席では大きくうなずく姿も。
この日は、客席の意見がリアルタイムでビジョンに表示される仕掛けも導入され、イベント中、来場者に質問を投げかけるシーンが何度か見られました。「どんなデザイン、柄のおむつならはいてみたい?」という質問には、黒、ピンク、紫、無色(透明!?)、ネオンカラー、インディゴ、デニムカラー、パンダ柄、虎柄など、多数の自由な意見が寄せられました。
半数が「はいたことある」、その使い道に納得。
印象的だったのが、「みなさん、おむつはいたことありますか?」というストレートな質問。なんと半分くらいの人が「はいたことある」という回答で、「受験」「ドライブ」「花火大会」「飛行機」「セミナー・研修」など、離席が難しいシーンで結構使われているという事実。このあたりで、客席のおむつの概念が変わりつつあるのが肌感でわかりました。
その後、医師で宇宙飛行士の金井宣茂さんがゲストで登壇。「宇宙服を着ると5時間。長いときは、8時間くらい着ているので。毎回おむつのお世話になっています。それに外科医だったので、朝から晩まで手術室に入ってるときがあります。思っていた以上にお世話になってますね」と体験談を明かし、「偏見なく、普段使いできればいいなと思います」と語りました。
まるでアウター、未来を予感させる斬新オムツ。
そして、フィナーレを飾るのは、総勢30名のモデルによるおむつファッションショー。車椅子ファッションモデルの中村悠紀さんをはじめ、日本初のプラスサイズモデル・桃果愛さん、車椅子のインフルエンサー・中嶋涼子さんらが登壇し、それぞれの個性と表現をもってランウェイ。大手おむつメーカー、下着ブランド、さらには伝統工芸など、複数企業が参加し、まるでアウターのようなおしゃれな斬新おむつが披露されると、会場からは万感の拍手が贈られました。
平林さんは言います。「もっとオムツが自由におしゃれを楽しむものになったとしたら。年齢も性別も、障がいの有無関係なく、誰もがかっこよく、かわいくおむつをはける世界になったなら。このイベントを通じて、みなさんの心の中にちょっとした好奇心の種をまくことができるとしたら、僕たちはもう大満足です」と。
それが実現した1日となりました。
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