食べてみよか

万博・ハンガリー館のシェフ、伝統×革新の「足し算」グルメ

2025.06.29

万博・ハンガリー館のシェフ、伝統×革新の「足し算」グルメ
累計来場者数が700万人を突破するなど、連日多くの人でにぎわう大阪・関西万博(主催:2025年日本国際博覧会協会)。万博最大の醍醐味(だいごみ)は、世界各国の料理を味わうことですが、せっかくなら普段食べることができない国の料理にチャレンジしたい方も多いはず。

そんな方にぜひオススメしたいのが、ハンガリーパビリオンに併設されているレストラン「Miska Kitchen & Bar(ミシュカ キッチン&バー)」。どの料理もハンガリーの伝統的なレシピを継承しつつ、現代風にアレンジしているだけでなく、いずれかの食材の味に偏ることなく調和させて、奥ゆかしい味わいを演出した究極の“足し算”料理となっています。

【前菜】鴨フォアグラ、レーズン、リンゴゼリー、ブリオッシュ(鴨肉 / ¥4,580)

ハンガリーパビリオン「Miska Kitchen & Bar」前菜 鴨フォアグラ、レーズン、リンゴゼリー、ブリオッシュ(鴨肉 / ¥4,580)【6/9 撮影】

ハンガリーパビリオン「Miska Kitchen & Bar」前菜
鴨フォアグラ、レーズン、リンゴゼリー、ブリオッシュ(鴨肉 / ¥4,580)【6/9 撮影】

ヘーゼルナッツオイルを表面に塗ったカモのフォアグラのパテに、ハンガリー産トカイワイン(Tokaji)に漬けたレーズンとリンゴゼリーが添えられています。ブリオッシュに、フォアグラ・レーズン・リンゴゼリーをちょっとずつのせて食べると、それぞれの風味が複雑に絡み合い、ひと言では形容できない深い味わいに。脂味のあるクリーミーなフォアグラが、レーズンとリンゴゼリーの味をつぶ立たせ、ヘーゼルナッツオイルの香ばしさがそれらを一つにまとめてくれます。

【スープ】ポロネギとポテトのクリームスープ、クリスピー野菜(¥2,480)

ハンガリーパビリオン「Miska Kitchen & Bar」前菜 鴨フォアグラ、レーズン、リンゴゼリー、ブリオッシュ(鴨肉 / ¥4,580)【6/9 撮影】

ハンガリーパビリオン「Miska Kitchen & Bar」スープ
ポロネギとポテトのクリームスープ、クリスピー野菜(¥2,480)【6/9 撮影】

酢づけしたシメジとブレンダーにかけた野菜を丸めて揚げたクリスピー野菜、ジャガイモと玉ネギとポロネギの白い部分を入れたジャガイモのクリームスープです。最後に、ポロネギの緑の部分を使ったネギオイルをかけています。

ポタージュに酸味があることに最初は違和感を覚えますが、つけ添えのしめじやクリスピー野菜、ネギオイルと絡めて食べると「なるほど!」とうなずけます。ネギオイルの風味が、クリスピー野菜とポタージュをつなぎます。

【メイン】ヴァダシュ、キャロットバリエーション、ブレッドダンプリング(牛肉 / ¥3,480)

ハンガリーパビリオン「Miska Kitchen & Bar」前菜 鴨フォアグラ、レーズン、リンゴゼリー、ブリオッシュ(鴨肉 / ¥4,580)【6/9 撮影】

ハンガリーパビリオン「Miska Kitchen & Bar」メイン
ヴァダシュ、キャロットバリエーション、ブレッドダンプリング(牛肉 / ¥3,480)【6/9 撮影】

ヴァダシュ(vadas)は、柔らかく煮込んだお肉を、根菜ベースの甘酸っぱいソースにつけて食べる、家庭や給食にも出るほど一般的なハンガリー料理です。ニンジンベースのソースとニンジンのコンフィに、スー・ヴィッド(Sous vide; 真空低温調理)で12時間加熱した牛のホホ肉。その上には、ケッパー、マスダードシード、セロリがトッピングされています。野菜とお肉に添えられているのは、ブレッドダンプリングとサワークリームです。

全ての食材の味ははっきりしていますが、舌の中で絡み合うと、互いを邪魔することなく、一つに調和します。ニンジンの甘味を最大限に引き出しつつ、ハーブなどを使って、根菜特有の風味を抑えているので、ニンジンが苦手な方でもおいしく食べられます。

ハンガリー料理の伝統と革新を伝える、ゾルターン・ヴィダーク総料理長

ハンガリーパビリオン「Miska Kitchen & Bar」前菜 鴨フォアグラ、レーズン、リンゴゼリー、ブリオッシュ(鴨肉 / ¥4,580)【6/9 撮影】

ハンガリーパビリオン「Miska Kitchen & Bar」
ゾルターン・ヴィダーク(Zoltán Vidák)総料理長【6/9 撮影】

「Miska Kitchen & Bar」の料理を手がけるのは、ゾルターン・ヴィダーク(Zoltán Vidák)総料理長。ワインの産地であるエチェク(Etyek)にある「Rókusfalvy Fogadó(ロークシュファルヴィ・フォガド)」というワインホテル兼レストランの料理長で、2014年から続くハンガリーの長寿料理番組『Konyhafőnök(料理長)』の裏方チームのクリエイティブ・シェフとしても知られています。また、METRO Gasztroakadémia(メトロ・ガストロアカデミー)というプロ向けの料理トレーニングセンターで、レギュラー講師も務めています。

そんなヴィダーク総料理長に、シェフを目指したきっかけや会期中の生活について聞きました。
- シェフになろうと思ったきっかけは?
最初は車に興味があったのですが、あるとき突然ひらめきました。「Tengerre magyar(ハンガリー人よ、海へ!)」というテレビ番組で、船のコックさんのパンづくりから料理まで、日々の仕事ぶりを見ていたんです。それがとても魅力的で、シェフになろうと決めました。

- ハンガリー料理の特徴は?
難しい質問ですね。ハンガリー料理といえばパプリカ、あるいは玉ネギとジャガイモの国というイメージが今でも強いですからね。しかし、2000年代初頭以降、ハンガリーの食文化は劇的な変化を遂げてきました。伝統的な調理法やパプリカを多用した料理は影を潜め、代わりに鮮度を重視する生産者から仕入れた野菜や肉類に焦点が当てられ、より現代的な食文化が根付くようになりました。
ハンガリーパビリオン「Miska Kitchen & Bar」前菜 鴨フォアグラ、レーズン、リンゴゼリー、ブリオッシュ(鴨肉 / ¥4,580)【6/9 撮影】

ゾルターン・ヴィダーク(Zoltán Vidák)総料理長がピンセットを使って盛り付けている様子【6/9 撮影】

- 日本の食材の印象は?
とても特別なものですね。本を読むだけでは十分ではありません。みそや発酵野菜の作り方、そしてその背後にある哲学を真に学び、理解する必要があります。味ははるかに繊細で洗練されています。野菜の種類も豊富で、さまざまな葉、茎、野菜が料理の特定の段階や部位で使われます。キノコはより種類が豊富で、新鮮で、歯ごたえがあります。スーパーで、品質が低いものや傷んだ農産物を見かけたことは一度もありません。

- 万博で提供する料理を準備する上で、何か特別な努力や苦労はありますか?
はい、常に克服したい課題があります。例えば、ここで仕入れる玉ネギははるかに甘いです。塩味やローストなどによって、グヤーシュ(牛肉と野菜をじっくり煮込んだスープで、日本でいうみそ汁のような存在)やパプリカソースなどの料理で玉ネギの甘さが勝ってしまわないように調整するのが課題です。玉ネギの甘さではなく、風味が際立つようにしたいのです。調理器具も違います。鍋やフライパンは母国で使うものより薄いので、焦げ付かないように注意が必要です。乳製品に関しては、サワークリームは脂肪分が多く、日本ではそういった乳製品があまり好まれないため、調理に使うよりも後から料理に加えることが多いです。
ハンガリーパビリオン「Miska Kitchen & Bar」前菜 鴨フォアグラ、レーズン、リンゴゼリー、ブリオッシュ(鴨肉 / ¥4,580)【6/9 撮影】

ゾルターン・ヴィダーク(Zoltán Vidák)総料理長【6/9 撮影】

- ハンガリー料理を初めて食べる人にアドバイスはありますか?
「ホルトバージの肉の包み焼き」のような具材入りパンケーキなど、軽めの料理から始めて、ハンガリーの風味やスパイスを試してみるのが良いでしょう。

- 日本での休暇はどのように過ごしますか?
たまに休みがある時は、日本の美食を探求するようにしています。大阪にはミシュランの星付きレストランがたくさんあると聞いているので、質の高い麺類や天ぷらのお店を見つけて、私たちの仕事に刺激と向上を与えたいと思っています。時間があまりない時は、とんかつ、ラーメン、すしなどを食べています。
miyoka
0