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友田オレ×風間和彦 芸歴3年と42年のチャンピオン対談

2025.06.18

友田オレ×風間和彦 芸歴3年と42年のチャンピオン対談
多彩なキャラクターのネタを提げてお笑い界で頭角をあらわし、『R-1グランプリ2025』を芸歴3年目の23歳で制した友田オレさん。
片や、自身の経験をもとにした歌「辛い物節」をひたすら歌い続け、『第68回全日本演歌大賞』を芸歴43年目で制し、さらに6月22日深夜0時55分よりカンテレ・フジテレビ系で『R-1 王者友田オレ特番 歌い続けて42年 風間和彦1時間SP』が放送される風間和彦さん。
そんな対照的なお二人の初対談が大阪で実現。賞を獲って以降、なにか変化はあったのか。賞金はどんなことに使いたいのか。じっくりと語ってくださいました。
―お二人はこれまで、面識はあったのでしょうか?
(友田)申し訳ないのですが、風間さんのことは存じ上げていませんでした。ただ、せっかくなので今日は気になることをいろいろお伺いさせてもらおうと思います。

(風間)俺も友田くんのことは知らなかったね。俺はテレビを見ないからさ。佐賀から上京したとき、テレビを買わなかったんだよ。たださ、やっぱり若いっていいね。なんだってできるから。なんなら辞めたっていいんだぜ、芸人を。ゼロからなんだってできるじゃないか。

(友田)風間さんは好きなお笑い芸人はいらっしゃいますか?

(風間)今の芸人はあまり見ないね。でも若い頃に漫才ブームがあって、島田洋七さん(B&B)はかじりついて見ていたね。今となっては佐賀県つながりだね。
―2025年、友田さんは『R-1グランプリ』で優勝し、風間さんは『第68回全日本演歌大賞』を受賞されました。生活などもがらっと変わったのではないですか。
(友田)自分への信用度が上がった気がします。お仕事をたくさんいただけるようになりましたし、あと、自分の話をちゃんと聞いてもらえるようになった気がします。ポジティブな意味での周囲の手のひら返しを感じます(笑)。
『R-1』を優勝したことで自分への信用度が高まり、発言の自由度やお仕事の幅も広がりました。お笑いにおいても、自分がやりたいことにおいても、余裕が生まれている気がします。ですのでこれからは、今やっていることを突き詰めてもいいし、新しいことをやってもいい。そう考えると、賞レースに勝つというのはメリットばかりです。

(風間)俺はなにも変わらないね。40年以上、同じような生活を続けてきたからね。そこはおごらず、なるべく堅実に生きていきたいね。うん、そうだね。だから、まあ……、レクサス……、中古……。

(友田)風間さんは42年間、「辛い食べ物節」を歌い続けてこられたんですよね? 一つのことを追求し続けるのって、本当にすごい。僕なんて、お笑いを始めたとき「5年、続けられるのかな」と思っていましたから。「結果が出ずに5年以上やるのは、俺は無理だろう」って。だから自分の中では早めに『R-1』で結果が出せて良かったのと、あと「危ねえ」という感じがあります。集中力があまりないタイプなので、5年以上かかっていたらお笑いは続いていなかったはず。

(風間)俺の場合はさ、「辛いものがとにかく嫌だ」という信念で42年間、歌手を続けてきたからさ。辛い食べ物を押し付けてくる人たちへの確固たる拒絶だね。だから啓蒙活動としてやっているんだ、「俺は辛い食べ物が嫌いだ!」と。それなのに、辛い食べ物は世の中でどんどん増えているじゃないか! どういうことなんだ! しかも少し前には辛い食べ物ブームなんてものもあった。あのときは俺にとっては一番のピンチだったよ。啓蒙しても、啓蒙しても、なかなか響かなかったからね。
風間和彦 2025年6月

風間和彦 2025年6月

―お二人は優勝賞金の使い道はどうされるんでしょうか。そもそも『全日本演歌大賞』には賞金はあるのでしょうか。
(友田)僕は、海外へ一人旅を考えています。キューバへ行ってみたいんです。YouTubeの動画で見たのですが、キューバのレストランで、堺正章さんの「さらば恋人」(1971年)をカバーしている流しのミュージシャン3人がいるみたいなんです。マンダリンみたいな楽器で弾いていて。キューバにはそういうストリートのミュージシャンがたくさんいるようなので、聴きに行ってみたいですね。

(風間)『全日本演歌大賞』も優勝賞金は500万円だよ。取っ払いでもらえるのさ。昔の文化を引き継いでやっているから、領収書とか関係ないんだよ。ガバガバでやっているんだぜ。俺たちはそんな豪快な時代で育ったからな。

(友田)賞金でなにか買いましたか?

(風間)え…!? あ、まあ…、レクサスの中古をね…。
―友田さんは23歳、芸歴3年目で『R-1』史上最年少優勝を飾りました。一方で風間さんは苦節42年で『全日本演歌大賞』受賞。スピード感も対照的です。
(友田)世間的には「とんとん拍子だね」と言われると思います。でも毎日、お笑いの舞台に立っているとシビアな反応も決して少なくないのが分かる。だからこそはわりと常に冷静でいられます。そうやって、積み上げて、積み上げて、そして「いい傾向だな」というときに『ABCお笑いグランプリ』(2023年)の決勝へ初めて進めたり、『R-1』で優勝できたりしました。だから結果が出たことに対して、もちろんサプライズではあるのですが、一方で自分の中でわりと腑に落ちるところもあります。とは言っても今の自分の状況について「なんでこんな現象が起きているんだろう」「信じらんない」と不思議な感じはやはりあります。

(風間)俺はこれまでずっとインディーズで活動してきたからな。デモ盤として、「辛い食べ物節」以外にもいろんな曲は作っていたんだよ。「遅い乗り物音頭」とか。でも、「辛い食べ物節」に絞ったんだ。やっぱり自分の原体験に勝るものはない。さっきも言ったけど、「辛い食べ物が嫌だ」という信念だね。そういう強い気持ちには魂がこもる。賞を獲るのは遅かったけど、魂の42年だったね。

(友田)ちなみに僕は辛い物は決して得意ではないけど、めっちゃ好きです。辛い物が苦手な人を横目に辛い物を「うまい、うまい」と言いながら食べる気持ち良さを覚えますね。

(風間)ああ、そうかい。俺は特にチゲ全般が苦手なんだ。チゲは「辛い」「赤い」という部分が目立つじゃないか。でも俺は、もっと深いところで勝負するのが食のエンタテインメントだと思っているんだ。だしがどうとかさ。だからワサビは意外といけるんだ。ワサビは風味がいいからね。

(友田)僕の嫌いな食べ物はおからですね。保育園でおからが出てきたんです。でも当時は食べるたびに、えずいていました。風間さんは辛い食べ物を食べると家に帰りたくなるそうですが、僕はおからを食べるとトイレへ駆け込みたくなります。
友田オレ 2025年6月

友田オレ 2025年6月

―賞を獲って以降、お休みも少なくなっていると聞きます。空いている時間や休日はどんなことをして過ごしていますか。
(友田)たしかに丸一日の休みは少なくなってきました。でも夜は空いていたりするんで、そういうときは漫才ユニットのLet Me Show THE まごころのネタ合わせの時間にあてています。相方(ピボット福田)は大学の同級生で腹を割って話せるし、あいつとネタを作ったりするのが安らぎになりますね。ちなみに以前までは休日になると、音楽ライブや映画を見に行ったりしていました。好きな映画は『ショーシャンクの空に』(1994年)や、香取慎吾さんが主演の『西遊記』(2007年)。あと、ヒューマンドラマとSFの要素が入っている映画が好きです。

(風間)俺は休日になるとスケッチに出かけているんだよ。最近は電柱をよく描いているね。その場でずっと動かない感じが俺と似ている気がするんだ。あと、黙々と電気を流している。俺も黙々と信念を持って「辛い物が嫌いだ」と伝えている。だから電柱にはシンパシーを感じるんだよ。
あと俺はいつも欠かさず腕立て伏せをやっている。俺の腕立て伏せは早いぜぇ。メソッドが違うからな。1日5回で十分なんだよ。負荷がすごいからさ。まあ、いずれ披露する機会があると思うから楽しみにしていてくれ。
―お二人の今後の活躍がますますたのしみです。これからチャレンジしたいことはありますか。
(友田)お笑いに軸足を置きながら、音楽もやっていきたいんです。2025年にはアルバムを1枚出したい。今は仕事の合間を縫って音楽制作をやっているので、楽しみにしていてください。

(風間)俺は6月25日に日本クラウンさんから「辛い食べ物節」でメジャーデビューさせてもらうことになった。
あと、6月22日(日)深夜0時55分から放送される『R-1 王者友田オレ特番 歌い続けて42年 風間和彦1時間SP』という特番にも出演する。全国ネット放送でね。そこでは若いミュージシャンのみなさんとコラボもさせていただいたんだよ。自分の楽曲についても新境地を切り開けていると思うから、次なるチャレンジはもうすでに始まっているね。特番ではそのチャレンジを見てもらえるんじゃないかな。楽しみにしていてほしいね。
左:風間和彦 右:友田オレ 2025年6月

左:風間和彦
右:友田オレ
2025年6月

インタビュー・文:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
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