松下奈緒主演『夫に間違いありません』第 1 話レビュー
松下奈緒さん、桜井ユキさん、宮沢氷魚さん、安田顕さんらが出演する月曜よる 10 時放送のドラマ『夫に間違いありません』 (カンテレ・フジテレビ)が1月5日よりスタートしました。
このドラマは、夫・一樹(安田顕)を亡くした朝比聖子(松下奈緒)が、不可解な出来事に巻き込まれる物語です。聖子は、行方不明中の一樹が川で事故死したという知らせを警察から受け、遺体の所持品と身体的な特徴から「夫に間違いありません」と確認。
夫を亡くしてから1年もの間、彼女は二人の子どもと義母の面倒を見ながら飲食店を切り盛りします 。夫の生命保険金が入ったため、多額の借金も完済し、店もリフォームして再出発を切っていました。
そんなある日、亡くなったはずの一樹が自宅に帰ってきます。驚きと喜びが交錯する聖子ですが、すぐに現実に引き戻されてしまいます。なぜなら一樹が生きていたとなると、使ってしまった 2000 万円の生命保険金の一括返済を求められてしまうからです。一括返済するには再び借金をする必要があり、そうなると将来有望な子どもたちの進学にも影響が出ます 。そこで一樹はこのような提案をします。
「“朝比一樹”は、このまま死んだことにするんだ」「金の問題で家族は簡単に壊れるんだ。聖子が一番よく分かっているだろう?」。
当初は抵抗感を示していた聖子ですが、その後、一樹の提案を受け入れることに。一樹の生存を子どもや義母にも知らせず、聖子の日常が一変していきます。
視聴者をドキッとさせる場面とセリフ
第1話からとにかくスリリングな展開が連続しました。一樹が帰ってきたことへの喜びが、瞬く間に現実と将来の生活を脅かす混乱を招き入れ、崖っぷちへ追い込まれる様子は、天国から地獄へと突き落とされているかよう。
それらの“ざわつき”を表現するものとして、序盤の朝食の場面で聖子がジャムの瓶をテーブルから落として中身をこぼし、それを息子の栄大(山﨑真斗)が踏んづけてしまうところがあります。そこで、いつも通りの日常が壊れてしまうことを予感させます【もちろんその何気ないトラブルは、認知症が進行する義母の人物紹介文や、亡くなったとされる一樹が「天国で家族のことを見ている」と話す聖子と娘・亜季(吉本実由)のセリフにも生かされています】。
さらにポットの中のお湯が沸騰するシーンも効力を発揮しています。水の事故で亡くなったとされる一樹の“再来”と、ポットの湯がボコボコと沸騰する描写が重なり、不穏さを増幅させています。この場面も「これからなにかが起きるぞ」と引っかかりを覚えさせるものになっています。
行方不明者家族の会で講演を頼まれた聖子が、一樹の存在を秘めながら登壇するところも絶妙でした。そこで聖子は、夫が行方不明中の葛原紗春(桜井ユキ)とひょんな出会いを果たします。
講演前に、紗春は、聖子の黒いパンプスのかかとが色剥げを黒ペンで補修します。そこで紗春は「塗っちゃえば分かんないよ」「うまく隠せばいいんだよ、バレなきゃいいんだから」と口にします。その言葉も聖子の状況の核心を突いていて、視聴者のみなさんもドキッとさせられたのではないでしょうか。
『夫で間違いありません』は“違和感の物語”
このように第1話は多くの“違和感”が散りばめられていました。
たとえば、名前を「荒河亮介」に変えて働き始めた出した一樹が職場で怪我をしたため、聖子が絆創膏(ばんそうこう)を貼ってあげますが、その絆創膏のデザインの“違和感”も後の展開への伏線として巧みに生かされます。あと一樹が、聖子が作った料理を久しぶりに食べて、ダシが変わったことに気づくところは象徴的な“違和感”の表現でした。逆に、一樹が聖子の写真をスマホで撮る場面は、第1話で伏線がまだ回収されていないので、どこかのタイミングで波紋を広げそうです。
実際、別件の出来事を追っている週刊誌記者・天童弥生(宮沢氷魚)は、「違和感の中には秘密が隠されている」と取材をする上での信条を話します。これらを踏まえると、『夫で間違いありません』は“違和感の物語”と言えるかもしれません。
そういったトリッキーな要素だけではなく、同作は「幸せの守り方」についても考えさせられます。聖子は隠し事をすることになりますが、それは家族の幸せを守るため。つまり、悪意があるわけではありません。だからこそ視聴者としては心苦しさを覚え、またハラハラもさせられます。
聖子たちは果たしてこれまで通りの日常を取り戻せるのか?また、家族の幸せを守ることができるのか?第2話を楽しみに待ちたいと思います。
文:田辺ユウキ芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
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