『上方漫才大賞』の“新しいかたち”「ゴールデン進出」「100人の観客審査員」奨励賞で“会場が揺れる”ほどの歓声が上がったワケ【第61回上方漫才大賞】

『上方漫才大賞』の“新しいかたち”「ゴールデン進出」「100人の観客審査員」奨励賞で“会場が揺れる”ほどの歓声が上がったワケ【第61回上方漫才大賞】
関西の演芸界で最も長い歴史を持つ『シャボン玉石けんpresents 第61回上方漫才大賞』が4月7日(火)、COOL JAPAN PARK OSAKAで開催され、大賞をザ・ぼんち(ぼんちおさむ、里見まさと)、奨励賞を金属バット(小林圭輔、友保隼平)、新人賞をぐろう(家村涼太、高松巧)が受賞しました。

ぐろう(家村涼太、高松巧)、ザ・ぼんち(ぼんちおさむ、里見まさと)、金属バット(小林圭輔、友保隼平)

『上方漫才大賞』は上方漫才界において、年度を通じて寄席、放送および舞台などでもっとも活躍した漫才師に贈られる名誉ある賞です。

大賞は、夢路いとし・喜味こいし(1969年)、横山やすし・西川きよし(1970年)、千鳥(2013年)、ダイアン(2018年)、かまいたち(2021年)など錚々たる漫才師が過去受賞。また奨励賞は、大賞受賞経験がない漫才師がノミネート対象となり、今後の大賞受賞を占う位置付けでもあります。そして新人賞は、結成10年目までが対象で、若手漫才師の登竜門的な意味合いとなっています。

ゴールデン進出、観客審査…“カミマン”がリニューアル

今回の『第61回上方漫才大賞』はいくつかのリニューアルがありました。一つは、ゴールデン進出。開催当日はカンテレで夜6時30分から生放送されたほか、TVerでもspecialライブが配信されました。そのため、SNSでも例年以上の盛り上がりがあった印象です。

もう一つは、現地に集まった観客が審査を担当するようになったこと。100名の一般審査員が電子機器を使い、出場者のネタ終わりにそれぞれ5点満点で投票しました。

さらに、MCを海原やすよ ともこ、中川家(剛、礼二)が担当し、ネタについて感想をコメントするアンバサダーをブラックマヨネーズ・吉田敬さん、フットボールアワー・岩尾望さん、銀シャリ・橋本直さんが務め、セットもゴージャスになるなどして“新たなカミマンのかたち”を見ることができました。

大賞のザ・ぼんち「いつからこんなにアナーキーな漫才に」

ザ・ぼんち(ぼんちおさむ、里見まさと)

大賞受賞のザ・ぼんちは、コンビとしては1981年以来、2度目の受賞です(まさとさんは1998年、里見まさと・亀山房代でも大賞受賞)。

ザ・ぼんちの受賞理由として考えられるのは、芸歴16年目以上の漫才師を対象とする全国賞レース『THE SECOND』で2025年に決勝へ進出したことや、芸歴55年目の現在でも劇場で若手と切磋琢磨している奮闘が認められてのものではないでしょうか。

加えて、おさむさんの暴走芸と、それをなんとか軌道修正してネタの本筋をやろうとするまさとさんの漫才スタイルが、競技漫才全盛のこの時代、逆に新鮮に見えるところも評価されたように思います。今回のネタ中、型破りなおさむさんを見ながら、まさとさんは「しゃべくり漫才でやってきたのに、いつからこんなにアナーキーな漫才になったんやろう」と苦笑いしていました。

発表会後の記者会見で、ザ・ぼんちの現在の漫才スタイルについて尋ねると、まさとさんは「僕はこう見えてあっけらかんとしていますから、(おさむさんに)どんどんやってもらって、スベろうがなにしようが、この歳ですからね。トライするという意味では、ええんちゃいますか、おさむさんも「僕は猪突猛進。僕は右に曲がれない。ドーンとぶつかって気がついたらそこを通り抜けていて、そうしたらまたぶつかって、そんな状態ですから当たって砕けろで、自分の好きなお笑いに向かってがんばっていきたいです」と、思い切ったパフォーマンスを心がけたいと語っていました。

奨励賞で金属バットがジャイアントキリング、『M-1』王者を撃破

金属バット(小林圭輔、友保隼平)

奨励賞では、会場が揺れるほど大きく湧き上がりました。

お笑いに限らず、王者はその地位に就いた瞬間から追われる立場になります。そして人間というのはゲンキンなもので、王者の圧倒的な強さが見たい反面、下剋上にも期待してしまいます。そういった波乱には、言葉では言い表せない高揚感が得られるからです。

奨励賞では、2組目に登場した『M-1グランプリ2025』王者のたくろう(赤木裕、きむらバンド)が圧巻の漫才を披露しました。事前に行われた新人賞の5組、そして奨励賞のトップバッターのツートライブ(たかのり、周平魂)がいずれも観客審査は300点台でしたが、たくろうは442点。3組目のカベポスター(永見大吾、浜田順平)が398点、4組目の天才ピアニスト(竹内知咲、ますみ)が409点で、“たくろう圧勝”のムードが漂いました。
そんな中、ジャイアントキリングを起こしたのが5組目の金属バット。ほかの4組は大型賞レースの受賞経験がありますが、金属バットは縁がありませんでした。漫才前の煽りVTRでも「マジでなんで呼んでくれたんですか」(友保さん)、「どういう心境の変化ですか」(小林さん)と奨励賞ノミネートに自ら疑問を呈しました。ただ、その後の漫才でその日一番の笑いが起きました。客席全体に「もっと金属バットのネタが見たい」という欲求が渦巻いていることが伝わってきました。そして点数は482点。点数が出た瞬間、地鳴りのような歓声が上がりました。

結果発表後のCM中、MCの海原ともこさんも「お客さん(の盛り上がり)がすごかった。こっちから見ていて“ぶおー”ってなった。鳥肌が立った」と興奮していました。『M-1』王者を、「無冠の帝王」「アウトローのカリスマ」の金属バットが破ったことの格好良さも、盛り上がりにつながったのではないでしょうか。記者会見で小林さんが「大阪を裏切って東京に出て行った奴らに負けるわけにはいかなかった」と冗談を言っていましたが、ただ、半分は本音だったのではないでしょうか。

ちなみに奨励賞は、2023年に吉田たち、2024年に見取り図、2025年にヘンダーソンが受賞。いずれも金属バットの同期です。友保さんは「次はデルマパンゲですよ」と、同じくアウトロー路線を走る同期の盟友コンビに期待を寄せていました。

新人賞・ぐろうが見せた“マジ実力”「負けたら悔しいだけ」

ぐろう(家村涼太、高松巧)

新人賞は結果的に、2026年の『第ytv漫才新人賞』王者・ぐろうと『NHK上方漫才コンテスト』王者・例えば炎(タキノルイ、田上)が1点差で競る展開になりました。

例えば炎は『NHK上方漫才コンテスト』でも見られたように、おなじみのスタイルだったタキノさんの“あえてスベるつかみ”を今回も封印。所属するよしもと漫才劇場でもトップ人気の同コンビが“本気モード”になり、実績もついてくるようになりました。まさに人気・実力を兼ね備えたコンビへ成長したと言えます。

そんな例えば炎らを「マジ実力」(家村さん)でなぎ倒したのが、ぐろうでした。新人賞受賞が決まり、高松さんの口からまず飛び出したのが「僕らはあんま、人気ないです」という嘆き。ぐろうはまさに、ストロングスタイルのしゃべくり漫才。例えば炎は隙があれば笑いを放り込んでいくのに対し、ぐろうは話をじっくり聞かせながら笑わせます。特色がかなり異なる関西賞レース王者同士のぶつかり合いは、とても見応えがありました。

記者会見では家村さんは「負けたら悔しいだけなんで。負けてたまるかって感じです。全員敵に見えます。でも新人賞獲れたんで、ちょっとは仲間に見えるかな」、高松さんは「例えば炎が優勝した『NHK上方漫才コンテスト』は、僕らも最終予選には行ったんですけど決勝へ進めなかったんです。だから、その“優勝対決”は(新人賞の)見どころになったと思います」と、ライバル心をむき出しにしている様子が印象的でした。

リニューアルで新たなフェースを迎えた『上方漫才大賞』。上方漫才の盛り上がりを支える賞レースの一つとして、今後も重要な役割を担うことになりそうです。

取材・文:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
miyoka
0
銀河の一票
カンテレドーガ
カンテレ笑タイム
ハチエモン
カンテレアナウンサーチャンネル
カンテレドラマニア
ウェルチル
カンテレID