スマホの光が照らす黒木華の希望と、野呂佳代が歌う『悪女』でひも解く感情の裏表。ドラマ『銀河の一票』第3話、二人の絆(きずな)を描く巧妙な演出が胸を打つ

スマホの光が照らす黒木華の希望と、野呂佳代が歌う『悪女』でひも解く感情の裏表。ドラマ『銀河の一票』第3話、二人の絆(きずな)を描く巧妙な演出が胸を打つ
第1話、第2話で名言が数々登場して話題を集めている“選挙エンターテインメント”ドラマ『銀河の一票』(毎週月曜 午後10:00~/カンテレ・フジテレビ系全国ネット)。その第3話が5月4日に放送されました。
大物政治家の父(坂東彌十郎)の不正を疑ったことで秘書の仕事も家も失った星野茉莉(黒木華)と、彼女が出会ったスナックママの月岡あかり(野呂佳代)。
第2話では、あかりが、鴨井とし子(木野花)からスナックのママを引き継いだ理由が明らかに。あかりの中には、自分の命を救ってくれたとし子への恩返しの気持ちが強くあり、認知症で介護施設に入ったとし子のために、苦しい懐事情であってもスナックを営み続けているのです。あかりを都知事選で当選させて政界へのカムバックを狙っていた茉莉は、スナックを辞められない理由を知り、出馬のオファーを白紙に戻します。
『銀河の一票』第3話 野呂佳代

『銀河の一票』第3話 野呂佳代

そうした物語の中に登場した、都知事という立場について茉莉が話した「(誰かの)上じゃなくて、前です」「同じ地面に足を着けて、同じ景色の中を、同じ気温を感じながら同じ道を歩くんです。先頭を、明るい方へ」という言葉が、多くの視聴者の心に響きました。

そして第3話では、とし子の成年後見人を務める弁護士・竹林圭吾(中山求一郎)から、スナックの売却計画が進んでいることが告げられます。スナックの経営状況はどん底で、あかりが蓄えを切り崩していたのです。とし子のためにも店を存続させたいあかりと、そんな彼女の気持ちをくみ取って、竹林に対抗する茉莉。そうした中、茉莉は常連客・樫田敦史(岩松了)から、とし子の知られざる気持ちを聞かされることに。
『銀河の一票』第3話 中山求一郎

『銀河の一票』第3話 中山求一郎

茉莉にとってあかりの存在は“サーチライト”だった

『銀河の一票』第3話 黒木華、野呂佳代

『銀河の一票』第3話 黒木華、野呂佳代

この第3話で筆者が思わず「うまい!」とうなった演出が二つありました。

一つは、第1話で私たちが何気なく見ていた、茉莉とあかりの出会いを回想する場面。それは、茉莉がカバンにつけている電球をモチーフのキーホルダーをなくして探していたところ、あかりがスマホのライトを光らせて声をかけてくれたという出来事。それをきっかけに二人は交流を深めていきます。

今回、あらためて茉莉がそのときのことを振り返ります。そしてこのように言うのです。「あなたが光に見えました」「どうしてだか分かりません。でも、分かったんです。この人だ、って」。夜、探し物をするときにスマホを頼るのは今や当たり前のことですよね。ごく自然な行動だったため、あのシチュエーションの貴重さを見過ごしたと言えるでしょう。

茉莉にとって、スマホを光らせて近づいてきたあかりの存在は“サーチライト”だったのです。彼女が照らした光は、紛失したキーホルダーを見つける意味はもちろん、人生の迷い道に踏み込んだ茉莉にとっての希望にもなっていたのです。また、茉莉の亡き母・瑠璃(本上まなみ)の「迷ったら明るい方へ行くの」という言葉を具体的なエピソードとして描写した、きわめて重要なワンシーンだったと再認識させられました。

名曲『悪女』が歌われるカラオケシーンから分かること

もう一つはスナックでのカラオケの場面です。ちなみにドラマなどにおけるカラオケシーンは、重要な意味を持つことが多いです。

いつものように常連客たちでにぎわうスナックで、あかりが、中島みゆきさんの『悪女』(1981年)を歌唱します。同曲は、浮気をしている恋人をそれでも愛してしまう女性の気持ちが歌われています。女性は、自分から別れを告げることができないため、悪女を演じて恋人に「さよなら」を言わせようとします。あかりはその女性の行動を「優しさ」と捉え、茉莉は「プライドって思っちゃいました。かっこいいなって」と解釈します。あかりも「大好きだけど大嫌いとか、悲しいけど腹立つとか、うれしいけど寂しいとかさ。混ざってるもんね」と、人の気持ちは表裏一体であると受け取ります。

この『悪女』の解釈は第3話の展開と重なる部分が多く見られました。たとえば、あかりととし子が過去にちょっとした行き違いでけんかをしたとき、悪びれた様子がなくいつも通り明るく振る舞うとし子から渡された買い出しの紙の裏に「ごめんね」と一言つづられていたエピソード。そして、自分への恩義のためにスナックのママを引き継いだあかりに対するとし子の本音――。そういう裏腹な感情は誰にだってあります。ただ、相手にその裏側の気持ちが気づかれないまま、物事が過ぎていってしまうことも多いですよね。
『銀河の一票』第3話 木野花

『銀河の一票』第3話 木野花

『銀河の一票』は、政治家の表と裏の顔を描いてもいますし、茉莉も自分の腹黒さと向き合いながら社会を見つめようと奮闘しています。そうした部分もあり、『悪女』からひも解かれた人間の感情の表と裏は、同作の根幹にある視点と言えるのかもしれません。
文:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
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