「ノーと言わない」が「ノーと言えない」に変わるとき。奥本拓夢(大東駿介)の優しさと危うさ【大東駿介主演 『絶望できない男』 第2話】

   「ノーと言わない」が「ノーと言えない」に変わるとき。奥本拓夢(大東駿介)の優しさと危うさ【大東駿介主演 『絶望できない男』 第2話】
9月17日よりスタートしたスペシャルドラマ『絶望できない男』の第2話が、24日に放送されました(毎週木曜 深夜25:15~/カンテレ)。
テレビ番組制作者として伝説的なエピソードを残した奥川拓二さんの自伝をもとにした同作。主人公は、フリーのAD(アシスタントディレクター)として成功し、会社を立ち上げた奥本拓夢(大東駿介)です。そんな彼の波乱万丈な生き方を、人間味とユーモアをたっぷりまじえて描いています。

奥川拓夢(大東駿介)

「絶対に断らへんこと、ノーと言わへんこと」

第2話では、テレビ局社員のAD・水野秀真(八村倫太郎)が企画した音楽番組を実現させるため、奥本が奮闘。「いまどき音楽番組なんて」と冷ややかな声が上がるなど苦戦必至な中、スポンサーを見つけだし、音楽番組の地上波放送を実現させます。当初は評判も上々でしたが、放送を重ねるにつれて厳しい状況に陥ります。ついにはスポンサーから番組提供を打ち切る意向を伝えられてしまいます。

水野秀真(八村倫太郎)

そんな第2話からは、奥本の強みと弱みの両方が見えた気がします。彼は、成功の秘訣(ひけつ)について「絶対に断らへんこと、ノーと言わへんこと」だと話します。その言葉通り、テレビ制作の枠にとらわれず、ビジネスになりそうなことには次々と挑戦していきます。そのバイタリティと行動力が、奥本を前に進めていくのです。
仕事において奥本を前進させてきた「ノーと言わない」という姿勢は、人に対して向けられると「優しさ」にもなります。「時代的に音楽番組は厳しい」と言われても、企画を必死に考えた水野のために、何とかしてあげたいと力を尽くす奥本。一見すると行き当たりばったりに見えますが、その根底には厚い人情があるのです。たとえば企画書を作るコツに関しても、説明や知識でびっしりと埋めるのではなく、「企画書はラブレター。(読む相手の)心をどうつかむか」と水野に伝えます。つまり、企画者の顔が見えるもの、血が通っているものが大事なのだと言うのです。

篠原(辻凪子)、水野秀真(八村倫太郎)、佐久間(肥田日向)、小柳(前田航基)

だからこそ、型破りな奥本を放っておけない人たちが周囲に集まってくるのかもしれません。

奥本の優しさゆえの不器用さ

しかし、その「優しさ」は奥本の弱みにもなります。彼は優しすぎるようにも見えます。だから「ノーと言わない」が、次第に「ノーと言えない」になるのです。
音楽番組からスポンサーが下りることになり、本来なら番組存続はあきらめるところを、奥本は水野らに事実を隠して新たなスポンサー探しのために奔走します。多くのテレビ番組はいずれ終了するもの。そうなったらやり直せばいい。ただ、水野からの“企画書という名のラブレター”を一度受け取ってしまった奥本は、それをずっと大切にしたいのだと思います。

水野秀真(八村倫太郎)、奥川拓夢(大東駿介)、佐久間(肥田日向)、篠原(辻凪子)、小柳(前田航基)

さらに奥本からは、弱みを人に見せたくないという性格もうかがえます。それもやはり、誰かに心配をかけたくないという「優しさ」からくるものではないでしょうか。だから、常に明るく、前向きな雰囲気を漂わせています。奥本は、水野に「終わらせるっちゅうのは、守ることやない。逃げることや」と言います。奥本のプライドと、優しさゆえの不器用さが感じられます。
だからこそ危うさもあります。水野のがんばりを守りたいのか、水野が立てた企画と番組を守りたいのか、それとも自分自身が「終わらせる」という決断をしたくないのか。そこには、優しさゆえの不器用さだけでは収まらない、奥本自身も気づいていない“曖昧さ”があるのです。そして、その曖昧さに後の破綻の予兆が見えるのです。  

石黒(小出恵介)、奥川拓夢(大東駿介)

文:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
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