楽しみにしていた医療ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』の第1話が4月15日にスタートしました。
とある事故をきっかけに過去2年間の記憶を失い、今日のことも明日には忘れてしまうという記憶障害を抱える脳外科医・川内ミヤビ(杉咲花)。一切の医療行為を禁止され、許された仕事は看護師の仕事の補助のみでしたが、アメリカ帰りの脳外科医・三瓶友治(若葉竜也)の出現により、脳外科医として新たな一歩を踏み出すことになります。
今日できることを精一杯やろうと前向きに生きているミヤビ。毎日の出来事を事細かに記録し、毎朝5時に起きてそれらの情報を覚え直しています。「私はまだ医者なのだろうか」という言葉を胸の奥底に押し込めて明るく振る舞う様子には、すごいなと思うと同時に切なくなります。
できることは制限されてしまうけれど、ミヤビが働く丘陵セントラル病院の人たちが彼女の症状を理解して一緒に働いている様子はすてきだなと思いました。明るくてお茶目な救急部長の星前宏太(千葉雄大)、ミヤビを応援してくれている麻酔科医の成増貴子(野呂佳代)、弱気な院長の藤堂利幸(安井順平)、毎日「風間です」とあいさつしてくれる研修医の風間灯織(尾崎匠海【INI】)、優しくてかわいいナースの森陽南子(山谷花純)と新井小春(中村里帆)。ミヤビの主治医である関東医科大学病院・脳神経外科教授の大迫紘一(井浦新)も含め、温かい人たちが多いです。
ただ一人、看護師長であり・病院の医療安全室長も兼務している“安全の鬼”津幡(吉瀬美智子)だけは厳しくミヤビの医療行為に大反対。でも彼女の立場を考えれば仕方ないことなのかもしれません。
そこにやってきた三瓶はかなりマイペースな変人。言葉は端的だけど冷たいわけではなく、結果的にミヤビを励ますけれど押し付けがましさがない。そんな三瓶の言葉は信頼できる気がします。彼の存在や言葉は、ある意味この作品にとってもミヤビにとっても光となっていると思います。私も「ベリーグッドです」って言われたい。
制作発表では、杉咲さんから若葉さんへの「やるよね?」という電話が役を引き受けようと決めた一因だと語り、杉咲さんも「本当に三瓶先生にぴったりだと思ったので」と話していましたが、たしかに三瓶のひょうひょうとした感じは、若葉さん以外に考えられないような気がします。
杉咲花と若葉竜也の圧倒的な信頼関係「座長としても役者としても人間としても信頼してます」『アンメット ある脳外科医の日記』制作発表会見
「強い感情は忘れません。記憶を失ってもそのとき感じた強い気持ちは残るんです」
三瓶先生の言葉が印象的でした。ミヤビのような状況になってはいないけれど、自分にとっての強い感情はどれなんだろうと考えました。
屋上で三瓶に「あなたは障害のある人は人生を諦めてただ生きていればいいと思ってるんですか? 絶望してしまうのは仕方ないと思います。でも患者を救えないことより、ご自分の絶望が怖いなら、まぁ仕方ないですね」と言われ、ひとり泣きじゃくるミヤビを見て、平気なわけじゃなかったんだと思い知らされました。絶望しないわけがないし、つらくないわけがないよなあ……。「足りない部分はまわりがフォローすればいい。当然のことです」とさらっと言う三瓶先生、いい。
第1話では、ミヤビたちのストーリーに脳梗塞で運ばれてきた女優の赤嶺レナ(中村映里子)とレナの夫でマネージャーの江本博嗣(風間俊介)の物語も絡んできました。失語症で言葉をうまく発したり聞き取ったりできなくなってしまったレナ。普通の言葉が症状のある人からどんなふうに聴こえているかも再現されていて、ドキッとしました。命が助かってよかったけれど、急にこんな状態になってしまうなんてつらすぎる。
江本を演じた風間俊介さんの演技が心に刺さりました。レナが運び込まれたときの混乱した様子、彼女になんとか回復してほしくてリハビリを手伝う様子、主役のドラマを他の人が演じると知ったレナに八つ当たりされ、涙ながらに彼女とのこれまでと絶望を語るところ。ミヤビに励まされ涙し、最後に笑うシーン……どの表情もすべて違ってみんないい。1回のみの出演なのが残念なくらいです。
レナの当たり役となった戦隊ものの決めゼリフ「私たちはやれる! へーんしん!」が効いていたのもよかったです。
この作品、かなり顔面がどアップになるシーンが多いのですが、ありのままの姿を映していて、飾らず懸命に生きる人々の姿を描いたこの物語では、そういった姿も美しく感じました。また、登場人物たちの絶妙な表情も印象的です。特に愛のない政略結婚相手の西島麻衣(生田絵梨花)と食事をしていて、彼女が去った後の綾野楓(岡山天音)の不快そうな顔。そして、ともに手術を行って成功させた後のミヤビと三瓶の様子を見た津幡は、怒りや不服そうな顔ではなく、驚いたような心動かされたような、なんとも言えない表情をしていました。彼らについてもっと知りたくなりました。
「わたしには今日しかない」という言葉を「わたしの今日は明日に繋がる」と書き換えたミヤビ。初回は平和に締めくくられるのかと思ったものの、ラストには不穏な展開が。
三瓶が当直室に戻ると、ダンポールが敷かれた寝床には笑顔でセクシーに(?)横たわる星前の姿。意外ともう仲良くなったのかな?と思いきや、星前が三瓶に突きつけたのは1枚の写真。そこに写っていたのは、笑顔のミヤビと三瓶でした。かなり親しそうな二人の姿に、見ているこちらも「どういうこと!?」となります。予告では綾野も二人の関係を知っている様子でした。
三瓶の正体、そして目的は何なのでしょうか。どうかミヤビの味方であってほしい……!
早くも次回が待ちきれません!
文:ぐみ
熱量高めなエンタメライター・編集。ドラマ・映画・アイドル・アニメなどのコラムやレビュー、インタビューを執筆中。
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