『あの子の子ども』 第3話レビュー
福の親友である矢沢(茅島みずき)が、福とのエピソードを過去形で語るインタビューから始まった3話。福の笑顔の表情一つで、無理してるのかそうじゃないのかわかる、と言う矢沢。その語りから、矢沢にとって福は初めてできた大事な親友なのだとわかります。
福は矢沢に、避妊に失敗しアフターピルを飲めなかった事情を打ち明けます。ふざけたり、適当な返事をしたりせず、ちゃんと福の話を受け止めてあげる矢沢。2人の友情の絆を感じました。
その後、福のクラスの家庭科の授業でライフプランを考える課題が出されます。矢沢の用紙には大きく「未定」の文字。矢沢に思いを寄せる飯田(河野純喜)は、勝手に矢沢の用紙に「飯田とハッピーライフ♡」と書き込みますが、このときの矢沢と飯田のやり取りが楽しいのです。矢沢に冷酷に「消せ」と言われても、めげない飯田。そんな飯田のライフプランはというと「将来なりたい自分:矢沢しか勝たん」「18歳:矢沢とデート」「進路:矢沢と旅行」「20歳:矢沢結婚」となっていました。矢沢愛が強すぎる飯田。今は矢沢に塩対応されているけど、報われてほしいものです。
その日の放課後、矢沢は福をカラオケに誘います。矢沢は自分は歌わないのに、どうしてカラオケに誘うのでしょうか。福を元気づけたいのか……だとしたら優しすぎます。矢沢いわく「うざい」飯田が一緒にカラオケに行くことを断らないのも、福が楽しそうにするからかな、と感じました。
一方、福から「生理きた」との報告を受け、また日常に戻ったように陸上に打ち込む宝(細田佳央太)。福の母・晴美からも信頼されている宝は、川上家の団らんの時間もともに過ごします。福の家で食事をした帰り道、宝は、課題のライフプランに悩む福に「おれも、将来とか、未来とか、福と一緒に決めたい」と告げます。未来のことを2人で一緒に決めたい、と思い合う福と宝の関係はとてもすてきです。
ところが、また福の体調に変化が。養護教諭の足立(菊池亜希子)から「生理ではない不正出血があるなら婦人科を受診したほうがいい」と聞き、スマホで検索すると再び妊娠の可能性がよぎります。そして、1人で妊娠検査薬を買ってファミレスのトイレでチェックする福。
3話でとくに心に残ったシーンが2つあります。1つ目は、福が矢沢に事情を話す際に「アフターピルくださいってことは、エッチしましたってことじゃん。ヤバい絶対無理って。言えないなって」と言ったこと。16歳の高校生なら、そう思うのは当然かもしれません。だけど、恋人と性行為をしたことが親や学校に知られることと、妊娠するかもしれないことの、どっちのほうがリスクが大きいのかを、福が知らないことが私にはショックでした。
そして、2つ目は福が養護教諭に言われてやっと不正出血のことを調べたシーン。16歳が「生理以外の出血」について知らないことも、ショックでした。
2つのシーンから感じたのは、思春期の彼らが持つ性に関する情報が圧倒的に不足していること。福と宝は触れ合いにどんなリスクがあるのかを知ってはいても、リスクが現実になったときに、どんな行動を取るべきなのか、女性の体にどんな変化が起きるのかを知りませんでした。彼らのような中高生は少なくないのでは……と危機感を覚えます。
3話では、福の不安や体調の変化、そして福が知らない性の知識について、ていねいにリアルに描かれていました。福と宝に、いったいだれがどんなふうに手を差し伸べられるのだろう、と考えさせられる回でした。
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文:早川奈緒子
川崎市在住のフリーランスライター。10代の子ども3人の母。「たまひよ」など主に子育て系メディアで取材・ライティングを行う。
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