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山岳医療は山好きの医師たちの善意ではない。命をかけて戦っている『マウンテンドクター』第10話の見どころ

2024.09.09

山岳医療は山好きの医師たちの善意ではない。命をかけて戦っている『マウンテンドクター』第10話の見どころ
いよいよクライマックスに向かって突き進む第10話、今回も一瞬たりとも目が離せませんでした。

前回、突然倒れた江森(大森南朋)が心配でしたが、冠動脈※の疾患を抱えていたことが明らかになります。江森が入院するとの知らせに、MMTメンバーの表情は暗く沈んでいます。
※心臓の筋肉に血液を送っている血管。冠動脈に異常を来たし、心臓の動力源が不足する病気である狭心症、心筋梗塞を総称して冠動脈疾患という。

一方、純家(松尾諭)と聖子(池津祥子)は結託して、MMTを活動自粛に追い込みます。聖子はMMTを徹底的につぶし、娘の典子(岡崎紗絵)を取り戻したい一心ですが、その行動が逆に典子を遠ざけていることがどうしてわからないのでしょうか。

そんな中、鮎川山荘近くの蒼馬岳で地震による土砂崩れが発生し、4名の登山者が安否不明に。病室でニュースを見ていた江森は、登山者の荷物に婚約者・美鈴(中越典子)のものと同じ赤いカラビナがあることに気づきます。居ても立ってもいられなくなった江森は、病院を抜け出して蒼馬岳へと向かいます。

周子は江森から「美鈴の所持品が見つかったかもしれない」と聞かされ、嗚咽(おえつ)を漏らします。7年間行方不明だった婚約者の遺品を求め、病を押して駆けつけた江森の心情を思うと、胸が締め付けられるシーンでした。

江森(大森南朋)、玲(宮澤エマ)、歩(杉野遥亮)

こんな大変なときに、純家は周子を県庁に呼び出します。信濃総合病院への行政指導と、航空隊からの上申書を突きつけ、活動自粛をするようにと告げたのです。

航空隊からの上申書はとても重く、もう二度と医師をヘリに乗せないと宣言されたも同然でした。周子は、MMTは知事の意向で発足したのだと食い下がりますが、その知事から一任されたという純家を説得することはできませんでした。

土砂崩れの現場では登山者が発見され、一刻も早い治療が必要でした。しかし消防本部が難色を示しているため、江森は周子に「なんとかしろ」と電話してきます。
「人命がかかっている」との江森の言葉に、周子は奮い立ち、知事室へと向かうのでした。

ここからの周子が震えるほどかっこよかったです。
秘書の制止を振り切って知事室に突撃し、知事と対面します。
MMTは自分や知事にとっても「我が子同然の存在」だと熱弁をふるい、ついに知事を動かします。そして歩(杉野遥亮)と玲(宮澤エマ)が救助隊のヘリで現場に向かうことに!

周子に出し抜かれた純家は「山のお医者さんごっこはやめていただきたい」と侮辱的な発言をします。その言葉に、ついに周子がキレました。
「空調の効いた部屋でお役所ごっこなんてやめていただきたい」と言い放った周子は、本当にかっこよかった!

純家(松尾諭)と周子(檀れい)

一方、聖子に呼び出されて典子が病院の食堂に向かうと、勝ち誇った表情の聖子が待っていました。
聖子は、典子が麻酔科医になったことだけでなく、MMTの活動も認めていません。しかもその理由は、山岳医療がマイノリティーだからだというのです。山岳医療なんて山好きの医者の善意で成り立っているという聖子の言葉に、典子は激怒します。
「大切な命を守るためにみんな努力している。医療は時代とともに変わっていくべきです」と言い切りました。

典子はドラマ前半と比べて、本当に強くなりました。自分の意思をはっきりと母親に言えるようになった。麻酔科医になったことを隠し、母親に何も言えなかった頃とは大違いです。

小宮山(八嶋智人)もドラマの中で、昔は救急医療も手探りだったと話していました。トライアンドエラーを繰り返しながら制度が整い、ようやく現在の救急専門医が生まれたのだと。
だから典子の、医療も時代とともに変わるべきという考えにはとても共感できます。山岳医療はまだ前例が少なく、救助における判断が難しいシーンもあると思いますが、今後の山岳医療の発展のためにも、MMTみんなの力で困難に打ち勝ってほしいです。

登山者4名はMMTの総力で、全員無事に救出されました。周子は懸命に救助にあたるMMTの姿を見て「これこそが私の信じた山岳医療よ」と誇らしげに微笑します。

救助が終わり、歩は江森に「なぜ病院を抜け出したのか」と問いかけます。江森はこれまで、歩が現場へ行くことに何度も反対してきました。その江森がなぜ?
江森は婚約者の遺品をみて、背中を押されたと打ち明けます。婚約者を失った日、自分は現場に行くことさえできなかった。現場には救えるかもしれない命がある。それを歩たちが教えてくれたと……。

ドラマの前半ではずっとMMTの活動に反対していた江森ですが、歩たちの頑張る姿を見て、MMTの理想を探したいと、歩のことも山岳医師として認めてくれたようでした。

歩(杉野遥亮)

しかし江森は下山中に強い発作を起こし、危険な状態に陥ります。
どうか江森先生が無事でありますように!
そして鮎川山荘をたたむことにした、という篤史(石丸謙二郎)に、玲たちはどんな言葉をかけるのでしょうか?
典子と聖子はわかりあえるのでしょうか?
最終話まで、息もつけない展開です!

玲(宮澤エマ)と歩(杉野遥亮)

文:馬場 絵美
三重県在住のライター。大手Webメディアの記事執筆やコラム、メルマガ、プレスリリースなどを執筆中。
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