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“ハチャメチャ弁護士”趣里が令和に潜む怪物たちに挑む『モンスター』第1話レビュー

2024.10.15

“ハチャメチャ弁護士”趣里が令和に潜む怪物たちに挑む『モンスター』第1話レビュー
異色のリーガル・エンターテインメントとして放送開始前から話題を集めていた『モンスター』。第1話は、会社員の女性・川野紗江(藤吉夏鈴)が自ら命を断ち、自殺教唆の疑いで交際相手の塩屋遼(萩原利久)が逮捕されるという、いきなりシリアスな幕開けとなりました。

塩屋の弁護を依頼されたのは、大草圭子法律事務所。明らかに自殺をあおるような塩屋からのメッセージも残されており、弁護は難しいと若手弁護士・杉浦義弘(ジェシー)とパラリーガルの村尾洋輔(宇野祥平)、村尾由紀子(音月桂)が頭を抱えています。そこに突然現れ、「弁護士をやってみることにした」という意味深な言葉を放ったのが、趣里さん演じる神波亮子でした。

神波亮子(趣里)

2023年後期の朝ドラ『ブギウギ』(NHK)で、明るい昭和の歌姫を軽快に演じた趣里さん。本作では、謎めいた新人弁護士を熱演しています。クールでポーカーフェイスなキャラクターですが、時折見せる笑顔やとぼけた演技にきゅんとします。亮子が身につける「アンリアレイジ(ANREALAGE)」とのコラボ衣装も、凛とした中にかわいらしさがある彼女の雰囲気にぴったりです。

杉浦たちが断ろうとしていた事件の弁護を自分がやると宣言した亮子は、資料に軽く目を通すと即座に関係者への聞き込みを開始。見聞きするものすべてを冷静に見つめながら、わずかな違和感を逃さずに情報を集めていきます。予想できない亮子の行動に、先輩弁護士の杉浦は翻弄(ほんろう)されまくり。

紗江の母親から話を聞くために、「検察官の主張でどうしても納得できない点がある」と言っていたのが、まさかのハッタリだったり。向かった先々で冷たい態度であしらわれても、平然としていたり。かと思えば履歴書を書いて、紗江の元勤務先に清掃バイトとして潜入し、実態を暴こうとする……。まさに型破りな行動力です。

神波亮子(趣里)

潜入捜査がバレて紗江の上司・上岡が事務所に押しかけたり、SNSで塩屋が炎上し亮子の写真もさらされたりとトラブルが立て続けに起こっても、亮子本人はニヤリ。味方につけたはずの証人も出廷しない事態に、法廷で塩屋は大暴れ。なのに「盛り上がってきた」と余裕な亮子。絶体絶命のピンチのはずなのに、何を考えている……?見ているこちらも謎解きに参加しているような気分で、テンポよく進む展開にどんどん目が離せなくなります。

亮子の協力者・城野尊(中川翼)の支援もあり、物語が進むにつれて次第に真実を突き止めていく亮子。紗江が直面していたあまりに過酷な労働環境の実態も明らかになり、最後には大どんでん返しを見せて、見事裁判に勝訴しました。ハッピーエンドかと思われましたが、エンディングではある人物の心に潜む“闇”が垣間見えて……。

塩屋遼(萩原利久)

カウンセリングを受けながらも、極限状態で自分を追い詰めてしまった紗江や、ふとした瞬間に自分でも抑えきれぬ強い感情に飲み込まれてしまう塩屋。そして過酷な環境に追い込まれた過去を持ちながら、同じ状況で苦しんでいる紗江に冷淡な言葉を投げかけた心理カウンセラーの梅本ますみ(美波)……。『モンスター』の登場人物たちは、生きることに不器用だったり外からは見えない“闇”を抱えていたりと、目を覆いたくなるような“人間臭さ”をにじませています。そんな彼らにどこか共感してしまうのは、私たちも彼らと同じような“闇”を抱えているからかもしれません。

放送直後のX(旧Twitter)では、「言葉の意味重みを感じたし、誰かの行動一つで人は最悪の事態に陥ってしまうんだな」「何の意味もない悪意が一番怖い」「エグすぎる」など、人の心に潜む“闇”に衝撃を受ける声が相次いでいました。

『モンスター』は、現代社会にはびこる根深い“闇”にスポットライトを当てた新感覚のリーガルドラマ。第1話から、インターネット上の誹謗中傷や過重労働・パワハラなどのリアルな内容で、次回放送が待ちきれません!
文・神田 佳恵
フリーライター 兼 一児の母。
取材・インタビュー、エンタメ記事、エッセイなど、複数媒体・分野で執筆中。
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