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杉浦(ジェシー)、学歴詐称し御曹司に精子提供した男を弁護

2024.10.28

杉浦(ジェシー)、学歴詐称し御曹司に精子提供した男を弁護

『モンスター』第3話レビュー

『モンスター』放送後は、いつも深く考えさせられます。第3話はSNSを通じた匿名の精子提供を巡るストーリーでしたが、法廷の外で大きな一歩を踏み出した女性の姿に、幸せとはなんなのかを問われたような気がしました。

物語は、自身を東大卒の高学歴だと偽って精子提供をしていたアカウント“健太”が、精子提供を受けた女性から学歴詐称で訴えられているニュースを目にして驚愕(きょうがく)する、五条和彦(渋谷謙人)・亜佐美(佐津川愛美)夫妻の自宅から始まります。どうやらこの夫婦も、“健太”を名乗る人物から精子提供を受けていたようです。

後日、大草圭子法律事務所へ相談にやってきた五条夫妻。“華麗なる一族”との呼び声のある大企業の跡取り息子が、なぜわざわざ亮子(趣里)に助けを求めたのか。冒頭の様子から、てっきり精子提供者への訴訟依頼かと思いきや、まさかの相手方を弁護してほしいという依頼内容でした。

神波亮子(趣里)

ネガティブな内容で五条の名前を広めたくない」と、とにかく世間体を気にする和彦。事を荒立てないために、“健太”の件を示談で丸く収めたいということでした。高学歴でないならば、子どものこともなかったことにしたいとまで和彦は言い出し、隣の亜佐美は浮かない表情を見せます。どうして子どもが欲しかったのか亮子に問われ、困惑した様子の亜佐美。変なこと聞くなぁと思いつつ、確かにこの夫婦、大切な我が子のことなのに、どこか他人事のような違和感があります。

五条和彦(渋谷謙人)・亜佐美(佐津川愛美)

個人的に、今回は杉浦(ジェシー)大活躍(?)の回だったなと感じました。3話目にして完全に上下関係が逆転してしまった亮子から、勝手に“健太”こと斉藤文哉(佐藤寛太)の弁護を振られますが、真面目な態度で文哉に向き合います。示談の方向で話を進めようとするも、文哉は示談には応じないとキッパリ。結局この件は、裁判にもつれ込むことに。その後も誇らしげな表情やウッカリ顔、落胆して肩を落とす仕草など、コロコロ変わる杉浦の表情がなんともかわいらしく、放送中何度も癒されました。

状況説明のために五条宅を訪れた亮子は、そこで亜佐美の妊娠に関する衝撃の事実を知ります。なんとお腹の子どもは文哉から精子提供を受けたのではなく、亜佐美の友人である医師・竹下から受け取ったというのです。話を聞いた和彦はヒステリックに怒鳴り、「俺に恥をかかせるな」と吐き捨てますが、竹下が東大卒と知ると「じゃあ産めば?」と考えを逆転。モラハラ気味な和彦の態度を見ていると心底腹が立ちますが、対する亜佐美の胸中は……?

五条和彦(渋谷謙人)・亜佐美(佐津川愛美)

一方で裁判は、原告の長岡茉由(吉本実憂)と文哉の間に恋愛感情があったのか、が争点となりました。あいまいで形のない人の感情を、どう証明するのか。茉由と文哉の間の真実を探りつつ、亜佐美と竹下の関係性についても追究していた亮子は、亜佐美の前で1つの仮説を語り始めます……。

第3話を見終わった直後、「幸せって、何が正解なんだろう」と筆者は思いました。特に結婚は男女にとって大きな節目で、無条件に幸せなことだと思われる風潮が世の中にあります。その実態がたとえうまくいっていないとしても、離婚するのは体裁が悪いし……そんな内情を抱える夫婦もいるかもしれません。

「学歴・収入がなければいけない」「夫婦は添い遂げなければいけない」「子どもは生まないといけない」……果たして本当にそうなのでしょうか?固められた価値観に身を沈め、「これが正解なんだ」と言い聞かせる生き方。そうではなく、人生に真摯(しんし)に向き合っていくことの重みを説く、ずっしりとした教訓が胸に響きました。中盤で皮肉たっぷりに亮子が放った「お幸せに」が、晴れやかな表情で最後にもう一度亜佐美に伝えられたのには、思わずグッときましたね。

神波亮子(趣里)

『モンスター』のシナリオを担当されているのは、脚本家の橋部敦子さん。草彅剛さんが主演を務めた「僕シリーズ3部作」【『僕の生きる道』『僕と彼女と彼女の生きる道』『僕の歩く道』】(関西テレビ・共同テレビ)や、二宮和也さん主演の『フリーター、家を買う。』(フジテレビ系)など、現代社会にはびこる繊細な問題を優しい眼差しですくい上げ、多くの人に感動を与えながらも社会に一石を投じてきました。リーガルドラマの脚本は初めて担当されたそうですが、節々に橋部さんのエッセンスが感じられます。

放送後のX(旧Twitter)では、「精子提供コミュニティ、こじれまくってるなー」「とってもお似合いの夫婦」と、“妊娠”を取り巻く薄暗い現実に反応する声が相次ぐ中、「“こんなはずじゃなかったモンスター”になりかけていたひとりの女性を神波先生が救った」と、亮子の活躍に注目する方も。

次週はとある大学の名門サッカー部で巻き起こった体罰疑惑に立ち向かいます。文哉の体力測定時の運動着や、温泉での浴衣など、今週もかわいらしい姿をたくさん見せてくれた亮子のファッションにも、個人的には注目したいところ(笑)!
文・神田 佳恵
フリーライター 兼 一児の母。
取材・インタビュー、エンタメ記事、エッセイなど、複数媒体・分野で執筆中。
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