梶裕貴が向き合った、人の熱と選挙戦。ドラマ『銀河の一票』第9話で描かれた、効率化の時代だからこそ胸を打つもの

梶裕貴が向き合った、人の熱と選挙戦。ドラマ『銀河の一票』第9話で描かれた、効率化の時代だからこそ胸を打つもの
現代社会が抱える問題と物語のリンクにも注目が集まっているドラマ『銀河の一票』(毎週月曜 午後10:00~/カンテレ・フジテレビ系全国ネット)。その第9話が6月15日に放送されました。
大物政治家の父・鷹臣(坂東彌十郎)の不正を疑ったことで秘書の仕事も家も失った星野茉莉(黒木華)が、出会ったスナックママの月岡あかり(野呂佳代)に都知事選への出馬を打診するところから始まったこのドラマ。
第8話では、都知事選に立候補したあかりの存在をアピールするため、選挙カーで声を上げる“ウグイスさん”の役割をレジェンド声優の白鳥光留(日髙のり子)に依頼。ところが白鳥は精神的な理由から、以前のように声を出すことができなくなっていました。しかし、自分が演じたキャラクターが人々の心の支えになっていることを知り、気持ちを立て直していきました。
『銀河の一票』第9話 日髙のり子

『銀河の一票』第9話 日髙のり子

そして第9話では、都知事選告示日を直前に控え、“チームあかり”は準備に追われることに。告示日の1日で都内の全掲示板に選挙ポスターを貼り終える「告示日当日全掲示板制覇」は組織力のある政党の推薦候補にしか難しいとされてきました。しかし、茉莉やあかりたちが関係性を築いてきた街の人々からの後押しもあり、達成が現実味を帯びます。一方、大本命候補で鷹臣の支援を受ける日山流星(松下洸平)や対抗馬でAI企業社長・風間藍生(梶裕貴)の陣営も着々と準備を進めていきます。
『銀河の一票』第9話 松下洸平

『銀河の一票』第9話 松下洸平

「オールド」はネガティブな言葉?

昨今はメディアをはじめ、旧来の組織やあり方、価値観に対して「オールド」という言葉が頻繁に使われるようになりました。かつては「古い」だけではなく、伝統や熟成、価値を感じさせるなど、重みと渋みを象徴する肯定的な言葉として受け取ることができました。しかし現在の「オールド」は前向きに捉えられる場面が少なくなり、皮肉やネガティブさを込めた意味を持つようになりました。
社会や生活の中に新しい技術や考え方が取り入れられる場面が多くなり、変化のスピードが加速しています。「新しいこと」が評価されやすくなる一方、「古いこと」は時代遅れやアップデート不足に結びつけられやすくなったように思います。今、「オールド」は時代の空気を反映した言葉にありつつあるのではないでしょうか。
第9話でも、そんな「オールド」なスタイルがクローズアップされました。たとえば日山のライバル候補・風間の中学卒業という経歴について「家庭環境や本人の資質など、叩(たた)けば埃(ほこり)が出る可能性がありますので、今…」と“弱点”と考える民政党幹事長である鷹臣の政策秘書・雫石誠(山口馬木也)に対し、日山は「ヤバいよ、雫石さん、その価値観。オールドオールド。俺なら逆に売りにするけどな、中卒」と指摘します。
『銀河の一票』第9話 松下洸平

『銀河の一票』第9話 松下洸平

この場面で日山が指摘した「オールド」は、若い世代の物事の捉え方や時代の風向きを示す意味が感じられました。かつては学歴が人生を大きく左右するという考え方が今以上に強くありました。高度経済成長期以降は、より良い学校へ進学し、大企業へ就職することが安定した生活につながると考えられ、受験競争も激化。学歴は、能力や努力を測る指標として重視されるようになりました。世代的にも雫石には、そうした価値観の変化を表しているように見えました。
今も昔も学歴の高さが社会で有利に働く状況に大きな変わりはないと思われます。それでも、現代はSNSや動画配信の普及により、個人が自ら発信し、評価される機会が増えました。学歴だけでは測れない経験や専門性、発信力、人間的な魅力が武器になる場面も少なくありません。日山の言う「中卒を売りにする」という発想には、そうした時代の変化が反映されているように見えました。日山の「オールドオールド」という言葉もまた、時代の価値観が込められているのではないでしょうか。

人の力とがんばりは、理屈を超えた感動を呼び起こす

当の風間も当初は、選挙活動の中で垣間見られる自陣営のベテランたちの昔ながらのやり方に疑問を覚えているようでした。第9話でも、支援者を探すために電話をかけまくり、電話口で何度も頭を下げる自陣営の姿などを見てあ然とします。選挙戦に向けておはらいをする“慣習”も、風間にとっては信じられないものだったのではないでしょうか。
AI技術による社会変革を推進してきた風間にとって、そうした古いやり方に激しいカルチャーギャップを覚えたはず。ただそんな風間も、自陣営の人々の姿に徐々に心が揺さぶられていきます。自分に寄せられる期待感、そして風間のリーフレットを配る光景――。都知事選に本気になり切れず、オールドスタイルなやり方に違和感や戸惑いを覚えながらも、自陣営のがんばりを目にしたことで「腹を決めないおいらはこの世にいない」と決意を固めるのです。
『銀河の一票』第9話 梶裕貴ほか

『銀河の一票』第9話 梶裕貴ほか

筆者もこうした場面を見て、胸が熱くなりました。デジタルの良さを否定することはできません。しかしアナログなことにしかできない心の揺さぶりがあることにも気づかされます。人が持つ根源的な力やがんばりは時に理屈や合理性を超えた感動を呼び起こすのです。
“チームあかり”をサポートする人たちもそう。みんなが体を動かし、意見を交わし合って、目標に向かっていく。それらはすべて当たり前なことなのかもしれません。でも、“チームあかり”を手伝うスナック常連客・樫田敦史(岩松了)らがコロナ禍をきっかけに生活が変わったエピソードがあったように、“当たり前”はとても尊いものなのです。
『銀河の一票』第8話 シシド・カフカ、岩谷健司ほか

『銀河の一票』第8話 シシド・カフカ、岩谷健司ほか

第9話は、「オールド」と呼ばれる価値観や慣習と、それに対する違和感が描かれていました。古さも新しさも、どちらも間違いではありません。ただ、そうした時代を生きてきた人たちの積み重ねやがんばりの中にこそ、人の心を動かす力があることをあらためて感じさせる内容でもありました。
『銀河の一票』第8話 黒木華、野呂佳代

『銀河の一票』第8話 黒木華、野呂佳代

文:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
miyoka
0
銀河の一票
カンテレドーガ
カンテレ笑タイム
ハチエモン
カンテレアナウンサーチャンネル
カンテレドラマニア
ウェルチル
カンテレID