「誰かのために生きる」とは——ドラマ『銀河の一票』最終話で黒木華・野呂佳代らがたどり着いた、“分け合う”という感覚

「誰かのために生きる」とは——ドラマ『銀河の一票』最終話で黒木華・野呂佳代らがたどり着いた、“分け合う”という感覚
ドラマ『銀河の一票』(毎週月曜 午後10:00~/カンテレ・フジテレビ系全国ネット)の最終話が6月29日に放送されました。
このドラマは、与党・民政党幹事長の父・星野鷹臣(坂東彌十郎)の疑惑を調べようとしたことで秘書の仕事も家も失った星野茉莉(黒木華)の支えのもと、政治素人のスナックママ・月岡あかり(野呂佳代)が東京都知事選に立候補する物語。様々な人と対話をしながら、誰一人として孤立させない世界を目指す茉莉やあかりの姿が視聴者の心を揺さぶってきました。そうした選挙戦の物語と並行し、鷹臣と病でこの世を去った母・瑠璃(本上まなみ)が関連していると思われる医大の学部長の転落死の真相も描かれました。
『銀河の一票』最終話 黒木華

『銀河の一票』最終話 黒木華

最終話では、ついに東京都知事選の結果が明らかに。民政党の後押しを受ける最有力候補・日山流星(松下洸平)は選挙戦最終日の演説で、自分の名声を上げた異国での日本人人質事件解決の知られざる裏側を告白。流星は、「自分と鷹臣が人質事件を利用して地位を手に入れた」と話し、波紋を呼びます。
『銀河の一票』最終話 松下洸平

『銀河の一票』最終話 松下洸平

対抗馬のAI企業の社長・風間藍生(梶裕貴)は、演説会の中で来場者から最終学歴が中学卒業であることを指摘され「一般的な経験が欠けている人って、やっぱり人としてなんか欠けているんじゃないですか。務まります?都知事」と疑問を投げかけられます。
『銀河の一票』最終話 梶裕貴

『銀河の一票』最終話 梶裕貴

それぞれが選挙戦で逆風にさらされ、自分のあり方を見つめ直していく中、あかりを支えてきた茉莉も、医大の学部長の転落死の真相をめぐって鷹臣と向き合う決意を固めます。そして、すべてを突き止めるため、あかり陣営からの離脱を決意。茉莉は再び人生に迷い始めますが、そんな彼女に手を差し伸べたのがあかりでした。
『銀河の一票』最終話 黒木華、野呂佳代

『銀河の一票』最終話 黒木華、野呂佳代

私たちは誰のために生きるのか

「自分が生きる理由じゃなくて、誰かに、みんなに生きてもらうために都知事になりたいって思えたよ」。これは終盤、失意に暮れる茉莉のもとに駆(か)けつけたあかりの言葉です。最終話では、私たちはいったい誰のために生きているのかを自分自身に問いかける内容になっていたのではないでしょうか。

誰のために生きるのか――。最優先は自分や近しい“誰か”(人間だけではなくペットでも、モノでもなんでもいいと思います)を大切にすること。その中で少しでも心に余裕があれば、見ず知らずの人に思いを馳(は)せ、そういう人たちに優しさを向けて生きてみること。自分のすべてを捧(ささ)げなくていい。茉莉とあかりがいつもそうしていたように、分け合ってやっていく意識が今の時代は大事なのかもしれません。
『銀河の一票』最終話 野呂佳代

『銀河の一票』最終話 野呂佳代

あかりは、茉莉にこのように言います。「たまにはさ、正しく強くなくてもいいんじゃない?」「ときどき“正しく強く”をお休みできるのはさ、茉莉ちゃんみたいな人がいるからだよね」。誰かのために生きている、そして誰かのおかげで生きることができている。そんな意識と感謝の連なりによって、過ごしやすい世の中ができていくのかもしれません。
『銀河の一票』最終話 野呂佳代、黒木華

『銀河の一票』最終話 野呂佳代、黒木華

最終的に悪役や憎むべき存在を作らなかった

最終話では「誰のために生きるのか」が、様々な立場から描かれていました。茉莉やあかりは、都知事選に勝って一人一人のためにがんばっていこうと、ここまで動き続けてきました。あかりの選挙戦を手伝う町の人々は期間中、そんなあかりのために奮闘します。流星は、少年時代に自分を救ってくれた鷹臣のために、政治家として活動しています。そして終盤、流星は二人だけが知る“暗部”を公表しますが、それもまた鷹臣を救うための行動だったようにも捉えることができます。
『銀河の一票』最終話 松下洸平

『銀河の一票』最終話 松下洸平

かつては心優しかった鷹臣が、なぜ人が変わったように権力に取り憑(つ)かれてしまったのかも明らかにされます。それもまた、「正しいことをするためにはあえて過ちを犯さなくてはならない場面もある」という風な、鷹臣が背負う悲しみが感じられました。「世界全体の幸福のために、個人の幸福は捨てるよ」という鷹臣の思いに、胸が熱くなった視聴者も多かったのではないでしょうか。
『銀河の一票』最終話 坂東彌十郎

『銀河の一票』最終話 坂東彌十郎

筆者が感動を覚えたのが、鷹臣の政策秘書・雫石誠(山口馬木也)の存在です。彼はこのドラマの登場人物の中でもっともつかみどころがないキャラクターでした。同僚に対しても非情な面をうかがわせ、鷹臣との関連が疑われた医大の学部長の転落死の謎についても、鍵を握っているようでした。そんな雫石の根底にあったのが、鷹臣のために生きること。彼もまた「誰かのため」に生きた一人だったのです。
『銀河の一票』最終話 山口馬木也

『銀河の一票』最終話 山口馬木也

それぞれの登場人物がやったこと、やってきたことが正しいものだったか。それとも間違っていたのか。それは判断が分かれます。ただ、『銀河の一票』がとても素敵だったところは、最終的に悪役や憎むべき存在を作らなかった点です。
『銀河の一票』最終話 野呂佳代、黒木華、松下洸平、シシド・カフカ、岩谷健司

『銀河の一票』最終話 野呂佳代、黒木華、松下洸平、シシド・カフカ、岩谷健司

エンディングでは、茉莉、あかりはもちろんのこと、流星、鷹臣たちのことも受け入れることができるように構成されていました。「誰かのために生きる」とはどういうことなのか。『銀河の一票』は最後までその問いを投げかけ続けた作品だったように思います。
文:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
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