ドラマ『夫に間違いありません』のモチーフ「水」の演出が意味するもの

ドラマ『夫に間違いありません』のモチーフ「水」の演出が意味するもの

松下奈緒主演『夫に間違いありません』第11話レビュー

最終話が目前に迫りながら結末がまったく読めないドラマ『夫に間違いありません』(毎週月曜よる10時~放送/カンテレ・フジテレビ系全国ネット)。その第11話が3月16日に放送されました。
葛原紗春(桜井ユキ)の夫と見られる遺体を行方不明の夫・一樹(安田顕)と誤認してしまい、生命保険金を受け取ってしまった妻・朝比聖子(松下奈緒)。
第10話では、聖子以外には生きていると気づかれないように生活していた一樹と、息子の栄大(山﨑真斗)がついに再会。ただ、栄大の後をつけていた紗春が物陰からその模様を観察していました。一方、一樹の生存をめぐって崖っぷちに追い詰められている聖子は医師から妊娠3ヶ月を告げられます。思い当たるのは、一樹が帰ってきたとき…。
『夫に間違いありません』第11話 山﨑真斗、安田 顕

『夫に間違いありません』第11話 山﨑真斗、安田 顕

『夫に間違いありません』第11話 桜井ユキ

『夫に間違いありません』第11話 桜井ユキ

第11話では、一樹が生きているという証拠を押さえた紗春が、聖子に揺さぶりをかけます。紗春は、夫・幸雄(今里真)を殺害して手に入れるはずだったのに、誤認により聖子が受け取った保険金5千万円を渡すよう聖子に要求します。そんな聖子は、一樹の生存を黙っていたことで栄大からの信用を失い、さらに紗春からかけられるプレッシャー、そして妊娠という事実もあって混乱。そこであることを思いつきます。それは、一樹に紗春を殺してもらうことでした。
『夫に間違いありません』第11話 松下奈緒、桜井ユキ

『夫に間違いありません』第11話 松下奈緒、桜井ユキ

ポットのお湯がぶくぶくと沸く音は何を表す?

今回、最初に気になったところが序盤、聖子と栄大、娘の亜季(吉本実由)の朝食の場面です。ここで、食卓の上にあるポットのお湯がぶくぶくと沸く音が聞こえます。

ポットといえば第1話でも印象的な形で登場していましたよね。聖子がいつものように営む飲食店の昼の営業を終え、一息つきながらお茶漬けを食べようとしていたところ、死んだはずの一樹が突然、帰ってきたところです。驚く聖子と「ただいま」と小さく声をかける一樹の姿に、ポットのぶくぶくと沸く音が重なります。

思い返せば第1話でのポットの音は、“ただ事ではない出来事が起きる前触れ”になっていました。何気ない日常が崩れる予兆となり、また穏やかな朝の空気の中で、静かに膨れ上がる不穏さを象徴するモチーフでもありました。

ちなみにタイトルロールでは水中で呼吸をしたときに噴き上がるぶくぶくという音と映像が使われ、また一樹と思われる遺体が浮かんだ現場、紗春が幸雄を突き落としたところ、一樹がキャバクラ嬢・藤谷瑠美子(白宮みずほ)を河川敷で殺した「久留川美人キャバ嬢殺害事件」など、川が重要な場所になっていることから、水を沸騰させて湯を作るポットというアイテムは、物語に流れる水のモチーフと重なり合い、どこか不吉な気配を漂わせる存在のようにも思えます。

第11話での朝食シーンも、栄大が一樹と再会を果たしてしまったことと、それによってもたらされるさらなる悲劇を示唆していました。そして、最初の悲劇はそのすぐ後に訪れます。それが、先ほど触れた紗春による聖子への5千万円のゆすりです。もちろんそれだけにとどまらず、週刊誌記者・天童(宮沢氷魚)による一樹に対する追及、聖子と栄大の親子関係における不協和音など問題が次々と浮き彫りになっていきます。
『夫に間違いありません』第11話 山﨑真斗、松下奈緒

『夫に間違いありません』第11話 山﨑真斗、松下奈緒

つまりポットが沸く音は、トラブルを引き寄せる“装置”と言っても良いでしょう。

水の特徴は「沈めても、いつか浮かび上がるところ」

それにしてもなぜ、同作は水(川)が重要なのでしょうか。

あくまで筆者の推察なのですが、水の特徴は「沈めても、いつか浮かび上がるところ」ですよね。つまり、隠したはずの事実がやがて表に出てくるということではないでしょうか。

一樹が突然失踪した理由と瑠美子と親密な関係性だったこと。聖子の遺体誤認。素性を隠して生きることを選択した一樹と聖子の秘密。紗春が犯した罪と、娘への虐待疑惑。いずれも、重しを付けて川底へ沈めても水面に浮かび上がってきてしまいます。タイトルロールのぶくぶくという音やポットが沸騰する様子も、何かが下から上へ浮かび上がってくることを表しているのかもしれません。そして、その何かとはつまり“真実”です。

あるいは、人間が秘めている感情が内側から湧き上がってきていることをイメージしているとも捉えられます。どんな人でも、なんらかの不満や不安を抱えて生きているもの。ただ私たちはそれをなんとなく隠したり、抑えたりして日常を送るものです。同作においては、「優等生」と言われる栄大の姿が象徴的かもしれません。勉強ができて、考え方もきっちりとしています。でも、実は父親である一樹に対して不信感も持っていました。そして第11話では、怒り、悲しみなどいろんな感情に襲われ、言葉にならない叫びをあげます。まさに気持ちが内側から外側に出ていました。
『夫に間違いありません』第11話 山﨑真斗

『夫に間違いありません』第11話 山﨑真斗

こうして見ていくと、水というモチーフは、この物語に潜む「隠された真実」や「抑え込まれてきた感情」がやがて浮かび上がることを象徴しているようにも思えます。最終話を前に、それぞれが沈めてきたものがついに水面へと姿を現すのかもしれません。
『夫に間違いありません』第11話 松下奈緒

『夫に間違いありません』第11話 松下奈緒

『夫に間違いありません』第11話 安田 顕

『夫に間違いありません』第11話 安田 顕

文:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
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