「人生」をかけた聖子(松下奈緒)の決断、紗春(桜井ユキ)が本当に「守りたかったもの」とは
松下奈緒主演『夫に間違いありません』第12話レビュー
行方不明中の夫の遺体を誤認したことから、運命の歯車が狂っていく主人公らの姿を描いたドラマ『夫に間違いありません』(毎週月曜よる10時~放送/カンテレ・フジテレビ系全国ネット)。その最終話が3月23日に放送されました。
夫の生命保険金を誤って受け取り、家族や生活を守るためについた一つの嘘(うそ)が周りを巻き込み、後戻りができなくなった女性・朝比聖子(松下奈緒)――。1月5日から放送が始まりましたが、聖子の心が休まる瞬間はひとときもなかったように思います。聖子だけではなく、夫の一樹(安田顕)、聖子の天敵・葛原紗春(桜井ユキ)らも常に何かにおびえ、追われる状況にありました。登場人物に安らぎをまったく与えずに進行していくテレビドラマは、最近では珍しいのではないでしょうか。
それだけ残酷な物語であっても、ドラマ視聴者はどこかでハッピーエンドを期待するもの。そのような救いは“夫間違い”にも用意されているのか。緊張感を持って最終話を見ました。
……驚きました。最後まで世界観を徹底し、着地した印象でした。聖子にとって、一樹の遺体を見間違えたことは不慮の誤りでした。もちろんそれ以降、嘘に嘘を重ねてしまったことは許されるべきではありません。それでも、どこかに同情できる部分がありました。しかし、現実はそれを許しません。ストーリー自体はフィクションですが、最終話で突きつけたメッセージはいずれも冷静かつリアルなものでした。
夫の生命保険金を誤って受け取り、家族や生活を守るためについた一つの嘘(うそ)が周りを巻き込み、後戻りができなくなった女性・朝比聖子(松下奈緒)――。1月5日から放送が始まりましたが、聖子の心が休まる瞬間はひとときもなかったように思います。聖子だけではなく、夫の一樹(安田顕)、聖子の天敵・葛原紗春(桜井ユキ)らも常に何かにおびえ、追われる状況にありました。登場人物に安らぎをまったく与えずに進行していくテレビドラマは、最近では珍しいのではないでしょうか。
それだけ残酷な物語であっても、ドラマ視聴者はどこかでハッピーエンドを期待するもの。そのような救いは“夫間違い”にも用意されているのか。緊張感を持って最終話を見ました。
……驚きました。最後まで世界観を徹底し、着地した印象でした。聖子にとって、一樹の遺体を見間違えたことは不慮の誤りでした。もちろんそれ以降、嘘に嘘を重ねてしまったことは許されるべきではありません。それでも、どこかに同情できる部分がありました。しかし、現実はそれを許しません。ストーリー自体はフィクションですが、最終話で突きつけたメッセージはいずれも冷静かつリアルなものでした。
※以下はネタバレに触れているので、未視聴の方はお気をつけください。
真実と誤解の境目の見極めの難しさ
『夫に間違いありません』第12話 桜井ユキ
まず、筆者の心が揺らいだのが紗春の行動でした。第11話までは、娘の希美(磯村アメリ)への虐待が疑われるように描かれていました。しかし、最終話ではそれが誤解であることや、殺害した夫・幸雄(今里真)の素性が暴かれました。本音をいうと、筆者もずっと紗春を疑っていました。ですので、彼女がどれだけ希美のことを想っていたのかを知って、「本当にごめんなさい」と平謝りしたい気持ちがありました。
『夫に間違いありません』第12話 磯村アメリ、桜井ユキ
同時に、生活が苦しい上に希美とは血がつながらない母と娘という関係性から、世間は彼女らに対し誤解という名の偏見を向け、それが疑いへと変わっていきました。もちろん、疑いの目を向けなければ見えない真実もあり、悲劇を未然に防げる可能性もあります。ただ、真実と誤解の境目の見極めがいかに難しいか、紗春と希美を通して再認識させられました。
誤解という点では、一連の事件を追っていた週刊誌記者・天童弥生(宮沢氷魚)のキャラクター像にも当てはまるかもしれません。
誤解という点では、一連の事件を追っていた週刊誌記者・天童弥生(宮沢氷魚)のキャラクター像にも当てはまるかもしれません。
『夫に間違いありません』第12話 宮沢氷魚
聖子、一樹、紗春を厳しく追及する“ヒール(悪役)”だと思われていましたが、回を重ねるごとに人間的な部分が見えてきました。どんなことをしてでもスクープを出すという非情さがありながら、聖子らの件に関しては、わざと粘って記事を出さないようにしていたようにも映りました。もちろんその背景には、聖子の子どもの栄大(山﨑真斗)や亜季(吉本実由)、そして希美への意識が強くあったと思われます。
最終話のエンディングでは、そんな天童の後ろ姿が映ります。さまざまな解釈ができますが、長年、最後のピースをあえてはめないようにし、聖子らに委ねていたのだと筆者は捉えています。
最終話のエンディングでは、そんな天童の後ろ姿が映ります。さまざまな解釈ができますが、長年、最後のピースをあえてはめないようにし、聖子らに委ねていたのだと筆者は捉えています。
人生をかけて子どもたちと向き合った聖子
『夫に間違いありません』第12話 宮沢氷魚、松下奈緒
最終話で聖子が下した様々な決断も、考えさせられるものがありました。
紗春は自分が犯した罪を告白し、逮捕されます。そして希美と離れてしまいます。ただ、事情をすべて知った聖子は、紗春が帰ってくるまで希美を預かることを決めます。希美にとっては、その状況が幸せとは言えません。しかし、聖子の決断は“夫間違い”の中で唯一の救いだと思えました。
また、一樹との間にできた子どもについても、迷いと葛藤の中、産んで育てる決心をします。そして、すべての子どもたちが成人したことを見届けてから、“最後”の決断をします。
「あのとき、一樹の遺体を間違えなければ」。聖子はずっとその後悔を抱えて生きていたはず。人間としては道を誤ってしまいましたが、最後に母親としてはその誤りを正そうとしたように捉えられます。
人生をかけて子どもたちと向き合ったことがラストで見られ、それもまた安らぎがほとんどなかった“夫間違い”の中でも数少ない、そしてもっとも大きな救いになったのではないでしょうか。
紗春は自分が犯した罪を告白し、逮捕されます。そして希美と離れてしまいます。ただ、事情をすべて知った聖子は、紗春が帰ってくるまで希美を預かることを決めます。希美にとっては、その状況が幸せとは言えません。しかし、聖子の決断は“夫間違い”の中で唯一の救いだと思えました。
また、一樹との間にできた子どもについても、迷いと葛藤の中、産んで育てる決心をします。そして、すべての子どもたちが成人したことを見届けてから、“最後”の決断をします。
「あのとき、一樹の遺体を間違えなければ」。聖子はずっとその後悔を抱えて生きていたはず。人間としては道を誤ってしまいましたが、最後に母親としてはその誤りを正そうとしたように捉えられます。
人生をかけて子どもたちと向き合ったことがラストで見られ、それもまた安らぎがほとんどなかった“夫間違い”の中でも数少ない、そしてもっとも大きな救いになったのではないでしょうか。
『夫に間違いありません』第12話 朝加真由美、山﨑真斗、磯村アメリ、吉本実由
文:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
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