ケンティーの眉の演技に感動!『リビングの松永さん』原作者・岩下慶子さんに聞く、JKとオトナ男子のラブストーリーの作り方
2024.01.19
作品の企画の段階で「次は大人の男性が描きたい」と思っていました。ただ主人公が女子高生となると、相手は先生や兄の友人など設定が限られてきてあんまり新鮮味がないなぁ、と。悩んでいたところ、担当編集さんが「シェアハウスを舞台にしたらどう?」と提案してくれました。それで、親族が運営しているシェアハウスに美己が住む、という設定に。
シェアハウスというと、当時人気だった恋愛リアリティショーのテレビ番組のイメージが強く、キラキラした人たちの恋の駆け引きが繰り広げられる場所、みたいな先入観がありました(笑)。でも実際に新宿にあるシェアハウスを見学させてもらったら、すごくアットホームで、みなさん家族みたいに仲よしだったんです。シェアハウスに対する考え方が変わり、こんな場所を舞台にしたら描けるかも……とイメージがどんどんふくらみました。
実は松永さんは当初、名前も違って、長めのヘアスタイルで、ちょっと怪しげな映像作家の設定だったんです。でもその人だと、シェアハウスのメンバーとの関係性を考えたときに、あんまり物語が進まなくて……第1話は1年くらいかけて何回も考え直しました。
そんな中で、これまで私が漫画でほとんど表現したことがない、ツーブロックに眼鏡という男らしいキャラクターを提案してみたら、「いいね!」と。さらに、おせっかいで、お母さんみたいに世話を焼いてくれる男の人だったら最高だな、という自分の理想を詰め込んだのが松永さんです(笑)。
松永さんって、少女漫画の方程式に当てはまる人じゃないから、壁ドンとかあごクイとか、そういう見せ場的なシーンが出てこない人なんです。そこで、なんとか毎回サービスショットを作れないかと、2話目で脱がせてみたらすごい反響があって。「松永さん脱いだ!」みたいな(笑)。実は雑誌に掲載した1話目の松永さんは、美己を「行ってらっしゃい」と見送るシーンでTシャツを着ているんですけど、単行本化するときに上裸に描き直しました(笑)。
連載の企画が通ったとき、担当編集さんから「この漫画はドラマです。ドラマを作るような気持ちで制作してください」と言われました。自分でもドラマを見るような感覚を意識しながら「いつか動く松永さんがいつか見られたらいいな」と淡い期待を持っていました。だからドラマ化が決まって本当に感動したし、動く松永さんやミーコが見られてとってもうれしいです。
本当にびっくりです。とくに眉毛の動きがすごいです。松永さんって、眉毛の動きに感情が出やすいんですが、中島さんはその眉毛を見事に再現されていました。くしゃっと笑って下がり眉になるところとか、すんとしてる眉毛とか、そういう細かい部分までくみ取ってくれている中島さんの演技力に感動しました。
現場は和気あいあいとしていて、チームワークもよく楽しい雰囲気で、ずっと見学していたいくらいです。セットは、原作の配置とまったく一緒ではないんですが、所々に原作の雰囲気が感じられて、細部にまでスタッフさんの愛を感じます。とくにホワイトボードは、原作の連載中からけっこう思い入れのあるアイテムだったので、ドラマでもシェアハウスのみんなのメッセージまで再現してくれてうれしいです。
あのキャラクターたちに再会できるということと、原作とはまた違う松永さんの世界観を楽しんでもらえると思います。私は漫画の実写化作品は原作とまったく一緒じゃない方が面白いと思っています。原作とちょっと違うところを探す楽しみもありますよね。見てくださる方たちに、「実写のほうが好き」とか「ここはコミックのほうがいいな」とか、両方のよさを話し合ったりしながら楽しんでほしいと思っています。
自画像(作:岩下慶子)
岩下さんのお話から、漫画家さんと編集者さんが二人三脚で作品を作る様子が目に浮かぶようでした。ちなみに『リビングの松永さん』のタイトルは、担当編集さんと一緒にディズニーシーでアトラクションに並んでいるときに決まったのだとか。作品やキャラクターたちへの愛がたっぷりつまった物語が、現在放映中のドラマは次回第3話を迎えます。中島健人さんの眉の動きなどの表情にもぜひ注目して見たいですね!
見逃し配信はこちら(TVer)
『リビングの松永さん』公式HP
文:早川奈緒子
川崎市在住のフリーランスライター。10代の子ども3人の母。「たまひよ」など主に子育て系メディアで取材・ライティングを行う。
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