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美海(一色香澄)の正体バレて、紘海(北川景子)と涙の別れ【あなたを奪ったその日から】

2025.06.23

美海(一色香澄)の正体バレて、紘海(北川景子)と涙の別れ【あなたを奪ったその日から】

『あなたを奪ったその日から』第10話 レビュー

ついに紘海(北川景子)の罪と美海(一色香澄)の正体が、結城(大森南朋)に知られてしまった『あなたを奪ったその日から』第9話。第10話では、紘海と美海の生活の終わりが描かれました。

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望月(筒井道隆)の一言で、紘海が美海を奪った犯人だと知ってしまった結城。居ても立ってもいられず、結城は紘海の自宅へ向かいます。望月からの電話で、結城が秘密を知ってしまったこと、自宅に向かっていることを知った紘海は、美海との生活の終わりを自覚し、絶望から座り込んでしまいます。そんな紘海を説得したのは、美海でした。美海は、自身は結城萌子で、紘海に誘拐されたことを知り、はじめは戸惑いから紘海に怒りをぶつけていました。しかし、その事実があったとしても、美海にとって紘海から受け取った愛情は本物だったのでしょう。動けなくなってしまった紘海を立ち上がらせ、一緒に逃げようと声をかける美海の姿からは、紘海への親愛とお母さんを失いたくないという思いが感じられました。
『あなたを奪ったその日から』第10話 望月耕輔(筒井道隆)

『あなたを奪ったその日から』第10話
望月耕輔(筒井道隆)

荷造りをして家を出る紘海と美海。現実逃避をするように美海の行きたがっていた姨捨(おばすて)に向かう計画を立てますが、ふたりの前に結城が。紘海は結城に美海との最後の時間として1時間の猶予をもらうことに。結城からの条件は、美海が紘海へ一片の未練も残さないようにということでした。そんな会話をしている結城と紘海の前に、美海が現れます。結城にとって10年近くぶりの萌子との再会。万感の思いで萌子を見つめる結城を見た紘海の表情には、美海との別れを覚悟したような感情が感じられました。第9話で結城から食品事故について心からの謝罪を受けていたからこそ決心がついたのでしょう。

紘海と美海の最後の時間。紘海の声色からは美海を誘拐した当時の冷たさが漂っていました。母親としてではなく、誘拐犯として声をかけなければ別れられないという思いがあったのかもしれません。「お母さんね」と言いかけ、「私ね」と言い換える部分もすごく切なかったです。淡々と誘拐までの経緯を説明する紘海。「母親としての愛情はあったのか」という美海からの涙ながらの問いを受けて、紘海の頭には幼少期の美海との思い出がよみがえります。一緒にご飯を食べ、街を歩き、寂しがる美海を抱きしめたこと。早い段階で結城への仕返しのためではなく、美海のために行動していたことを美海自身も自覚していることでしょう。美海との思い出に涙がにじむ紘海に追い討ちをかけるように、美海が「ずっとお母さんの子がいい、一緒に逃げよう」と声をかけます。紘海は大きく葛藤しながらも、しっかりと美海を見つめ、渾身(こんしん)の嘘を繰り返します。ポロポロと涙をこぼしながら、自分に言い聞かせるように、無理やり美海を拒否しようとする紘海の姿に涙が誘われました……。未練を残さないためとはいえ、信じていた紘海からの拒否に傷つく美海の姿も辛いです。
『あなたを奪ったその日から』第10話 中越紘海(北川景子)、中越美海(一色香澄)

『あなたを奪ったその日から』第10話
中越紘海(北川景子)、中越美海(一色香澄)

迎えにきた結城に美海が問うたのは、紘海のことを通報するのかでした。子どもとして拒否されたとしても、紘海には幸せでいてほしいという気持ちがあったのかもしれません。走り去るタクシーの中の美海とタクシーを追いかける紘海の手の中には、お揃いの電車のキーホルダーが握りしめられていました。ふたりが言葉にできなかった親子の絆が強く感じられる場面でした。顔を歪めうずくまって美海との別れを惜しむ紘海の後ろ姿には、実子の灯を失った時と同じような絶望に覆われているように見えました……。

時は流れて1ヶ月後。結城は萌子との生活を取り戻すために必死でした。萌子は新しい中学に通い始めたようですが、結城と梨々子(平祐奈)との生活にまだなじめていない様子です。結城の口から出たママという言葉に紘海の存在を期待してしまっているほど、紘海のことを忘れられていないようです。そんな萌子の様子に、結城は紘海を告訴できないままでした。告訴したいという一方で、いまだ戸惑いの中にいる萌子を刺激できないという葛藤が結城の中にあるのでしょう。
『あなたを奪ったその日から』第10話  中越美海(一色香澄)

『あなたを奪ったその日から』第10話
中越美海(一色香澄)

清掃の仕事を始めた紘海でしたが、美海を失い、抜け殻のように生きていました。紘海の中には美海に最後にかけた言葉が、美海の存在を拒否し、10年の歳月を否定するものだったことへの激しい後悔が渦巻いていました。紘海は、雪子(原日出子)との会話をきっかけに思わず結城家へ向かってしまいます。

その頃、結城家では家族4人でのディナーを計画している最中でした。浮かない顔の萌子に梨々子が告げたのは、結城は嘘をつく人ではないということ。萌子が結城と約束した紘海のことを警察に通報しないという約束が守られるという安心感から、萌子は笑顔を浮かべるようになったのでしょう。
『あなたを奪ったその日から』第10話 中越紘海(北川景子)

『あなたを奪ったその日から』第10話
中越紘海(北川景子)

結城家に向かった紘海は、元来の明るさを取り戻して結城と並んで歩く萌子を目撃してしまいます。そのときの萌子の笑顔は、結城家での生活に萌子がなじみ、幸せなのだと実感するのに、十分なものでした。萌子の幸せを喜ぶかのように口角をあげながらも、瞳は沈み、静かに涙を流す紘海の自嘲するような表情には胸が締め付けられました。
『あなたを奪ったその日から』第『あなたを奪ったその日から』第10話 中越紘海(北川景子)9話 中越紘海(北川景子)

『あなたを奪ったその日から』第10話
中越紘海(北川景子)

紘海と美海が互いを思い合う気持ち、萌子を思うからこそ告訴できない結城の様子からは、親子の絆が強く感じられました。紘海の犯した罪は許されるものではありません。一方で、紘海と美海の間にあった親子関係は間違いなく本物です。ふたりが共に過ごしてきた愛情深い10年間が、少しでも報われる最終回を願いたいところです……。
取材・文:古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。
miyoka
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