「自分らしく生きる」とは?こはる(風吹ジュン)と利人(要潤)の生き方、どちらが幸せか草彅剛主演ドラマ【終幕のロンド】

2025.11.03

「自分らしく生きる」とは?こはる(風吹ジュン)と利人(要潤)の生き方、どちらが幸せか草彅剛主演ドラマ【終幕のロンド】

『終幕のロンド』第4話(11月3日放送)レビュー

遺品整理を題材にしたドラマ『終幕のロンド―もう二度と、会えないあなたに―』(カンテレ・フジテレビ系/毎週月曜よる10時〜)の第4話が11月3日に放送されました。
遺族の依頼を受けて故人の遺品整理を担当している会社「heaven’s messenger」の社員たち。
『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』第4話 草薙剛

『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』第4話 草薙剛

同社に勤める樹(草彅剛)もこれまで、いろいろな事情を抱えた故人の遺品を整理してきました。
第4話では「heaven’s messenger」が、お笑い芸人を目指しながら夢半ばでこの世を去った若者・稲葉大輔(川合諒)の遺品整理を任されます。

しかし故人の父・博貴(六平直政)は、社員たちにカスハラ(カスタマーハラスメント)のような暴言を吐き続けます。それでも樹は、博貴の気持ちに寄り添い、その言葉に耳を傾けます。そうすると、彼の心も少しずつ変化が…。

知らず知らずのうちに人になにかを押し付けていないか?

『終幕のロンド』は、私たちにちょっとした気づきを与えてくれるドラマだと思います。たとえば第3話では、良くないことをしたらちゃんと謝ることの大切さを再認識させてくれました。

ちゃんと謝らない人たちが多くなった気がする昨今。「ごめんなさい」の一言を口にしたり、頭を下げたりするだけで、人はちゃんと前に進むことができるのです。第3話ではその重要性が届けられました。
そして第4話は、「自分は知らず知らずのうちに人になにかを押し付けていないか?」を考える機会が得られました。

息子・大輔を亡くした博貴は、やりきれない思いの数々を「heaven’s messenger」の社員たちに爆発させ、当たり散らします。

博貴は新潟県で学校の校長先生をやっていたこともあり、大輔を教師にしたかったようです。そして大輔には小さいときから、宮沢賢治の詩「雨ニモマケズ 風ニモマケズ」を聞かせていたと言います。
『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』第4話 六平直政

『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』第4話 六平直政

しかし大輔は、親の反対を押し切ってお笑い芸人の道を目指します。

博貴はその事実だけでも複雑に思っていましたが、さらに親より先に逝ってしまったことで感情がぐちゃぐちゃに。

加えて、遺品の中にあった博貴から大輔に贈った書籍が「買取不可」であることが逆鱗(げきりん)に触れ、実家から送った仕送りの野菜を大輔がダメにしてしまっていたことが追い打ちをかけ、博貴は手がつけられないくらいヒートアップします。
博貴の悲しみは十分に伝わってきます。しかし、「heaven’s messenger」の社員たちに当たるのは、やはり違いますよね。視聴者のみなさんは、博貴の振る舞いに不快感を抱いたはずです。

「自分らしく生きること」の大切さと難しさ

ただ、そんな博貴の姿こそが「人に押し付けていないか?」というテーマになっています。
博貴と大輔のエピソードはすべて「押し付け」で構成されています。

自分が教師だったこともあり、子どもにも立派な先生になってもらいたいという気持ち。価値があるものだと思ってプレゼントした書籍の存在。

反対を押し切ってお笑い芸人を目指す子どもを支えるため、良かれと思って野菜を送っていたこと。どれも、親として温かい気持ちが伝わってくるものばかり。しかし、親から子への一方的な願望の押し付けと捉えることもできます。
みなさんも状況は違えど、似たような経験をしたことがあるはずです。

自分が子どものときは、親からの理想の押し付けを「鬱陶しい」と感じたこと。そしていざ親になったときは、ついつい自分ができなかったことを子に託したくなること。

これは親子関係に限らず、職場、学校での教える立場、教えられる立場にも置き換えることができます。
大切なのは「自分らしく生きること」です。誰かに強要せず、また誰にも強要されることなく生きていくこと。
それが「自分らしさ」を育むことに結び付きます。

もちろん、親の想いを子に押し付けることで道がひらける場合もあります。それでも博貴の話を聞いていると、親と子はどうしても愛情の深さゆえ、その境界線を見失ってしまいがちであることが分かります。
『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』第4話 要潤

『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』第4話 要潤

難しいのは、親の理想を宿命的に背負っているパターン。樹に生前整理を頼んでいる余命3ヶ月の鮎川こはる(風吹ジュン)の娘・真琴(中村ゆり)の夫である御厨利人(要潤)は、大企業の御曹司という立場から親の意思を継ぐことを生まれながらにして義務付けられています。

誰もが羨む裕福な生活を送っていますが、果たしてそれが本当に個人としての幸せに繋(つな)がっているのかどうかは、利人本人にしか分からないことです。
『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』第4話 中村ゆり、草薙剛

『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』第4話 中村ゆり、草薙剛

体調を崩したこはるは、そんな御厨家から豪華な病室を用意されます。そして残りの時間をそこで暮らすように指示されます。

人によっては「不自由のない最期を迎えることができる」と思うでしょう。しかし自分らしい暮らしを好むこはるは、そこで生活することを拒否します。

つまりこのエピソードもまた、御厨家からのこはるに対しての「押し付け」として描かれているのです。
前述したように、最も尊重するべきは「個人の考え」だと思います。この第4話では、その大切さと難しさの両方が感じられました。
『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』第4話 風吹ジュン、草薙剛

『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』第4話 風吹ジュン、草薙剛

文:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
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