草彅剛さんが遺品整理人を演じるドラマ 『
終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』(カンテレ・フジテレビ系/毎週月曜よる10時〜)の第3話が10月27日に放送されました。
第2話では、樹(草彅剛)が勤める「Heaven’s messenger」の社員たちが、高級マンションに暮らしていた故人・木村浩(岩田知幸)の遺品整理を担当。遺品の中に自分の留学費用があると言って譲らない娘・里菜(山下愛織)に社員たちが翻弄されます。
結局、留学費用は見つかりませんでしたが、事業がうまくいかず苦境に陥っていた浩が、夜勤でなんとか留学費用を工面しようとしていたことが分かります。里菜はあらためて、浩がどれだけ自分のことを愛してくれていたのかに気づきます。
そして第3話では、樹の息子・陸(永瀬矢紘)が小学校でいじめを受けていることが判明。陸が無抵抗でいじめを我慢している理由は、樹の「自分がされて嫌なことは人にしないよ」という言葉を守ってのこと。しかし陸は、なぜ自分だけが嫌なことをされるのか分からないと涙を見せます。やがて陸は、学内である問題を起こすことに。
▶︎「ちゃんと謝ること」ができる人が少なくなった
筆者にとって第1話、第2話は膝を打つような内容でした。「孤独死」と呼ばれますが、その死は決して私たちの日常と遠く離れた出来事ではないこと。何なにかをきっかけに世の中の見え方がガラッと変わること。立場や状況は違いますが、いずれも筆者自身が経験したり、考えを巡らせたりしていたことが表現されていたからです。
第3話は、その共感がより深まる内容でした。どういうところが心に響いたのかというと、「良くないことをしたらちゃんと謝る」という部分です。
今って、「ちゃんと謝れる人」が少なくなったと思いませんか?
例えば歩道で信号待ちをしていたら、前からやって来て信号無視をする自転車にぶつかりそうになったり、横断歩道を渡っていたら曲がってくる車に当たられそうになったり。こちらにはなんの非もなく、明らかに相手側が悪いときは誰だって「ムッ」となりますよね。
でもそういう不快な気持ちも、相手が軽く頭を下げてくれるだけで解消されるもの。ほんのちょっとしたことで、人の気持ちは軽くなるんです。だけど、多くの人はそれができない。なかには、逆に睨(にら)んできたり、何も言わずに立ち去ったりする人もいます。
どうして、「ごめんなさい」というたった一言が口にできないのか。
ちょっとだけ頭を下げることができないのか。人に頭を下げること自体を屈辱に思うのでしょうし、プライドが邪魔をするのかもしれません。謝ることが「格好悪い」と感じているのかもしれません。いずれも当てはまる気がします。
でも、ちゃんと謝れないことこそが、本当の“格好悪さ”ではないでしょうか。
筆者は、「ごめんなさい」と頭を下げられる人こそ「強い」と思っています。(もちろん単に「ごめんなさい」で済まないこともありますが)。謝ることって勇気が必要ですし、また素直に「ごめんなさい」を言うことで、一歩前へ踏み出せると考えています。
▶︎「ごめんなさい」は新しい関係性を生む
第3話は、「ごめんなさい」をちゃんと言うことの大切さが描かれていました。
陸は、自分をいじめる同級生に反撃します。そしてケガをさせてしまいます。一部始終を知る絵本作家・御厨真琴(中村ゆり)は陸をフォローしますが、樹はそれでも、ケガをさせたことに関してはちゃんと謝るように促します。
そして陸は、同級生に「ごめんなさい」と頭を下げます。その謝罪を受けて、同級生も「ごめんなさい」と口にします。謝罪し合ったことで、二人には新しい関係性が生まれました。
この展開はやや理想論的ではあるのですが、謝ることができなくなったこの世界において、「あるべき姿」として大切な描写になっていました。
また注視すべきは、樹と同級生の親が、お互いにちゃんと謝っていたところ。大人がどんな行動を示すのか、子どもたちはちゃんと見ています。大人はどんなときも、子どもの良き手本であるべき。樹と同級生の親の真摯な姿勢があったからこそ、子どもたちもちゃんと頭を下げることができたのではないでしょうか。
事の原因は同級生が陸をいじめたことにありますし、ドラマを見る者としては陸に肩入れしたくなります。
ですから、陸が謝るのは「理不尽ではないか」と感じるはず。このあたりは見る方によって受け止め方が異なるでしょう。
しかし樹は「矛盾や理不尽に流されない力は、それと向き合うことでしか身につきませんから」と語ったうえで、陸に対して「悪いことをしたという理由で、人から痛いことされてもいいの?」と諭します。
第3話は、非を認めるべき部分を認めて謝る勇気について描かれていました。それは今、世の中にもっとも必要なことです。繰り返しますが、どんなことでも「ごめんなさい」で済むわけではありません。
しかし日常の多くの場面では、ちゃんと謝ることこそ人間の本当の強さであると筆者は考えます。
文:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
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