「自分は果たして“国民”なのか」——誰かのために頑張っても報われにくい社会を見つめ、幸福に暮らせる世界を願うドラマ『銀河の一票』第4話

「自分は果たして“国民”なのか」——誰かのために頑張っても報われにくい社会を見つめ、幸福に暮らせる世界を願うドラマ『銀河の一票』第4話
SNSを中心に反響を集めている “選挙エンターテインメント”ドラマ『銀河の一票』(毎週月曜 午後10:00~/カンテレ・フジテレビ系全国ネット)。その第4話が5月11日に放送されました。
大物政治家の父(坂東彌十郎)の不正を疑ったことで秘書の仕事も家も失った星野茉莉(黒木華)が、出会ったスナックママの月岡あかり(野呂佳代)に都知事選への出馬を打診するところから始まったこのドラマ。

第3話では、あかりが経営しているスナックの先代ママ・鴨井とし子(木野花)の本当の気持ちが明らかになります。かつてとし子は、気落ちする出来事がたくさん重なったことから自分で命を絶とうとしていました。ところがそんなとき、同じように屋上から飛び降りようとしていたあかりを見つけ、救ったのです。

そうした事情を知らなかったあかりはその後、認知症で介護施設に入ったとし子の「帰る場所」を守ろうと厳しい資金繰りの中、店を経営していました。一方でとし子は、恩返しの気持ちを強く出すあかりに「いつでも辞めていいよ」と言い出せないまま、ここまで来てしまいました。そのことを知ったあかりは、茉莉に「私に生きる意味をください」と、人生の新たなスタートを切るために都知事選出馬を決意します。
『銀河の一票』第4話 黒木華、野呂佳代

『銀河の一票』第4話 黒木華、野呂佳代

第4話では、知名度ゼロで政治素人の新人であるあかりを勝たせるため、茉莉は秘策を思いつきます。それは、「10 1000(テン・サウザンド/トーセン<当選>)」の異名を持つ選挙の天才・五十嵐隼人(岩谷健司)を陣営に引き入れること。携わった選挙では常に好結果を残す五十嵐は、茉莉の父親で与党・民政党幹事長の星野鷹臣(坂東彌十郎)のもとで仕事をしていましたが、政界から追いやられた過去を持ちます。現在は生活困窮者をサポートする“よろず困りごと相談所”をやっていました。そんな五十嵐は、茉莉の協力依頼を拒否しますが…
『銀河の一票』第4話 岩谷健司

『銀河の一票』第4話 岩谷健司

「地獄」を変える――茉莉の決意

今回は「地獄」という物騒な言葉が何度か飛び出しました。まず、都知事選出馬を望まれる民政党員・日山流星(松下洸平)です。彼は町田市選出の国会議員としての勤めを果たしたいと言い、都知事選出馬を固辞。しかし周囲の説得を受け、「幹事長である鷹臣の望みであれば国会議員を辞職する」と答えます。そして「(幹事長の)お心のままに、火の中でも、水の中でも、地獄でも」と微笑むのです。
『銀河の一票』第4話 松下洸平

『銀河の一票』第4話 松下洸平

日山の覚悟を伝え聞いた鷹臣も「地獄か」と笑います。彼らが思い描いている「地獄」とはどういうものか、その心の内側は明確に語られていません。
『銀河の一票』第4話 坂東彌十郎

『銀河の一票』第4話 坂東彌十郎

一方で、茉莉から都知事選の協力を頼まれる五十嵐は「俺は心底良かったと思っているよ。地獄から抜け出すきっかけをもらえて」「離れて分かった。あそこは地獄だ。まともな人間が、まともな神経で生きられる場所じゃない」と、政治の世界から離れられてせいせいしたと話します。

茉莉も、政界が地獄であることを認識しているようでした。五十嵐に対して「選挙に勝って、戻りましょう。地獄に」「地獄でいいわけないじゃないですか。人間が健全に、幸福に暮らす世界を作る場所が」と、地獄と呼ばれる政界を変えようと訴えかけるのです。

“国民の義務”を果たせなくなったとき

ちなみにみなさんは、自分が今いる世界をどのように感じていらっしゃいますか? すべてにおいて心から裕福だと思える人は多くないのではないでしょうか?

第4話でも、私たちの生活は数え切れないくらい“支払うべきお金”が多くあることが語られます。あれこれと税金などの話が出てきて、耳が痛くなってしまいました(笑)。それらのほとんどが“国民の義務”とされています。ただ、なんらかの事情で支払いの能力を持つことができなくなったら、自分は果たして“国民”なのか…。
『銀河の一票』第4話 阿久津仁愛

『銀河の一票』第4話 阿久津仁愛

第3話で茉莉は、介護施設の職員の年収が手取りで200万円くらいだと知ってがく然としていました。職員は、「介護施設の利用者はそれぞれ大切な世界に住んでいて、自分たちの仕事はその世界にお邪魔して、そこで幸せに暮らすお手伝いをすること」だと言います。そして、「そんな世界に利用者の家族が入って行きやすくするよう、道を作るのも自分たちの仕事だ」と話します。

本来であれば、社会を懸命に支え、前進させようとしている働き手が報われる世の中になるべきです。しかし現実はなかなかそうはいきません。誰かの幸せを願って働いても、“国民の義務”を果たすことで精一杯の状況では、自分自身の幸せを手に入れることも大変です。

「地獄」はまさに、なにをしても報われない世界です。茉莉は、市井(しせい)の人々の声を聞いて、社会全体の“地獄化”が進んでいると危機感を覚えたのではないでしょうか。多くの国民が、“国民”でなくなる日が来るのではないか――。

第4話終盤で、最近発生している“とある犯罪”についてニュース番組で報じられる場面があります。それは、闇バイトに関連したものでした。この“とある犯罪”も、現実の生活で実際に起きていることです。今の世の中はこうした犯罪が身近なものとして感じられる状況になりつつあります。また、そうしたことに手を染めなければ生きていけない人間の存在も浮き彫りにしています。

茉莉や五十嵐が「地獄」と表現したその場所の住人は、別のところで自分たちだけが裕福に生きられる世界を築いているように思えてなりません。第4話ではそうした現実を強く感じさせる内容でした。
文:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
miyoka
3

この記事へのコメント

happy

勉強になります。
プル型プッシュ型の話し。
26歳の息子がいるので、まさしく知らなかった事がいっぱい!
知らなかった事さえ知らなかった…ですね。

happy

エラーになったので短く再送したら重複してしまいました。ごめんなさい!

happy

勉強になります!プル型プッシュ型
26歳の息子がいるのでまさしく知らなかった事がいっぱい。
知らない事さえ知らなかった…です(泣)
あかりさんの言葉、見つかりましたね。
選挙に勝つ為の取り繕った言葉でなく、心の底から出てくる言葉は人を動かす力があります。
「感動」感じて動く、動かされる。
今回も私の心が大きく動かされ揺さぶられました。

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