フィクションの中に差し込まれる現実——ドラマ『銀河の一票』第7話が見つめた野呂佳代・松下洸平の“物語”と“事実”の境界線

フィクションの中に差し込まれる現実——ドラマ『銀河の一票』第7話が見つめた野呂佳代・松下洸平の“物語”と“事実”の境界線
都知事選に向けて力強い援軍が出そろった “選挙エンターテインメント”ドラマ『銀河の一票』(毎週月曜 午後10:00~/カンテレ・フジテレビ系全国ネット)。その第7話が6月1日に放送されました。
大物政治家の父・鷹臣(坂東彌十郎)の不正を疑ったことで秘書の仕事も家も失った星野茉莉(黒木華)が、出会ったスナックママの月岡あかり(野呂佳代)に都知事選への出馬を打診するところから始まったこのドラマ。
第6話では、茉莉が、都知事選に出馬表明する前にあかりの知名度を上げるため、政治家への突撃取材や裏社会の闇に迫る暴露系YouTuberの透(渡邊圭祐)に協力を要請。ネットでバズらせる企画を実行しますが、命の危険に直面する出来事と遭遇。しかし、茉莉とあかりの決死のメッセージが凶行を食い止めました。
バズらせる企画は失敗…と思いきや、第7話では当時の緊迫した模様と、窮地の中であかりから飛び出した「都知事になるの!」という出馬表明がSNSで話題に。ネット上では、茉莉とあかりの正体を突き止めようとする動きが見られるようになります。その一方であかりは、養護教諭として働いていた当時、保健室登校をしていた女子学生の心を追い詰めたとして週刊誌で取り上げられ、世間からバッシングを浴びたことを茉莉たちに告白します。
『銀河の一票』第7話 野呂佳代、黒木華、岩谷健司、シシド・カフカ

『銀河の一票』第7話 野呂佳代、黒木華、岩谷健司、シシド・カフカ

選挙戦では立候補者の“物語”が大事

これまでの展開で何度か出てきた“物語”というワード。立候補者は選挙を戦う中で、この“物語”を有権者に浸透させることが欠かせないようです。どのような人生を歩んできたのか。どれほど苦しいことがあり、その中でどんな気づきや課題を得たのか。そうした事実を、有権者の心に響かせる形へと仕上げていきます。
例えばこの都知事選の最有力候補・日山流星(松下洸平)も、自分自身の“物語”を掲げています。日山は過酷な家庭環境で少年時代を送り、人生が行き詰まりそうになったとき、鷹臣と出会って「助けてください」と声を上げた瞬間から“日山流星物語”が始まったとしています。彼はそこで、「俺の”かわいそう“は”物語“になった」と確信を得るのです。そうした日山の生い立ちに対し、一部の人は「設定盛り過ぎ」と揶揄(やゆ)しますが、彼自身は「完全にノンフィクション」と振り返っていました。
『銀河の一票』第7話 松下洸平

『銀河の一票』第7話 松下洸平

“チームあかり”の参謀・五十嵐(岩谷健司)は第7話で、あらためて「物語の構築と共有」「あれだけド派手な出馬表明をしちゃったからには、それを支えて引っ張る説得力と求心力のある物語が必要」と強調します。こうしてあかりの半生をドラマチックに見せる“物語作り”がスタートします。
『銀河の一票』第7話 岩谷健司、シシド・カフカ、野呂佳代、黒木華

『銀河の一票』第7話 岩谷健司、シシド・カフカ、野呂佳代、黒木華

映画のシンデレラストーリーのようなBGMの効果

茉莉、あかり、五十嵐、そして同陣営の雲井蛍(シシド・カフカ)は“物語作り”を思案。ここで見事だったのが、BGMの使い方です。
あかりの都知事選立候補を語る上で、茉莉との出会いのエピソードは欠かせません。与党・民政党幹事長である鷹臣の娘で元秘書という茉莉の経歴は、“月岡あかり物語”の登場人物として十分、キャラが立っています。そんな茉莉が道端でなくした、大切な電球のキーホルダー。あかりがそれを探し出したことで、茉莉との仲が深まります。探していた時間は実際、20分くらいだというあかり。しかし物語化する上では、20分だとあまりに厚みがないことから“4時間”へと脚色されます。さらに「汗を滴らせながら探した」などが付け足されていくことに。
そうやって“月岡あかり物語”が作り上げられていくとき、映画のシンデレラストーリーのようなBGMが流れるのです。たとえ平凡な出来事であっても、数字や描写を少し膨らませ、“それっぽいBGM”が加わることで、感動的な“物語”としてその出来事は受け取られていく。ここでは、泣ける映画やドラマに対するメタ的な視点がとても印象的でした。
『銀河の一票』第7話 野呂佳代、黒木華

『銀河の一票』第7話 野呂佳代、黒木華

フィクションの中にまじるドキュメンタリー

また第7話では、フィクションのドラマの中に、ノンフィクション/ドキュメントと思しき要素がいくつか散りばめられていたことが印象的でした。
都知事選の出馬会見までに、茉莉とあかりは学校や高齢者や障害者の支援施設などを回ります。小学校ではPTA、保育園では保育士や保護者、さらに包括支援センターなど様々な場所の実態を聞き取っていきます。そうした中で、ろう者通訳に関する学びを深め、視覚障害者の困りごとや要望を知ります。
茉莉とあかりの聞き取り調査の場面には、実際にそうした状況や環境下に置かれている人たちが登場します。つまりここで『銀河の一票』というフィクションのドラマと、現実=ノンフィクション/ドキュメントが密接につながるのです。
第7話終盤の出馬表明会見では、あかりが、事前に考えた段取りとは異なり、自分の言葉や思いを発します。それはあかりが、“脚本”ではなく自分の“事実”を大切にした瞬間でした。
“物語作り”というテーマを描きながら、ドキュメントタッチやノンフィクション的な映像もまじえ、“月岡あかりとしての事実”で締める――。第7話は、“物語作り”そのものを見つめ直す回になっていたのではないでしょうか。
『銀河の一票』第7話 野呂佳代、黒木華

『銀河の一票』第7話 野呂佳代、黒木華

文:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
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