調べてみよか

思い出も一緒に…暮らしに合わせて使い続ける国産木の家具

2025.05.01

思い出も一緒に…暮らしに合わせて使い続ける国産木の家具
みなさんは家具をどのように選びますか?
ローテーブルが欲しいと思ったら、「ローテーブル」を探しますよね。ところがまったく異なるアプローチで家具選びを提案するブランドがあります。そのブランド「もくわく」のベースは、シンプルなボックス。簡単に組み替えられるようになっていて、たとえばローテーブルを学習机にしたり、収納家具やベンチにしたりと、積み木のように動かして用途を変えることができます。なぜそんな家具を作ったのか取材しました。

「もくわく」
ボックスを組んで作ったローテーブル

「もくわく」を企画したのは、京都にある雑貨店「sumao(すまお)」の店主・浜谷冨美子さんです。
「もくわく」を企画するずっと前から、浜谷さんは木のボックスで生活してきました。板を置いてカウンターにしたり、収納として使ったり、完成品の家具に縛られることなく、その時の用途に合わせていろいろ工夫しながら生活することが「めちゃくちゃ楽しかった」そう。この楽しさを多くの人に感じてもらいたいと考えたことが、商品を企画するきっかけのひとつになりました。
また、粗大ゴミに家具が捨てられているのを見て、自分は「家具を捨てる」ことがないことに気が付きます。「引越ししても、ボックスを組み替えれば処分する必要がない。ゴミを出さない心地よさと、引っ越し先に合わせて違う使い方をしながら思い出と付き合える温かさがあります。何より自由でこんなに楽しく生活できる。そういうボックス家具の商品があったらいいんじゃないかなと思いました」と、ひとりで雑貨店を営みながら商品企画に踏み切った理由を振り返ります。
それから誰にでも使いやすいボックスのサイズや組み方を、約3年かけて模索しました。たどりついたのは、たった4種類のボックスです。ファイルや雑誌がピッタリ収まり、1個でも使えて、さまざまに組み合わせることもできるようにしました。

「もくわく」を企画した浜谷冨美子さん

取材の日、実際に「もくわく」を組み替えてみる体験をしました。
雑貨などの商品を見せるための段違いの棚から、固定用のクリップをはずして、背の高いほうのボックスを一段取り外し、天板をまたクリップで留めれば打ち合わせテーブルに。ボックス同士は、かわいらしい正方形のジョイントパーツでとまっているだけなので、組み替えるのはびっくりするくらい簡単です。
「もくわく」を購入する人に特に人気なのは、子どもの机だそう。
床に座って遊ぶ頃は、ボックス1段に天板をのせてちゃぶ台のように使い、大きくなったらボックスをもう1段増やして椅子に座って使うデスクにします。さらに子どもが独立したら、もちろんそのままデスクとして使用してもいいですし、収納に変更したり、キッチンカウンターにしたり、子どもがテーブルや収納として必要な数だけ持って出ることもできるのです。
ほかにも「もくわく」には変わった特徴があります。それは10か所の産地で作られるということ。
産地は、好きな樹種(杉・栗・ひのき)で選んでも、縁のある土地を選んでも、今住んでいる場所の近くを選んでもいい。通常家具は、木の色や樹種を選ぶことができても、産地までは選べるのは稀。「もくわく」は、たとえば杉なら、岐阜の長良杉、奈良の吉野杉、福岡の八女杉、京都の京都杉、神奈川の津久井杉、静岡の天竜杉、滋賀の針畑杉から選べます。

そしてそれぞれの産地には、木に関わる人がいて「もくわく」を作る人がいます。
宅配で商品を受け取ることもできますが、「もくわく」を作る製造所に取りにいくこともできるようになっています。
「産地には、木が生まれるその土地の物語がある。誰がどうやって作っているかを知ってもらいたい」と浜谷さん。そのために、産地の人の話を聞くイベントも積極的に開催しています。「もくわく」はボックスが生まれた背景を知った上で購入することができる家具なのです。
取材日に、「もくわく」に参加したばかりの滋賀の針畑杉を管理する岩松洋さんに会いました。針畑は滋賀県旧朽木村の西端に位置し、豊富な降水と積雪により優良な天然スギが生育する地域です。
岩松さんは、「高校生だった時、海に海藻がないのは、森林がちゃんと適切な養分を海に送ることができなくなっているからと先生から聞いて、森をなんとかしなきゃダメなんだって、森林の勉強をしようと思った」ことが、今の仕事につながったと話します。目の詰まった天然の針畑杉を切り出し「もくわく」として販売して、その売り上げで針畑川の流域にある山の管理や手入れをすることを目指しています。
「木が自然のサイクルの中で循環しているってすごいなって思うんですよね。山を手入れすることで海も守りたい。針畑杉は材としてとても良い木なので、その特徴を生かした製材方法でもくわくを作り、この木の魅力を発信したい」と話す岩松さんに、「こういう話をもっとたくさんの人に聞いてもらいたいんですよね」と浜谷さんもうなずくのでした。

左:「もくわく」の企画者・浜谷冨美子さん
右:滋賀の針畑杉を管理する岩松洋さん

生産者の顔が見える野菜ならぬ、作った人の顔が見える家具「もくわく」。
お気に入りや応援したい産地を見つけて、増やしたり組み替えたり、バラバラに使ったり、これは「ローテーブル」と決まらないオリジナルの家具を楽しむことに挑戦してみてはいかがでしょうか。
もくわく公式HP https://mokuwaku.jp/
※「無印良品 イーアス春日井」(愛知県春日井市)で開催中の「もくわくライフスタイル展」で、もくわくの実物を見ることができます(2025年5月6日まで)
取材・文:太田浩子
「美味しい」&「楽しい」関西の魅力をご案内。プライベートでは和菓子にハマっています。
miyoka
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