食べてみよか

【ルミナリエ】神戸グルメと光のイベント開催(2/2まで)

2025.01.25

【ルミナリエ】神戸グルメと光のイベント開催(2/2まで)
阪神・淡路大震災の犠牲者への鎮魂と、震災の記憶を後世に語り継ぐ、神戸の冬を代表する行事「神戸ルミナリエ」。
震災発生から30年となる今年はこの光の祭典も節目となる30周年を迎え、「30年の光、永遠に輝く希望」をテーマに、未来へと続く希望の灯火として神戸を訪れる人々の心を照らします。
2025年1月24日(金)から2月2日(日)まで開催中です。
そんな「神戸ルミナリエ」の会場の一つである東遊園地南側の花時計広場にて、光と「グルメ」のイベント「KOBE ディライト・ファウンテン」が同期間で開催されています。2015年に始まった同イベントには、阪神間を代表する11のメーカーが名前を連ね、特設のブースで神戸ならではの食の逸品を提供。イルミネーションに集まった多くの人々に神戸の魅力を発信しています。

KOBE ディライト・ファウンテン 2025年1月
神戸・阪神間から食の魅力を発信する11社のグルメブースが並ぶ 

ひときわ長い行列がオープンを待つのは、1915年創業の南京町を代表する豚饅頭の名店「老祥記」。同店の三代目である曹英生社長は、「住んでいたマンションが半壊して、歩いて10分くらいの南京町に向かったところ、街がガス臭かったのを覚えています。震災以前に区画整理をしていたこともあって南京町の建物は比較的被害は大きくなかったですが、隣の大丸さんがビルごと潰れていたのが本当にショックでした」と震災発生直後の状況を話してくれました。

「2、3日で水や電気は復旧して十分生活できる環境だったこともあり、震災1週間後には南京町のみんなで集まって臨時集会を開きました。その年の春節は中止にしましたが、春節の元日にあたる1月31日に行なった大規模な炊き出しで多くの方に「久々に温かいものを食べた」と喜んでいただいたことをきっかけに、それから毎週のように炊き出しや瀬戸物市、写真展、漫才や落語のイベントを行いました。自粛するのを自粛しよう、をスローガンに、とにかくできることをやっていきました」と語る曹社長。「震災で暗闇を歩いた経験がある人にとって光は希望。第1回目のルミナリエでは、被災した多くの人がイルミネーションを見て涙しました。そんなイベントが30年続き、食の街である神戸のグルメも一緒に紹介してもらえることはうれしいですね」と話します。

老祥記 豚饅頭(5個入)700円。

フォンデュイチゴフィナンシェをはじめ、愛らしいスイーツで女性を中心に人気を集めるのは、阪神間を代表する高級洋菓子店「アンリ・シャルパンティエ」。株式会社シュゼット・ホールディングスの蟻田剛毅社長は、「震災発生時はまだ父の代だったのですが、工場が埋立地にあり、そこに渡る橋が潰れて全国の百貨店に向けて荷物が出荷できなくなったため工場は事実上閉鎖しました。ですが、父の仲間であった同じ神戸の洋菓子メーカーの方が工場を無償で貸し出してくださり、2、3ヵ月でまた商品を出荷できるようになりました。こちらのピンチは相手方のチャンスだと考えるのが普通だと思いますが、みんなで助け合おうというオープンなマインドに助けていただいたと父から聞いています」と、語ります。

「震災の直後、本店がある芦屋の駅前は灯りがなく真っ暗闇でした。1ヵ月後くらいに父が『灯りをつけよう』と、紙皿ばかりだった当時に、陶器のお皿にのせてデコレーションしたケーキを提供させていただいたところ、お客様が『こういう生活があることを忘れてたわ』と涙を流して召し上がられたそうです。私たちが提供せていただくケーキやお菓子はハレの日の食べ物ですが、そういう非日常の楽しさがあってこそ人生は潤うものだと気づかされました。震災の際に皆様が『ありがとう』と言ってくださったそうです。私たちの商売は、困っている時にこそお役立ちできるものかもしれません」と話していただきました。

アンリ・シャルパンティエ 
フォンデュイチゴフィナンシェ 600円

今年の同イベントの実行委員長を務めるのは、剣菱酒造株式会社の白樫政孝社長。剣菱酒造は震災によって特に大きな被害を受けました。「震災によって8つあった酒蔵のうち7つの蔵が倒壊。仕込みの真っ最中だったこともあり、多くの蔵人が働いていましたが、その中の4名が亡くなりました。会社としては、当然その年の酒造りは中止。瓶詰め作業の再開までも4ヵ月かかりました」と白樫社長。「経験したことのない都市型災害だったので、みんなどうしたらいいのか分かりませんでしたが、たくさんの支援を受け大変助かりました」。

そんな白樫社長は「ルミナリエはとても大きなイベントになりましたが、せっかく神戸に来ていただいたのに屋台だけ食べて帰られるというのでは、神戸の復興を訴えるという趣旨からはずれているように思えます。神戸のメーカーが力を合わせて『神戸も頑張ってやっているよ』と皆様に示すのが本来の意味だと考えます」とこのイベントへの思いを語ります。

また「あの日神戸の人々は、真っ暗で食料がない中、どうやって生き延びるかを考えました。光は安心感、食べることは生きるということ。生き残った人間は、元気に食べて生きるということが使命なのかな、と思っています。いろんな『食べる楽しみ』を知っているメーカーが集まっていますので、それを知っていただきたいです」と締め括りました。

黒松剣菱(一合瓶)400円

この「KOBE ディライト・ファウンテン」の開催期間・時間は神戸ルミナリエと同じ2025年1月24日(金)〜2月2日(日)の薄暮より。
会場は東遊園地南側園地(神戸市中央区加納町6)。
くわしくは「KOBE ディライト・ファウンテン」https://delight-fountain.jp
取材・撮影:上地 智
ライター・フォトグラファー。編集プロダクション勤務を経て、2010年よりフリーランスとして関西を中心に活動
miyoka
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