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関西の藤が美しい社寺3選、お守りや御朱印巡りも

2025.04.21

関西の藤が美しい社寺3選、お守りや御朱印巡りも
桜の見頃が終わると、後を追うように4月中旬~5月にかけて見頃を迎える藤の花。関西には、藤の名所がたくさんありますが、そのなかでも、藤で名高い社寺かつ、「美しい」とSNSなどで話題になったプラスαの魅力を持つ3社寺をご紹介します。

画像提供:葛井寺

 
   
 


 

【春日大社】(奈良市春日野町)

キラリと光る「藤まもり」が大人気、藤三昧できる古社

画像提供:春日大社

世界遺産の「春日大社」(奈良市春日野町)は、約1300年前の奈良時代に鹿島神宮(茨城県鹿嶋市)より、神鹿(しんろく)に乗った藤原氏の氏神である武甕槌命(タケミカヅチノミコト)を神山「御蓋山(みかさやま)」の麓にお迎えして、社殿が建てられました。古来、藤の名所として知られています。

同大社で藤の開花シーズンに人気を集めているのが、2008年より、藤の期間限定(数量限定)で授与されている「藤まもり」(初穂料1000円)。
2021年に公式Xに画像を掲載したところ、キラキラ輝く美しさから注目を集め、瞬く間に授与が終了してしまったほどの人気ぶりです。以来、藤シーズンになると、多くの参拝者が授与を求めて訪れます。

今年(2025年)は、4月7日(月)より授与がスタートしています。
※数に限りがあるため、無くなり次第、授与は終了(昨年は5月31日まで授与)

画像提供:春日大社 砂ずりの藤

春日大社の慶賀(けいがもん)門を入った所にある棚造りの藤「砂ずりの藤」は、樹齢700年以上といわれる古木。代々摂政・関白を輩出した藤原氏の筆頭である近衛家からの献木と伝えられ、鎌倉時代の絵巻物『春日権現験記(かすがごんけんき)』にも登場します。

なぜ藤の名所になったのかについて、同大社広報の阪本さんは、「古くから春日大社のある御蓋山一帯には自生する藤がたくさんあります。また、藤原氏の信仰もあつく近衛家からの献木と伝えられる藤があり、境内の数多くの燈籠(とうろう)には藤のデザインが施されています。境内のあちこちで“藤”を感じられるため、春日大社が藤の名所と言われるようになったのだと思います」と説明します。

画像提供:春日大社 萬葉植物園の藤

他にも、同大社の境内にある「萬葉植物園(まんようしょくぶつえん)」では、20品種、約200本の藤を一般的な藤棚ではなく、目線と同じ高さで鑑賞できる『立ち木造』で楽しめます。

藤は品種によって早咲き、中咲き、遅咲きがあり、色も藤色の濃淡だけでなく、白やピンク色とさまざま。例年、ゴールデンウィーク前半が一番の見頃になるので、おすすめなのだとか。さらに、境内一帯に野生の藤が自生しているので、参道を歩きながら、ふと顔を上げてみると山藤が一面に広がっている様子も見ることができ、まさに藤三昧できる古社です。

公式サイト:https://www.kasugataisha.or.jp/
 
 


 

【葛井寺(ふじいでら)】(大阪府藤井寺市)

藤の限定切り絵御朱印が人気、メモリアルイヤーの今年は3タイプ

大阪府藤井寺市にある葛井寺(ふじいでら)は、7世紀前半に朝鮮半島の百済(くだら)からの渡来人(とらいじん)・葛井氏(ふじいし)の氏寺として創建されたと伝わる古寺。その後、荒廃してしまいましたが、平安時代(1096年)に、藤井安基という人物がそれを嘆き、伽藍の大修理に尽力したと伝わり、その姓から「藤井寺」という別名がついたそう。地名の「藤井寺市」もこの藤井に由来していると言われています。

寺名や地名からも分かるように、藤(葛)にゆかりがある同寺について、「かなり昔から藤棚があったそうで、1000年以上前には花山天皇(かざんてんのう)が葛井寺を訪れて、藤の花を連想させる御詠歌(ごえいか)を奉納しています」と、副住職の森崇紘(もりしゅうこう)さん。

古い歴史を持つ同寺にとって、今年は、奈良時代に聖武天皇の勅願(ちょくがん)でお迎えしたご本尊の国宝・十一面千手千眼観世音菩薩坐像開眼1300年のメモリアルイヤーです。ご本尊は、実際に1000本の手を持つことから「リアル千手観音」と呼ばれ、親しまれています。
さらに、開創1400年でもあり、2020年から始まった令和大改修工事(南大門修理、阿弥陀二十五菩薩像修理、阿弥陀堂全解体修復)の完工による阿弥陀二十五菩薩堂落慶と大記念の慶事が重なります。

そのため、今年は、境内の藤の開花時期にあわせて、1300年記念法要、御詠歌奉納などの特別行事やご本尊の特別参拝がおこなわれるので見逃せません。
同寺公式SNS(Instagram)で注目を集め、2022年から授与が始まった藤のシーズンのみの「藤の限定切り絵御朱印」(毎年デザインが変わる)が今年は、大記念デザインの3タイプ「阿弥陀二十五菩薩切り絵御朱印」「ご本尊切り絵御朱印」「藤の刺繍朱印」で登場し、特別に授与されます。

画像提供:葛井寺 藤のライトアップ
(2025年度のライトアップは終了)

さらに、4月16日(水)〜27日(日)で「千手藤まつり」が開催予定です。

画像提供:葛井寺

「葛井寺には、この世とは思えないほどの空間を楽しめるお堂があります。そこでは音楽を奏でるオーケストラ菩薩も修復後、初めて公開します。修復された仏像は驚くほどきらびやかに輝き、藤とともにまさに『ほとけ様の世界』を感じることができます」(森副住職)

●国宝千手観音特別開扉・阿弥陀二十五菩薩堂特別拝観
4月29日(火・祝)〜5月6日(火・祝)10:00〜15:00
※5月3日(土・祝)~5月5日(月・祝)5月17日(土)、18日(日)奉納演奏など特別行事あり、詳しくは公式HP参照

・千手藤まつり(開花状況により変更あり)
4月16日(水)〜27日(日)9:00〜16:00

・入山料500円
・無料駐車場あり(2025年から)
公式HP:https://www.fujiidera-temple.or.jp/
 
 


 

【三大神社・志那神社・惣社神社・立木神社】(滋賀県草津市)

藤にまつわるお宮さん「四社御朱印巡り」

画像提供:一般社団法人草津市観光物産協会 三大神社の藤

滋賀県草津市には、まるで“藤の里”と言っても過言ではないエリアがあります。志那町(しなちょう)にある3つのお宮さん「三大神社(さんだいじんじゃ)」「志那神社(しなじんじゃ)」「惣社神社(そうしゃじんじゃ)」は、「志那三郷の藤」と呼ばれ、藤の名所として、長年、地元の人々に親しまれてきました。

なかでも、「三大神社」にある樹齢約400年の老藤「砂擦(ず)りの藤」は、花房が地面に届きそうなほど長く垂れさがり、見応え抜群。草津市の天然記念物に指定されています。三大神社では、三大神社のライトアップを4月20日(日)~5月6日(火・祝)に夜間特別ライトアップも開催されます。

画像提供:一般社団法人草津市観光物産協会 志那神社の藤

画像提供:一般社団法人草津市観光物産協会 惣社神社の藤

志那三郷のお宮さんは、その他に、志那町の氏神である「志那神社」、天武天皇の除病延命(じょびょうえんめい)、仏法興隆(ぶっぽうこうりゅう)を願い藤が供えられたと伝わる「惣社神社」があり、2社とも三大神社と同じく、ご祭神三柱のうち二柱は、風の神である志那津彦命 (シナツヒコノミコト)志那津姫命(シナツヒメノミコト)をおまつりしています。

画像提供:立木神社

2022年から、「立木神社(たちきじんじゃ)」が新たに加わり、「藤のお宮四社御朱印巡り」がスタート。各神社の期間限定の御朱印を授与していただきながら、藤の里の散策が楽しめます。

藤の名所「春日大社」と縁がある立木神社

画像提供:立木神社

志那三郷の藤に新たに加わった立木神社は、御神紋(ごしんもん)が「下がり藤」で、藤にゆかりがある御鎮座 1250 年余の古社。本記事の最初に紹介した藤の名所で藤原氏が崇敬した「春日大社」に縁がある神社です。

奈良時代(767年)、ご祭神・武甕槌命(タケミカヅチノミコト)が常陸国(茨城県)の鹿島神宮から、白鹿に乗り旅に出て、この地に立ち寄られたと伝わります。手に持った柿の鞭(むち)を社殿近くに刺し、「この木が生え付くならば、吾(われ)永く大和国(やまとのくに)(奈良県)三笠の山(今の春日大社)に鎮まらん」と申されたと伝わる柿の木も境内にありますので、あわせてご参拝を。

画像提供:立木神社

なぜ、この地域一帯のお宮さんが藤の名所になったのでしょうか?立木神社の中嶋宮司は、「もともと藤が自生していた地域で、さらに多くの方に藤を楽しんでもらいたいと地域の皆様にご尽力いただき、藤を神社の境内に植樹してきたからです」と説明します。地域の人々が守り、地域を盛り上げていこうという願いが込められた藤でもあります。

●「藤のお宮四社御朱印巡り」
2025年4月19日(土)~5月6日(火・祝)
※志那三郷の3社の御朱印は、上記期間外および、無人の場合は、立木神社で授与

立木神社 藤にまつわるお宮さん 四社御朱印巡り 公式HP:https://tatikijinja.net/topics/854/

取材・文 いずみゆか
奈良を中心に関西の文化財やミュージアムを訪ね歩くのが大好きなライター
miyoka
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