「あのとき気づけていたら…」草彅剛と風吹ジュンが見せる人生の“気づき” ドラマ【終幕のロンド】

2025.10.20

「あのとき気づけていたら…」草彅剛と風吹ジュンが見せる人生の“気づき” ドラマ【終幕のロンド】
草彅剛さん主演のドラマ 『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』(カンテレ・フジテレビ系/毎週月曜よる10時〜)。草彅さんが演じるのは、妻を亡くしてシングルファーザーとして生きる遺品整理人・鳥飼樹(とりがい いつき)。彼が、遺品に刻まれた「最期の声」に耳を傾け、残された者へのメッセージを解き明かしていきます。

『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』第2話 草彅剛

第1話では、孤独死した女性の遺品整理をきっかけに、亡くなった母親に「10歳のときに捨てられた」と感じていた息子(吉村界人)の心情が変化していく様子が描かれました。

また、余命3ヶ月を告げられた清掃会社勤務・鮎川こはる(あゆかわ こはる/風吹ジュン)の生前整理を依頼された樹が、こはるの娘・真琴(中村ゆり)と出会う様子も映し出されました。

『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』第2話 中村ゆり、草彅剛

第2話では、樹が勤務する会社「Heaven’s messenger」のもとに、高級マンションに暮らしていた故人・木村浩(岩田知幸)の遺品整理の依頼が届きます。

ただ遺品の中に、娘・里菜(山下愛織)の留学費用700万円が紛れ込んでいる可能性があるということで、社員たちが費用探しも行うことに。しかし見つかる気配は一向になく、里菜はイライラを募らせます。
『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』第2話 風吹ジュン

『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』第2話 風吹ジュン

鮎川こはるにとっての“それ”は、間もなく訪れる自分の死です。こはるは元気に働いていましたが、自覚症状がないまま、余命3ヶ月のがんと診断されました。

こはるとしては、狐(きつね)につままれたような気分だったでしょう。生前整理を進める中でも、まだ「自分は本当に死んでしまうのか?」と疑問を持っています。それくらい元気なのです。そんなこはるは、樹との会話の中で、余命宣告を受けた後の帰り道のことをこんな風に振り返ります。

▶︎余命宣告後、世界の美しさに気づいたこはる

筆者はこの第2話の内容がとても心に響きました。どこに心が響いたのかというと、「人は何かをきっかけにして、今まで気づかなかったことに気づくことができる」という部分。『終幕のロンド』で言えば、それは「死」です。

私たちも日常の中で、「失ってから初めてその人やものの大切さに気づく」という経験をよくしますよね。たとえば家族や友だち、夫婦や恋人などなど。

『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』第2話 草彅剛、風吹ジュン

「余命宣告された帰りね、夕日がすごく綺麗(きれい)で。びっくりするくらい綺麗で。ああ、世界ってこんなに綺麗だったのかって」。

こはるのこの気づきは、みなさんも「すごくよく分かる」と思うのではないでしょうか?自分にとってなにか悲しい出来事が起きたとき、“世界”の見え方がちょっと変化する――。その変化が、これまでの自分、そしてこれからの自分との向き合い方に影響を及ぼす。

『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』第2話 草彅剛

「私の生き方はこれで良かったのだろうか」「あの人にもっとやってあげられることがあったのではないか」。

いろいろな思いが、自分の今後に生かされることもあります。そこで自分磨きをしたり、それまでやってこなかったことにチャレンジしてみたり。今まで見て見ぬふりをしてきたこと、目を背けてきたこと、見ようともしてこなかったこと、それらと向き合うことが自分を前進させる大きな機会になるのです。

こはるも、死を目の前にしたことでそれに気づきます。そして、決して良い関係とは言えない真琴と改めて向き合う決意を固めます。

「私、最期まで、あの娘に言い訳だけはしたくないと思ってね」という言葉にそれが感じられます。しかし、だからこそ余命3ヶ月であることを「言いたくないのかな」と葛藤も浮かべるのです。

▶︎気づいた方が幸せか、気づかなかった方が幸せか

気づく」というテーマは、亡き父・浩が残したとされる留学費用をめぐる里菜のエピソードでも描かれています。見逃し配信でご覧になる方もいらっしゃるはずなので詳しい内容は伏せますが、浩には、里菜たちに明かしていなかったことがあります。その秘密を、樹らは遺品の中から発見します。

『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』第2話 草彅剛、西垣匠

それが果たして良いことかどうかは別として、もし浩がそのまま生き続けていたら、里菜はきっと浩の本当の想いに気づけなかったはず。でも浩としては、“本当の想い”を里菜に気づかれない方が幸せだったように思います。

では、里菜はどうでしょうか? 浩が生き続けて彼の本当の想いに気づかず生きる方が幸せだったのか、それとも亡くなったことで自分の見えないところで彼がどんなことをしてくれていたのか、気づいた方が幸せだったのか。

筆者の頭の中で、そんな“見つからない答え”がぐるぐると回っています。

一つ言えることは、こはるが夕日の美しさに気づいたように、里菜も浩の死をきっかけに、初めて見る世界の美しさがあったのではないでしょうか。

『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』第2話 西垣匠、山下愛織

第2話にはほかにも、樹自身が亡くなった妻に対し「あのとき気づけていたら、なにかできたんじゃないかって、今も」と後悔を口にする場面があります。つらい経験や想いはすっきりと消え去るものではありません。

でもだからこそ、樹は遺品整理の仕事に就いて、また違う自分を見つけ、そして息子・陸と接することができているように感じます。

今回の物語は、視聴者自身にも様々な「気づき」を与える内容だったのではないでしょうか。
文:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
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