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脚本と主題歌「灯火」MVの監督を担当するのは…【未恋】

2025.02.23

脚本と主題歌「灯火」MVの監督を担当するのは…【未恋】
伊藤健太郎さん、愛希れいかさん、弓木奈於さんらが出演するドラマ『未恋〜かくれぼっちたち〜』が毎週木曜深夜に放送されています(全10話)。同作は、「ミスターリスク回避」と称される漫画編集者・高坂健斗(伊藤)、同じ出版社に勤める派遣社員・鈴木みなみ(愛希)、アイドル漫画家で健斗の恋人・深田ゆず(弓木)たちが、仕事、恋愛、夢と向き合う様子を描いています。

共感性が高い内容で視聴者をひきつけている『未恋』が、2月27日深夜放送の第8話でいよいよ佳境に入っていきます。そんな第8話の脚本を担当したのが、関西テレビ放送の社員である中林佳苗さんです。

中林さんは関西テレビの東京支社でコンテンツビジネス局に所属。国内外の配信事業者やテレビ局との共同番組制作などを担当し、『未恋』にも携わっています。

コンペを機に短編映画を制作「今の自分に大きな影響を与えた経験」

そんな中林さんがなぜ第8話の脚本を担当することになったのか。
実は中林さんは、ドラマ制作を志望して関西テレビに入社。しかし、その希望はなかなか実現しません。中林さんは「入社して最初の3年は大阪本社で番組制作部に所属し、主にバラエティ番組のADやディレクターをやっていました。4年目に東京へ異動し、宣伝部に2年、そして2024年夏に現部署に配属されました。いずれの仕事も大切な役割ですが、ドラマの制作現場を志望しているので、『これが本当にやりたいことなのか?』と問われるとそこには葛藤があります」と素直な気持ちを明かします。

さらに入社4年目の2022年、ドラマ制作の中でも脚本・監督など演出面に携わりたいと強く感じる出来事が起きます。それは配信プラットフォームのHuluが開催した映画コンペティション「第2回Hulu U35クリエイターズ・チャレンジ」に応募し、中林さんが出した企画『姉にヒュッゲを教えたい』が5組のファイナリストに選ばれたこと。制作費1,500万円が支援され、自身が監督・脚本、そしてキャストには吉川愛さん、山崎紘菜さん、前原滉さんを迎えて2023年に短編映画化され、オーディエンス・アワードを受賞しました(Huluで配信中)。

「一流の役者さん、スタッフに支えられ、約半年かけて制作しました。自分が考えた企画や脚本が、いろんな方々の意見や役者さんの力でより良くなっていく過程がすごく楽しく、感動を覚えました。それを4年目で味わったことは、ある意味、自分にとっては罪深かったです(笑)。もしHuluの企画に通っていなければ、現状の環境に納得していたと思いますから。あの経験は、今の自分に大きな影響を与えています。もっといろんな人と関わって、ドラマや映画を作ってみたいという気持ちが強くなりました」

中林さんの熱意をくみ取ったのが、『未恋』でチーフプロデューサーや演出を担当している木村淳さんです。木村さんも関西テレビに勤務しながら、これまで自分で舞台「尼崎ストロベリー」(脚本・演出/2023年・2024年)や「神戸洋食物語」(演出/2023年)を制作してきました。

中林さんは「コンテンツビジネス局に配属されてからも、『どうしてもドラマの監督や脚本がやりたいんです』と言い続けていたので、木村さんも『それだけ言うなら一度やってみるか』となったのではないでしょうか」と振り返ります。

主題歌のMVで伊藤健太郎さんを演出「唯一無二の存在」

念願だった連続ドラマの脚本の仕事は学びがたくさんあったようで、「Huluの作品をつくらせていただいたときとは違って自分が企画した作品ではなく、しかも第7話まで違う脚本家さんが担当していらっしゃいます。そこまでの世界観と整合性を持たせ、第9話以降にもちゃんと繋がる内容を意識しながら、自分の個性を表現しなければならない。『連続ドラマの中の一つの話を書くのって、こういうことなのか』とすごく勉強になりました」と充実した表情を浮かべます。

ちなみに第8話の中では、健斗、みなみの同僚の漫画編集者・星たける(鈴木大河(IMP.))が、自分が本当にやりたいことを打ち明けます。中林さんは「星くんは、私自身とも重なるキャラクター。自分のやりたいことはなんなのか、それをどこまで突き詰めるのか。夢を追うべきか、生活を優先するべきか。そういう気持ちを抱えながら仕事をしている人はたくさんいるはず。現在進行形でその悩みにぶつかっている人、『自分にもこういう時期があったな』という人、いろんな方に見ていただけたらうれしいです」と見どころを明かしてくれました。

また中林さんは、『未恋』の主題歌「灯火」(リュックと添い寝ごはん)のミュージックビデオの監督・脚本も担当しています。同ミュージックビデオは、「カンヅメ屋敷」でみなみと出会う前の健斗の姿が映し出されています。進路に迷う健斗が自由奔放で無邪気な少女と出会い、連れ回されるなかで一つの気づきを得る内容です。健斗役はもちろん、伊藤さんが務めています。

「自分が演出をしてみて、改めて伊藤さんの俳優としての魅力を感じました。演技が上手という一言では片付けられません。人柄、狙っている感のない自然な演技、演じ方の工夫など、唯一無二な役者さんだと思います。特にミュージックビデオは台詞がないものなので、表情やちょっとした動きで見せていかなければいけない。でも伊藤さんの表情は使いたいところが多すぎて、編集でどこをカットするか悩んだほど。このミュージックビデオをご覧いただくと、ドラマ本編の健斗のキャラクター性をよりつかめるはず。ぜひ、あわせてご鑑賞ください」

リュックと添い寝ごはん / 灯火 [Music Video]

中林さんが自分を重ねて脚本を書いたこともあってか、リアルさが伝わってくる第8話。なによりこれをきっかけに、中林さんの活躍の場がより広がるかもしれません。
インタビュー・文:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
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