ある事故をきっかけに記憶障害を抱えた脳外科医・川内ミヤビ(杉咲花)が、アメリカ帰りの脳外科医・三瓶友治(若葉竜也)をはじめとした周囲の人々に支えられ、あらためて脳外科医として歩んでいくドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』。看護師長であり病院の医療安全室長も務める”安全の鬼”津幡礼子を演じる吉瀬美智子さん。演じるうえで難しかったことや、主演の杉咲さんとのエピソードなど、お話を伺いました。
─── 演じられる津幡は、ミヤビが医療行為に参加することに反対する立場です。演じていて難しかったことはありますか?
津幡は、いろんな意味で切り替えが激しい役です。初めはミヤビ先生が手術することに反対していて徐々に受け入れるようになるんですが、同時に彼女自身のトラウマを克服していくという話もあります。順番通りに撮れるわけではないので、それこそすごく怒っているシーンを撮ったあとに和やかなシーンを撮らなければならず、切り替えが難しかったです。
時間の経過とは別に、オンオフの切り替えもあって。病院では厳しい“安全の鬼”ですが、プライベートでは「全然別人じゃないか!?」と思うぐらい歌って弾けているときもあって、0か100かみたいな部分があります。
“安全の鬼”だからすごく姿勢もよくて、普段の自分とは違うから肩に力が入っていました。現場の雰囲気がよくて、みなさん穏やかですけど、自分は役柄上違うセクションというか、どこか「違和感として存在しなければいけない」という思いがありました。もちろん和やかにはしているんですけど、近づきすぎず、距離感を保たねばならないなと。多分みなさん、居心地悪いと思うんですよ。でも、それが私の役割。
真面目というか、白黒はっきりしている部分とか、「安全の鬼!もうこれだけだ、私の仕事!」みたいな、目の前のことに前のめりになってしまうところは近いかなと思います。
彼女はあるトラウマを抱えていますが、私もセリフが飛んだりしたら怖くなることはあります。常に緊張と戦っている部分では同じかもしれないですね。
─── 津幡の、視聴者の方々に対して注目してほしいポイントは?
はじめは怖い人という印象だと思うんですけど、人間らしさがどんどん見えてくる人だと思うので、そこに注目してほしいです。3話で「こういう理由があったから、厳しくなったのね」というのがわかると思うので、楽しみにしていてください。
─── 津幡は「安全の鬼」ですが、吉瀬さんご自身を「〇〇の鬼」と例えるとしたら何の鬼ですか?
あんまり鬼になりたくないな、穏やかでいたいです(笑)。でも強いて言うならば、子どもたち相手に「片付けの鬼」になります。「神様って散らかっているとこ嫌いだよ。どっか行っちゃうよ」「だから片付けなさい、綺麗にしなさい」ってずっと言っている気がします。本当は綺麗な空間を保って落ち着きたいんですけど、すぐ散らかすから私にはその時間がないんです(笑)。
─── 看護師長役ならではの、覚えなければいけなかったことはありますか?
トラウマの原因となった過去のシーンで、初めてオペ看(手術室で働く看護師)をやることになりました。事前に医療台本をいただいていても、撮影の際に変わることも多くて。それでも慣れたように演じなければいけないので大変でした。医師役のみなさんはそれこそ大変だろうなと思います。
─── 発表時のコメントで、「いつもと違うヘアスタイルが新鮮」とおっしゃっていました。髪を伸ばしたのって結構お久しぶりですよね?
かなり久しぶりです。今の事務所に入った時に、ちょっと長めだったのをドラマで切って、そこからずっとショート。ロングはエクステやカツラでもできるし、普通は役が決まってからそこまで伸ばす時間がないんです。今回はお話をいただいたのが昨年の秋だったので「今からならいける」ってなりました。
職業もの、特に医療ものは難しいから敬遠していたんですけど、髪の毛もこうやって変えられる時間もあるし、前作が家族のお話だったので、この作品はやりたいと思いました。
意外と周りの反響も良かったんです。ストレートのまま伸ばすんじゃなくて、ミック・ジャガーみたいなグリグリパーマにしていたら女子ウケが非常に良くて、ファッション誌関係ではすごく喜ばれました。
─── 今後作品が終わった後も伸ばそうと思っていらっしゃいますか?
─── 先ほど医療ものは敬遠していたというお話がありましたが、今回お受けになったのはどんな理由からでしょうか?
原作漫画も読ませていただいて、まだ続いている作品なので「どうなるんだろう?」とラストが気になった部分もありました。しばらくやっていなかった医療職で、髪型も原作に寄せられだったのと、キャストもすごい方たちなので、断る理由がなかったですね。
─── 主演の杉咲さんとはどんなご関係ですか?エピソードなどあれば教えてください。
杉咲さんとは今回初めてなのですが、私がいつも怒っている役だから、序盤はちゃんと心と心で会話をすることがないんですね。向こうが訴えかけてきても、ガードしてしまう感じで。
でもこの間、私(津幡)が心を開くシーンを撮りました。私も不器用だから、どこの位置でこうするみたいな段取りを進めるときに、言葉や伝え方が下手だったと思うんです。でも彼女は役で患者さんに寄り添うのと同じように私に寄り添って、ずっと私の話を聞いてくださって「これやりにくくないですか?」と気遣ってくださいました。
撮影後に花ちゃんからメッセージが届いて「え、これはミヤビちゃんからなの?花ちゃんからなの?」っていうくらい、役のままのような温かい内容で「なんていい人なんだ」って思いました。役の上でもミヤビのほうが、人間ができている気がして、津幡も彼女から学んで変わっていきます。私自身も、花ちゃんにもミヤビちゃんにも、すごく信頼を寄せています。
─── 1話ではミヤビの「わたしには今日しかないんだから」という言葉が印象的でした。吉瀬さんが「今日しか味わえないな」と感じることは?
子どもの成長ですね。どんどん成長していって、昨日できなかったことが今日できたりとか、次女がまた料理作っているとか。先日もYouTubeを見ながらチャーハンを作っていました。本来はお玉と鉄鍋でやるところを、お玉と普通のフライパンでまねして作っていましたね。見よう見まねで何でも作っています。玉ねぎが目に染みるから水泳用のゴーグルをつけています、面白い姿ですよ(笑)。
─── 制作発表ではみなさんがすごく緊張する現場だとおっしゃっていました。そこまで緊張する現場は珍しいのでしょうか?
役もそうですし、今回は映画畑の方たちが多くて。もちろんドラマが手を抜いているわけではないんですけど、ずいぶん前から話し合いながらやってきているって聞くと、さらに緊張します。でも、いい意味の緊張感が映ってくれればいいなと思います。
─── 最後に視聴者の方に向けて、吉瀬さんが思う、このドラマの見どころを教えてください。
杉咲さん演じるミヤビ先生の病気がどういう風になるのか。ミステリー要素もあるし、医療ものとしても見られるドラマです。今後は恋愛の要素もあります。そして私が演じる津幡のトラウマを克服していく成長の過程も描かれています。
すごく盛りだくさんで、映像もすてきですし、見どころがいっぱいですね。私もラストを知らないので、一緒にみんなの成長を楽しんでいただけたらと思います。
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