聞いてみよか

和希そら、宝塚退団後初のミュージカルに挑む

2024.10.09

和希そら、宝塚退団後初のミュージカルに挑む
一瞬で観客をひきつける声と歌唱力、ナチュラルかつ奥深い芝居、キレのある卓越したダンスと、三拍子そろった男役として多くの舞台で主演を務め、今年2月に惜しまれつつ宝塚歌劇団を卒業した元雪組男役スター・和希そら。退団後の活動に注目が集まるなか、ミュージカル『9 to 5』で第2章をスタートさせます。

本作は音楽界の“LIVING LEGEND”ドリー・パートンが手掛け、2009年にブロードウェイで開幕後、トニー賞・グラミー賞にノミネート。2019年にはロンドンのウエストエンドでもヒットを記録した痛快なミュージカル・コメディです。和希は、明日海りおが演じるシングルマザーのヴァイオレット、平野綾が演じる秘書ドラリーとともに、ハラスメント社長のフランクリン(別所哲也)へ復讐作戦を仕掛ける新入社員のジュディ役。
退団後初ミュージカルに臨む和希が稽古の様子や男役時代とは違う歌の取り組み方、今後の展望などを語りました。
―『9 to 5』への出演が決まったときのお気持ちは?
素直にありがたいなと思いました。とても素敵な方々と、退団後初めての舞台に立てることに幸せを感じました。明日海りおさんは宝塚の大先輩ですが、現役時代は残念ながらご一緒する機会はほとんどありませんでした。この作品のスチール撮影でお会いした時もすごく柔らかい空気感を放っていらして、改めて素敵な方だなと思いました。平野綾さんは、これまで何度も舞台を拝見し大好きな女優さんなので、共演させていただけるのがとてもうれしいです。

稽古場で明日海さん、平野さん、私の3人の座っている位置が近かったのですが、「頑張って喋らなきゃ」というのがなく、稽古場で3人、ホワーンと前を見て座り、ポソポソとお互い喋るようなテンションなんです。「3人の空気感が一緒だね」と言われてうれしいですし、“癒し~”な時間が流れていました(笑)。
平野さんは声優もされているので、読み合わせの段階から色々な声色を使われ、それを聞いて楽しんでいました。明日海さんとは宝塚では組が違ったので、お芝居の構築の仕方を初めて拝見し、「こんなふうに作っていかれるんだ」と驚きがあるなど、お二方から学ばせていただくことがたくさんあります。そういう学びの中から、私自身の意志やこだわりをもって、本番に臨みたいなと思っていました。

©ミュージカル『9 to 5』

―コメディ作品を演じる難しさやおもしろさなどを感じますか?
まず別所哲也さんのお芝居が本当におもしろくて、稽古では笑いをこらえるのに必死です(笑)。私が演じるジュディは、人生を一生懸命生きている姿がおもしろく見えたりするのかなと思うので、彼女の人生を必死に生きて、その生き様をきちんとお客様にお見せしたいです。また、やはりコメディなので“間”やテンポ感は大切にしたいですね。
―作品の見どころや注目ポイントについてお聞かせください
明日海さん、平野さん、私が演じる3人の女性だけでも、悩みや葛藤、抱えている思いがそれぞれ違い、お客様にとっても、きっと身近に感じられるものなのではと思うので、登場人物の誰かに共感していただけるのではと思います。コメディとしてただ楽しく見ていただくこともできる作品ですし、何か悩みを抱えていらっしゃる人にとっては、一歩踏み出す勇気をもらえる作品だと思います。
―演じられるジュディ役について詳しく教えてください
ジュディは新入社員ですが、一度結婚して離婚した後に初めて社会に出て働き始める女性です。夫のディックとしか話す機会がない、閉鎖的な毎日を送っていたのですが、本当はお喋り好きで、環境が違えばもっとハッピーに生きられる人なのではないかと…。離婚して一人で生活をするとき、彼女の前にまたディックが現れます。ディックは1幕、2幕とも彼女の前に現れるのですが、その間にジュディは社会で色々なことを学び、友達もでき、人生の主軸が夫から自分へと変わっていく。2幕のラストにジュディが一人で歌う大ナンバーがあるのですが、その1曲の中に彼女の心境の変化が描かれているので大切にしたいです。ぜひ“ジュディの成長物語”としても見ていただけたらと思います。

©ミュージカル『9 to 5』

―楽曲の魅力についても教えてください
1曲の中で同じフレーズを歌っていても、悩みや置かれている状況によって歌詞が全然違い、前向きさも異なってくるので、歌詞にも注目して聴いていただければと思います。また、女性3人で歌うナンバーも、ヴァイオレットが真ん中のときもあれば、ドラリーやジュディが真ん中のときもあります。皆さんプロフェッショナルなので、必死にもがきながら日々お稽古していました。
―歌に関して、男役のときとは発声から違うと思うのですが、そのなかで感じていることは?
宝塚時代も何度か女役はさせていただき(『WEST SIDE STORY』のアニータ、『アナスタシア』のリリーなど)、そのときも男役の発声とは全然違ったのですが、ナンバーは1曲2曲のみで、そこに合わせて練習していく感じでした。これから先音域の広い曲と向き合っていくために、喉の状態をどうもっていくのがいいのか、この声を出すにはどのポジションに持っていくのかなど、どのようにうまくコントロールするかを毎日探っていて、そこを強化したいと思っています。
―宝塚を退団されてから約7カ月経ちましたが、なかなか男役が抜けない、といったことはありますか?
今思うと、男役のときも学年が上がってからは、一生懸命男役を作っていたというよりは、わりとフラットな状態で存在していた気がするので、退団後も自分の中で何かを変えていかなければ、という意識はなかったように思います。男役で表現するものと、今表現するものとがまったくの別モノという感覚はなく、モードを切り替えるというよりナチュラルな感じで、自然に過ごしています。
―今後、和希さんが描いている未来像があれば教えてください
お仕事をさせていただくなかで、自分が選ぶ色を固定せず、色々なものに挑戦し、新しい面をお届けしていきたいです。

公演概要

ミュージカル『9 to 5』
【日程】10月25日(金)~28日(月)
【会場】オリックス劇場
【公式サイト】https://www.ktv.jp/event/9to5/
miyoka
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