見てみよか

一人は楽か寂しいか…健斗(伊藤健太郎)たちの事情【未恋】

2025.01.17

一人は楽か寂しいか…健斗(伊藤健太郎)たちの事情【未恋】

『未恋〜かくれぼっちたち〜』第2話レビュー

漫画雑誌編集者・高坂健斗(伊藤健太郎)と、彼と同棲する売れっ子漫画家の深田ゆず(弓木奈於)、そして健斗と同じ出版社に勤務する鈴木みなみ(愛希れいか)らが、恋愛、仕事、夢と向き合うドラマ『未恋〜かくれぼっちたち〜』。その第2話が1月16日深夜に放送されました。

前回は、健斗が、モチベーションの低下により休載を発表したゆずの復帰を後押しするために、担当編集者に就任。ゆずにとってそんな彼の存在は、仕事面だけではなくプライベート面でも心の拠りどころに。そして二人はこっそり付き合うことになり、さらに彼女は半ば強引に健斗との同棲を決めました。

しかし今回の第2話では、健斗と同じ出版社に、みなみが派遣社員としてやって来ます。実は二人は、健斗が大学時代に参加した小説家育成プロジェクト「カンヅメ屋敷」で出会っており、健斗にとってみなみは忘れられない相手だったのです。ゆずが即座にその深い関係性をかぎつけ、三角関係に発展しそうな気配を見せます。

「パーソナルスペース」は自分だけの聖域

第2話で印象的だった言葉は「パーソナルスペース」です。この言葉は「カンヅメ屋敷」時、ほかの参加者と距離をとって過ごしているみなみの口から発せられます。彼女は、ほかの参加者とペアになって短編小説を仕上げていく課題に抵抗感を示します。その理由は、相互理解への拒否反応。お互いの人柄を理解し合うことについて「理解したくないし、されたくないし」と言うのです。

みなみは小さい頃から変わり者として扱われていたこともあり、「どうせ誰からも理解されないと思ってるんで、理解しようとする人を拒絶する癖があるんですね」と、健斗に明かします。では、完全に「自分の世界」で生きられるのかというと、そうではない。「いっそ一人でいた方が楽なんだけど、一人は寂しくて」という矛盾が心の中にあり、みなみ自身、そこにいろんな葛藤があるのです。みなみは、そういう自分のことを誰も理解できないと考えています。でも健斗は「理解されたくないところ、失礼ですけど、理解できます」と共感します。

これは筆者がまさしくそうなのですが、この場面で健斗と同じように「分かる、分かる」とうなずいた視聴者の方は意外と少なくないのではないでしょうか。
私たちは生活や仕事をする上でなにかしら他人と関わることになります。ただ筆者自身、他人との接点はできるだけ最小限にしています。他人と接するということは、多かれ少なかれ協調性が必要になりますし、時には自分を押さえ込んだり、我を折ったりしなければなりません。もし接する相手が「我が強い性格」であれば、その配慮からくるストレスは計り知れないですよね。あと仕事でも生活でも、人が一緒にいる限り、注意したり、注意されたり、怒ったり、怒られたりするもの。それもやはりストレスが生まれます。親、きょうだい、パートナー、仕事仲間、友だちなど、相手が誰であれ大抵はそうなります(でも、子どもやペットはそれらと一緒にはくくれないと思っています)。

筆者はいつからかそういう「対人関係」が本気で無理になってしまいました…(苦笑)。ですのでもう15年以上、フリーランスでライターをやっていますし、未婚どころかここ数年はパートナーもいません。阿部寛さんが主演のドラマ『結婚できない男』(2006年)の主人公・桑野信介の気持ちがちょっぴり理解できるようになってきました。

一人って本当に楽ですし、誰かに気を使いすぎることもやめました(もちろん相手に不快感を与えない配慮はします)。他人が発するシリアスな感情とは付き合わないようにして、仕事もプライベートもマイペースを大切にし、飼い猫だけに楽しく振り回される毎日を送っています。つまり「パーソナルスペース」は自分だけの聖域なのです。

家に帰ったら「おかえり」と言ってもらえる、幸せと重荷

ただ厄介なのは、「寂しくないか」と言われるとそういうワケでもないこと。一人でいたいけど、誰かと一緒にもいたい。みなみが話す「一人でいた方が楽なんだけど、一人は寂しくて」は激しく同意なんです。

きっと、みなみや筆者のようなタイプって、自分から人を食事などに誘うことはしないけど(それは面倒だし、しんどい)、誰かに声はかけてもらいたい。誘ってもらったタイミングだけ人と会って、楽しい時間を過ごして、また一人へと戻っていく。それくらいがちょうどいいんですよね。自己中心的でめちゃくちゃ都合がいい人間だという自覚はあります。でもそれが、このドラマのサブタイトル「かくれぼっち」ということなのかなって勝手に解釈しています。

第2話終盤、ゆずが待っている自宅に帰った健斗は、「ただいま」と言います。するとゆずから「おかえり」と返ってきます。ずっと一人で暮らしていたその部屋に、誰かが待っていてくれる。そして温かい言葉をかけてくれる。その瞬間、健斗はきっと幸せをかみ締めたはず。

でも一方で、ゆずの「おかえり」に対してちょっと複雑そうな表情も浮かべているようにも見えました。ちなみに同回では、職場でもゆずと打ち合わせで顔を合わせていましたし、帰っても彼女がいる。ゆずはきっと健斗とずっと一緒にいられる幸せを感じているはず。しかし、みなみの「パーソナルスペース論」に共感していた健斗にとっては、そういう環境や日々がちょっとずつ重荷になっていくように思えてなりません。これは推察ですが「ああ、一人って楽だったな…」とかつての日常を取り戻したくなるのではないでしょうか。そういう部分で二人の同棲生活がどうなっていくのか、気になって仕方がありません。
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文:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
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