『秘密~THE TOP SECRET~』第4話 レビュー(Xの反応あり)
私も、あなたも、世界中のどこかにいる誰かも。その一人ひとりが、愛され、育まれ、守られてきた、かけがえのない存在。当たり前に思えて最も尊いその事実をかみ締めたとき、新たに生命を与えられる者がいると同時に、生命を落とす者がこの世に存在している運命の残酷さを思い知ります。
近隣のエリアで、何者かに首元を切り裂かれる殺人事件が立て続けに発生。警察庁本部は、連続殺人事件の可能性があるのではないかと見て、その捜査を第九に依頼します。さらに同時期に、被害者が利用する沿線の電車内で、薬剤師・里中恭子(中村ゆりか)が何者かによって刺殺される通り魔事件も発生。これらの事件の被害者に共通する点はないか、薪(板垣李光人)率いる捜査チームは、被害者の生前記憶を調査することになりました。
姪(めい)が生まれたばかりで、浮かれ調子だった青木(中島裕翔)ですが……。捜査を続ける中で、亡くなった被害者にも同様に、彼らを大切に思う家族がいたのだということを悟ります。病院の新生児室で無防備なかわいらしさを見せる姪の姿。大切な人ができた人間は、それだけたぎるものが強くなるのかもしれません。絶対に犯人を見つけると決意を固めた青木は、寝る間も惜しんで捜査に勤しみます。
たゆまぬ努力の結果、青木は被害者の1人が殺される直前に自身の爪をじっと見ていたことを発見。映り込んでいた正体不明の犯人も同様の行動を取っていたことがわかり、解剖時に遺体を見ている解剖医・雪子(門脇麦)に映像を見せることに。違和感を必死に伝える青木ですが、肝心の雪子は青木のほうを見つめて上の空。
特異所見は見られなかったと吐き捨ててその場を後にしようとする雪子の背中に、青木は「絶対に見落とすことはないんですか?」と疑問を投げかけます。その言葉に、怒りをあらわにする雪子。青木の失礼な発言に対する激高以上に、かつての恋人・鈴木(中島裕翔 一人二役)にそっくりな青木に対する複雑な感情が渦巻いていたのかもしれません。真相究明への情熱を燃やす青木に、鈴木を重ねて見てしまう雪子。彼女自身も、大切な人を亡くした悲しみを抱えながらも、気丈に生きていたのでした。
雪子を訪ね、解剖室に突撃した青木。直後に連絡が入り、2人はともに錦糸町のカプセルホテルに急行します。ホテルの個室で亡くなっていたのは、なんと先日薬剤師が刺殺された電車の車内に乗り合わせていた男性でした。死因と見られるのは、新種の伝染性関節症。全身に内出血のような青あざが発症しますが、死後そのあざは消えてなくなる特性を持つといいます。「爪を気にする」という行動に違和感を抱いた青木は、唯一事件の謎を解く鍵に気づいていたのです。青木、お手柄!
カプセルホテルの帰り道、立ち止まって自分の爪を眺める雪子。そういえば冒頭の死亡解剖シーンで、使用していた手袋が破れていて、被害者の血液が雪子の手に付着していたような……。案の定、嫌な予感は的中してしまいました。
薪に言い放った雪子のセリフ、めちゃくちゃ痺れましたね……!「最後まで働かせて。何もしないまま死なせないで」って。治療法のない未知のウイルスに感染し、最期の瞬間を待つ間でさえも、事件の解明のために身を捧げる覚悟。青木や鈴木のように、分かりやすく熱意をみせる人もいれば、薪や雪子のように、静かに胸の内を燃やす人もいる。タイプは違えども、皆捜査に情熱を傾ける同志であるということに変わりはないのです。
そしてそして、最後のシーン、やばくなかったですか(語彙【ごい】力喪失)!!無防備にキュンキュンする局面ではないとは理解しつつ、雪子の過去に思いをはせると、「うお〜〜〜青木!!」と画面に叫びたくなるほどでした(笑)。
「わかっていた。あいつがひかれていくのは」という意味深な薪のセリフが、また秀逸。ただでさえ愛した人の面影を感じさせる青木に「絶対に、あなたをみすみす死なせたりしません」」なんてあんなまっすぐに告げられたら、身も心も預けたくなってしまうに決まってます……。「女薪」と呼ばれるほど気高い雪子が見せた、少女のような表情を私は見逃しませんでしたよ!
BGMで流れる、主題歌のBUDDiiS『Iris』も切なさを倍増させていましたね。大切な人を亡くし、深い悲しみや喪失感を抱えながら、人の罪や隠された秘密に向き合ってきた薪や雪子。青木と出会ってからというもの、抑え込んでいた思いをかき回されますが、それがある意味では彼らをとらわれていた過去から解き放つ引き金になっているのかも。
Xでは、「今はもう何処にもいない、亡くなってしまった自分の恋人にそっくりな人間が身近にいるのって相当複雑な心境だろうな」「事件もウイルスも人間関係もめっちゃヒリヒリする」と、登場人物たちの切ない胸中に思いを馳せる声も上がっていました。また、「雪子先生の見惚れてる青木の横顔、眩しい…」「裕翔くんに壁ドンされたい人生だった」と青木役の中島裕翔さんに対するコメントも多く寄せられていました。
あっという間に次回予告になってしまいました。雪子の危機に青木の危険すぎる単独捜査、真犯人の正体など、来週はますます見どころてんこ盛りの予感!青木が雪子に引かれているようなそぶりも感じられましたが、薪を含む3人の関係性はどう変化していくのでしょうか?
文・神田 佳恵
フリーライター 兼 一児の母。
取材・インタビュー、エンタメ記事、エッセイなど、複数媒体・分野で執筆中。
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