黒木華と松下洸平の場面からひも解く『銀河の一票』第5話。重要なキーワード“点字ブロック”が浮き彫りにする、社会の足元と真の政治家像
現代社会が抱える問題とエンタメ性をバランス良く織り交ぜて描く “選挙エンターテインメント”ドラマ『銀河の一票』(毎週月曜 午後10:00~/カンテレ・フジテレビ系全国ネット)。その第5話が5月18日に放送されました。
大物政治家の父(坂東彌十郎)の不正を疑ったことで秘書の仕事も家も失った星野茉莉(黒木華)が、出会ったスナックママの月岡あかり(野呂佳代)に都知事選への出馬を打診するところから始まったこのドラマ。
第4話では、都知事選出馬を決めた無名の新人・あかりを勝たせるため、茉莉は、「選挙の天才」と呼ばれる五十嵐隼人(岩谷健司)に接触。陣営に引き入れようと働きかけます。ところが五十嵐は、かつて茉莉の父親で民政党幹事長・鷹臣のもとで働き、不本意な形で辞めさせられたことから、政界へ戻ることを拒否。それでも茉莉の粘り強い説得と、加えて自分がサポートしている労働者たちに後押しされたことから、選挙参謀として加わることを決断します。
第4話では、都知事選出馬を決めた無名の新人・あかりを勝たせるため、茉莉は、「選挙の天才」と呼ばれる五十嵐隼人(岩谷健司)に接触。陣営に引き入れようと働きかけます。ところが五十嵐は、かつて茉莉の父親で民政党幹事長・鷹臣のもとで働き、不本意な形で辞めさせられたことから、政界へ戻ることを拒否。それでも茉莉の粘り強い説得と、加えて自分がサポートしている労働者たちに後押しされたことから、選挙参謀として加わることを決断します。
そして第5話では茉莉が、2年前の西多摩市長選で五十嵐が力を貸して当選へと導いた雲井蛍(シシド・カフカ)にアプローチ。蛍は当時、無名の新人でしたが「ぶっ飛ばすよ!」を合言葉にして旋風を巻き起こし、選挙戦を勝ち抜いた経験を持ちます。しかし、そんな蛍はわずか1年で市長を辞職し、政治の世界も引退。その背景には、鷹臣の暗躍がありました。蛍はそうした経緯に加え、息子・陽太(山本弓月)の子育てなどもあり、選挙戦参加に抵抗感を示します。一方で「もう一回、あの場所で戦いたい」という気持ちは胸の奥にあることも吐露します。
『銀河の一票』第5話 シシド・カフカ
『銀河の一票』で重要な役割を果たす点字ブロック
ここまでの『銀河の一票』を語る上で、重要な役割を果たしているのが点字ブロックです。第1話では、まだ鷹臣の秘書として働いていた茉莉が出勤時、点字ブロックに荷物を置いて電車を待つ会社員を注意する場面がありました。会社員は「(通行人が)来たらどかすから」と反論しますが、茉莉は「先ほど私が声をかけたら気づかれませんでしたよね?スマホを凝視しているときの視野は通常時の20分の1という研究結果も」と“論破”。
ところがそんな茉莉も、秘書をクビになって家も出ることになり、途方に暮れる中、無意識に点字ブロックに荷物を置いて通行人の邪魔をしてしまいます。第1話の点字ブロックは、社会のルールに従順で、どれだけ注意を払って生きているつもりでも、自分ごとになると周りが見えなくなることを示していました。そしてそれは、茉莉の性質にも重ねることができました。
第4話では、点字ブロックの上に自転車を停めて話し込む数人の高校生に、笑顔で話しかける五十嵐の姿が映し出されました。高校生たちは、そんな五十嵐の声がけに渋々応じて自転車を移動させます。ただ、そうした五十嵐の“気さくな注意”からは、ふとしたきっかけで自分もその当事者になる場合があることを理解している風に映りました。
『銀河の一票』第5話 岩谷健司
点字ブロックを必要とする人たちのために、日頃から注意を払う――。第1話の茉莉、第4話の五十嵐の行動は、同じ社会のルールやマナーを描きながらも、アプローチの仕方によって受ける印象が大きく異なります。当時の茉莉と五十嵐の立場の違いがそうさせたのかもしれませんし、生まれ育った環境によるものかもしれません。
ここから見えてくるのは、社会にはたくさんの人がいて、お互いのことを気にかけながら共存する必要があること。当時の茉莉と五十嵐には、点字ブロックをふさいでいる人を注意する“目的”に違いがあったように思えました。
街頭演説の場面が示した、社会の“足元”
第5話でも、点字ブロックが印象的に映し出されました。それは、都知事選の有力候補・日山流星(松下洸平)の街頭演説の場面です。彼の演説に注目する聴衆が点字ブロックを踏んでいるのです。
『銀河の一票』第5話 松下洸平
ちなみにここでは、少年時代の流星は厳しい家庭環境にあったことが回想されました。そのときの流星は、家庭内の問題のため寝間着のスウェット姿と裸足で家から逃げ出したばかり。彼は、点字ブロックに沿って走って行きます。そしてたどり着いた先にいたのが、40歳のときの鷹臣。演説を行っていた鷹臣は「助けてと声を上げられる社会、応えられる政治。それこそが我々、民政党の…」と訴えかけていました。
流星は、鷹臣の話を聞いた上で自分の見た目を確認。「大丈夫、いける。今、俺は完ぺきに“かわいそう”だ」と言い聞かせ、「助けてください」と声を上げます。その瞬間「俺の“かわいそう”は“物語”になった」と、鷹臣との出会いと政治家としての起点を振り返りました。当時はまだ政界で影響力を持っていたとは言い難い鷹臣。ただその街頭演説の内容から、市井(しせい)の人々に寄り添う姿勢を“言葉”で示して支持を獲得し、政界のドンにまでのぼりつめたことが想起できます。
『銀河の一票』第5話 坂東彌十郎、松下洸平
流星の演説場面で聴衆が点字ブロックを踏んでいる――。現実の話でも、一部の街頭演説が点字ブロックをふさぐ形で行われて問題視されたケースもありました。この場面はそうした現実の課題をモチーフにしていると思われます。流星が影響を受けた、鷹臣の「助けてと声を上げられる社会、応えられる政治」という言葉とは裏腹に、そこでは誰も社会の“足元”に目を配っていないことが見て取れます。
第2話では、都知事という立場について茉莉が「(誰かの)上じゃなくて、前です」「同じ地面に足を着けて、同じ景色の中を、同じ気温を感じながら同じ道を歩くんです。先頭を、明るい方へ」と持論を口にします。それは政治家としてあるべき姿勢にも言い換えることができるでしょう。
しかし流星は、茉莉や五十嵐のように点字ブロックをふさぐ聴衆に声がけをするわけではありませんでした。かつては点字ブロックに沿って走る=市井の人の立場で生きていた流星でしたが、政治家としての向上心に燃えるあまり、足元に目をやることを忘れさせていたのではないでしょうか。つまり、同じ地面に足を着けているのではなく、すでに“お上意識”の芽のようなものがあると推察できます。
今後も点字ブロックは物語を進める上でのキーワードとして出てくるのではないでしょうか。その意味を一つ一つ考えながら、鑑賞したいですね。
文:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
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