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雪子が秘めた薪への思い、青木も加わり三角関係が浮き彫りに

2025.03.03

雪子が秘めた薪への思い、青木も加わり三角関係が浮き彫りに

『秘密~THE TOP SECRET~』第6話 レビュー(Xの反応あり)

「中には掘り返さないでおいたほうがいい死体もある。飼い主が殺して埋めた骨……てこともあるからな」

薪剛(板垣李光人)、青木一行(中島裕翔)

6話放送終了後、冒頭の薪(板垣李光人)のこの言葉の意味がようやく理解できました。正直、物語のすべてを受け入れるにはあまりにも重たく、苦しくて、深い無力感に心と体を侵食されているような感覚を覚えます。

今回青木(中島裕翔)が捜査することになったのは、雪子(門脇麦)たち解剖医チームから受け取った20年以上前の屍蝋化(しろうか)死体。その体には、下半身を中心に無数の刺し傷が残されていました。殺人事件の時効制度の廃止を受け、過去に起きた殺人であってもその罪を問うことができると、雪子は薪や青木にMRI捜査を要請。薪は反対しましたが、雪子に引かれている青木は一人で捜査を進めることを引き受けました。

鍵を握っていたのは、薪が岡部(高橋努)を通じて青木に“差し入れ”したとある写真。そこに写っていたのは、被害者と思われる男性と、その子どもと思われる兄妹の姿でした。MRI捜査を続けていると、被害者の記憶の中に兄の姿が映し出されます。散らかった室内、床に転がる舟券、ボロボロの身なりで、込み上げる怒りを抑えているかのように呼吸を荒くしている兄の姿……。生前の荒れ果てた暮らしぶりがうかがい知れました。

青木一行(中島裕翔)、岡部靖文(高橋努)、薪剛(板垣李光人)、三好雪子(門脇麦)

後日、雪子の前に現れたのは、彼女の親友・浜田葵(藤間爽子)。葵には兄・尚(橋本淳)がおり、婚約者の早瀬翔(木田佳介)とは折り合いがよくないようでした。カフェで楽しく談笑している雪子と葵の前に、突然姿を見せた薪。出会ってすぐに、薪は葵の顔や首に痛々しく浮かび上がるあざの数々に気づき、彼女の私生活が決して穏やかではないことを見抜きました。

浜田葵(藤間爽子)、三好雪子(門脇麦)

室長室で薪から写真に写る兄妹の正体や、彼らの境遇を知らされた雪子。まさに「触れてはいけない秘密を暴いてしまった」気持ちだったのではないでしょうか。まさか葵が、あんなに悲痛な過去を抱え、これまで生きてきたなんて。そして、大切な親友であるにもかかわらず、なぜ彼女が抱えてきたその重荷に気づけず、支えてあげられなかったのだろう。

青木は青木で、雪子の頼みに懸命に応えただけなのです。それが雪子自身を、思ってもみない窮地に追い込むことになるとは。「青木の怖いところは、ボールを投げたはずなのに夢中で探すあまり、たまに本物の人骨を掘り当ててしまうところだ」という冒頭の薪のセリフは、愛する女性のために尽力した結果が、かえって彼女を苦しめてしまう結末を見抜いていたが故だったのかもしれません。

青木一行(中島裕翔)

雪子が薪を引き留め、2人が対峙(たいじ)するシーン、板垣李光人さんと門脇麦さんの美貌が爆発していましたね。でもそれ以上に、どうにか親友を守ろうと強気で立ち向かう雪子と、事実を知ってしまったからには葵を見逃すことはできないと、正義を貫こうとする薪の信念のぶつかり合いが、ヒリヒリ感満載で。どっちの気持ちも理解できる分、胸が痛むシーンでした。

三好雪子(門脇麦)、薪剛(板垣李光人)

葵宅で、再び起きてしまった惨劇。駆け寄る雪子に抱きつき、泣きじゃくる葵。25年前にも、同じようにして尚にすがり、泣き声を上げたのでしょう。葵役の藤間爽子さん、そして幼少期の葵を演じる水田あみさん。2人の繊細な演技が、葵が抱えてきたそこ知れぬ孤独や不安を、これでもかというほど克明に描写していました。

こんな悲劇が起きる前に、誰かこの兄妹に手を差し伸べることはできなかったのか。母に先立たれ、父に暴力を振るわれ、たった一人頼れると思っていた兄も、自分を置いていなくなってしまった。自分の身を守るためには、自分の手を血で染める他にはすべがなかった。そして妹を置いていった自らの罪を償うために、兄は妹の罪を一緒に背負うことにした。

浜田葵(藤間爽子)

泣き叫ぶ葵の声、怒号をあげる父親、父が母に手を上げる瞬間。まだ小さな子どもが受け止めるには、あまりにもつらすぎる現実。映像で見ているだけでも鳥肌が立つほど恐ろしいのに、その渦中にいた兄妹にとって、それがどれだけ過酷だったのかは、想像に難くありません。

悲しみに満ちた兄妹の結末を見守った後、最後の最後に雪子が投下した爆弾、やばかったですね。いよいよ核心に迫ってしまったか、といった感じ。虚を突かれたような薪の表情はかれんな少女のようで、報われない彼の境遇を物語っていました。雪子、ちょっと言い方がキツくない?!とも思いましたが、雪子も雪子で薪に対する届かない思いを抱き続けている。攻撃的ではあるけれど、報われない愛情が屈折して、やっと出てきた彼女なりの告白だったのかもしれません。そしてその直後に、青木が……!!

三好雪子(門脇麦)、青木一行(中島裕翔)、岡部靖文(高橋努)、薪剛(板垣李光人)

本当に愛している人には振り向いてもらえないのに、愛する人の愛する人は自分を見つめている。全員の視線が交わることのない、切なすぎる愛のベクトル。神様、運命のいたずらにしては、あまりにもひどすぎます。生者も死者も、暴くべきではない秘密がある。今週は、それぞれのパンドラの箱が開かれ、運命が大きく動いた展開となりました。ラストシーンの青木と雪子の立ち姿、切なすぎたなぁ……。

放送後のXでは、「地獄のような回だが、助け合って生きてきた兄妹の様子は胸に来る」と、尚・葵2人の過去と未来に胸を打たれる声や、「(薪と雪子は)お互いに深いところを刺しすぎなのよ。多分2人とも酷いこと言ってるの自覚してるしな」と薪・青木・雪子の静かに加熱する三角関係に注目する声が上がる中、「つらすぎるのでやっぱり岡部スピンオフください」と岡部に癒しを求めた方も見られました!

来週は、大臣の娘の誘拐事件に第九の面々が立ち向かいます。犯人は、いまだ生きている人間?生きた人の脳を捜査することは、決して許されることではありません。果たして薪たちは、どのようにして少女を救出するのでしょうか?

三好雪子(門脇麦)、薪剛(板垣李光人)

文・神田 佳恵
フリーライター 兼 一児の母。
取材・インタビュー、エンタメ記事、エッセイなど、複数媒体・分野で執筆中。
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