『ロンダリング』は「緋山の成長物語」なにわ男子・藤原丈一郎の演技ににじみ出る“素直さ”

2025.09.05

『ロンダリング』は「緋山の成長物語」なにわ男子・藤原丈一郎の演技ににじみ出る“素直さ”
ドラマ『ロンダリング』が4日、ついに最終回を迎えました。

7月3日よりスタートした『ロンダリング』は、売れない役者の緋山鋭介(藤原丈一郎)が、「死者の声を聞くことができる」という能力を買われ、アマミ不動産の社長・天海吾郎(大谷亮平)のもと、ワケあり物件に一時的に住んで事故実績などを洗浄する「ロンダリング」の業務をおこなう内容です。

【動画で見る】<ドラマ>ロンダリング【出演:藤原丈一郎(なにわ男子)、橋本涼(B&ZAI)ほか】
『ロンダリング』最終話 アマミ不動産の社長・天海吾郎(大谷亮平)

『ロンダリング』最終話 アマミ不動産の社長・天海吾郎(大谷亮平)

しかし大阪でのロンダリングの任務を進める中で、裏社会の人間による貧困ビジネスに苦しむ人たちの実態に直面。
さらに社会的弱者のサポートをしていた白川愛(桜井日奈子)が殺されたこと、その死の背景には天海や半グレ集団などを率いるP.J.(B&ZAI・橋本涼)が絡んでいることに気づいていきました。
『ロンダリング』最終話 白川愛(桜井日奈子)

『ロンダリング』最終話 白川愛(桜井日奈子)

そして最終話。それまでの放送回でP.J.が白川愛の弟であることが判明しましたが、実は天海も二人と深い関係が。P.J.がなぜこれまで天海の動向を気にしていたのか、そして白川愛の白骨が見つかったゴミ屋敷を頻繁に訪れていたのかが明らかになります。
それらを知った緋山、そしてアマミ不動産社員・蒼沢夏凜(菅井友香)は、天海、P.J.と対峙(たいじ)。すべての真相を突き止めようとします。
『ロンダリング』最終話 蒼沢夏凜(菅井友香)

『ロンダリング』最終話 蒼沢夏凜(菅井友香)

「放っておかれへん」と言う緋山の成長


「放っておかれへん」

これは最終話の緋山のセリフです。筆者はこの一言に、緋山のすべてが詰まっていると思いました。

『ロンダリング』は「事故物件」とも称されるワケあり物件というちょっと怖そうだけど好奇心がそそられる話題を扱ったり、貧困ビジネス、土地開発、ホストの色恋営業、違法なメンズエステなどの社会的題材を含んだりしながらストーリーが運んでいきました。
『ロンダリング』最終話 村崎篤史(趙珉和)、緑原小町(久保田磨希)

『ロンダリング』最終話 村崎篤史(趙珉和)、緑原小町(久保田磨希)

ただトータルで見ると、これは「緋山の成長物語」ではないでしょうか。
第1話では、緋山は自分にまったく自信を持つことができていませんでした。「役者になりたい」という夢もどこか半信半疑なもので、天海社長からロンダリングの仕事を頼まれても弱音が先に口をついて出ていました。なにより、「死者の声を聞くことができる」という能力のせいで、住む場所も転々としていました。つまり、ずっと何かから逃げてきた若者だったのです。

しかしロンダリングの業務を通じて、ネガティブに捉えていた自分の特殊能力が誰かの役に立つことに気づきます。さらに、「芝居ができる」という経歴が生かされる場面も何度か訪れ、そのたびに少しずつ自信が生まれていったのではないでしょうか。
『ロンダリング』最終話 アマミ不動産の社長・天海吾郎(大谷亮平)、緋山鋭介(藤原丈一郎)、村崎篤史(趙珉和)

『ロンダリング』最終話 アマミ不動産の社長・天海吾郎(大谷亮平)、緋山鋭介(藤原丈一郎)、村崎篤史(趙珉和)

自分に自信がなくて、逃げてばかりの人生だった緋山。しかし、そうやっていろんな物事と向き合うことなく生きていた自分の知らないところで、苦しんで生きる人たちがたくさんいた。緋山は、その現実の中で命を落とした白川愛のことを考え、「彼女が生きている間に自分は何もしてやれなかった」と悔やみます。

「俺にできることは(死者の)声を聞くことだけで」と自分の無力さを実感します。
だからと言って、いつものように「自分はそれくらいのことしかできないから」と逃げてしまってはこれまでの人生と一緒。そこで「放っておかれへん」と白川愛らの出来事と向き合う決意を見せたところが、緋山の大きな成長だと感じました。

役からにじんでいた、藤原丈一郎さんの正直さ

そんな緋山が成長する姿を、藤原丈一郎さんが時には味わい深く、時にはコミカルに、そして時には躍動感たっぷりに演じられていたのが印象的でした。

ドラマがスタートする前に東京都内で開かれた取材会へ筆者も出席し、藤原さんから直接いろんなお話を聞きました。そこで受け取った藤原さんの印象は「とても正直な人」というものでした。

たとえば筆者が「事故物件に住みたいという気持ちは?」と尋ねたとき、間髪を入れずに「絶対に無理です!」と答えていました。考え込む時間はゼロ…どころか、食い気味の「絶対に無理です!」に筆者も思わず笑っちゃいました。

続けて「バラエティ―の企画として事故物件に行くのは?」と聞くと、次は「お話が来たら…、前向きに検討はしたいですけど…、やっぱり内容にもよるかも…」と、言葉が途切れ途切れに。藤原さんのなかでいろいろ考えるものがあったのでしょう。
『ロンダリング』最終話 P.J.(B&ZAI・橋本涼)、蒼沢夏凜(菅井友香)、緋山鋭介(藤原丈一郎)

『ロンダリング』最終話 P.J.(B&ZAI・橋本涼)、蒼沢夏凜(菅井友香)、緋山鋭介(藤原丈一郎)

『ロンダリング』の物語の性質上、カンテレの番組から事故物件絡みの企画を依頼されたら、そこは主演として一考しなければならない。
でも本音としては「絶対に無理」。ドラマの「座長」としての葛藤と、素の「藤原丈一郎」の狭間(はざま)で揺れ動く気持ちが、いずれの回答の後ろに付く「…」だったと思います。

取材会でのいくつかの対話から、筆者は「この人はすごく正直な人なんだな」と感じました。そしてご本人が持つ素直さが、今回の緋山という役にも生かされていたのではないでしょうか。

ドラマの中でいろんな出来事に振り回されている様子は本当に苦労しているようでしたし、でもそこにやりがいを見出している姿にも嘘(うそ)がないように見えました。藤原さん自身、演技としてしっかり表現しながらも、「本人性」がにじんでいた気がします。

さて、そんな『ロンダリング』ですが、続編への含みを持たせる終わり方になっていましたね。たしかに内容的にも、いろんなワケあり物件の謎を解いてまわるシリーズとして続けていけそうですし、緋山と夏凜のバディものとしてもやれそうです。シリーズ化されることを楽しみに待ちたいと思います。
文:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
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