齊藤京子×水野美紀 W主演『娘の命を奪ったヤツを殺すのは罪ですか?』第1話 レビュー
近年、復讐(ふくしゅう)をテーマにしたドラマが人気を集めている。不条理な目に遭わされた者が、なんらかの形で相手に復讐したいと考えることは、古今東西変わらない人間の本能だろう。
怒り、悲しみ、絶望、憎悪、策略のスリルや興奮、復讐を遂行した後の歓喜のカタルシス(心の浄化) と、言いようのない虚しさ…。
そんな人間らしい剥き出しの感情がジェットコースターのように次々に体感できる「復讐劇」は、世代や趣味・嗜好(しこう)を超えて見る者を夢中にさせる重いテーマ性と同時にエンターテイメント性があるのだ。
▶往年の少女漫画ばりのママ友いじめがジワる!
2025年10月7日(火)より放送スタートする『娘の命を奪ったヤツを殺すのは罪ですか?』(カンテレ・フジテレビ系全国ネット)もまた、そんな復讐劇のひとつだ。SNSを中心に大きな反響を巻き起こした同名コミックを原作にした本ドラマ。
ママ友いじめによって娘を失った55歳の母親・玲子が全身整形によって見た目も声も変えて、25歳の新米ママ・レイコに生まれ変わり、ママ友グループに潜入。捨て身の覚悟で加害者を次々に地獄へと突き落とすさまが描かれる。
玲子の娘の優奈を演じるのはドラマ『チア☆ダン』『あなたの番です』の大友花恋。新川優愛演じるボスママたちのいじめが「お遊戯会の衣装を全部押し付けて、一晩で全部やり直し!」とか、往年の少女漫画ばりのベタないじめで、「いやいや」と半笑いで突っ込みたくなるのだが、そのベタさがまた癖になり、一気に作品世界に引きずり込まれる。
▶復讐の鬼と化す水野美紀の抑えた演技がコワイ!
また「全身整形」という突飛な設定に問答無用のリアリティーをもたらしているのが、母親の玲子を演じる水野美紀の存在感。
ドラマ『奪い愛、真夏』での怪演や大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』の眉毛のない女郎屋の女将役で世間をざわつかせた水野だが、本ドラマでは母子家庭で苦労しながらも娘の幸せを願い、慎ましくも平穏な日々を送っていた母親役ということで、化粧っ気のない容姿で登場。
玲子は訪問介護の仕事で老人に「遺産をあげる」と言われても、固く辞退する。そんな玲子の「脂っ気のなさ」に意表をつかれるが、徹底した“善人”だからこそ、“復讐の鬼”と化した際の凄みが際立つわけで。
命よりも大切な娘(大友花恋)を救えなかった自責の念を抱えたまま、「全身整形して今までの自分を殺す」という究極の選択をする玲子の心情を繊細かつビビッドに体現するあたり、さすがの一言。
25歳の新米ママに生まれ変わったレイコを演じるのは、元日向坂46の齊藤京子。圧倒的な歌唱力と我が道をゆくトーク力で近年は自身の看板番組『キョコロヒー』をはじめ、バラエティーに引っ張りだこ。
第78回カンヌ国際映画祭のカンヌ・プレミア部門に正式出品された深田晃司監督の映画『恋愛裁判』(2026年1月公開予定)に主演し、世界の大舞台に躍り出るなど、女優としても注目を集めている彼女が「55歳の母親の心を持った25歳の新米ママ」という難役をどう演じるのか、期待せずにいられない。
▶JO1の白岩瑠姫が演じる謎の男の正体は…?
ちなみに原作では、玲子自らが別人になることを決意し、整形外科に足を運ぶのだが、本ドラマでは謎の男が玲子の前に現れ、「死ぬぐらいなら生まれ変わったらどうだ?」と持ちかける設定になっている。
この男は何者なのか?なぜ玲子に復讐を持ちかけたのか?復讐劇にミステリー要素が掛け算されることで、よりスリリングで重層的な人間ドラマが堪能できそうだ。
この謎の男・成瀬を演じるのは、JO1の白岩瑠姫。素性不明の成瀬のミステリアスな存在感は、今回がテレビドラマ初出演、まだ俳優として2作目の白岩ならではのもの。
個人的にはレイコが自分の子どもとして引き取った隣人の息子・空をドラマ『ライオンの隠れ家』で視聴者をメロメロにした天才子役・佐藤大空くんが演じているのもアツイ。容赦ないドロドロの復讐劇の中で彼の無垢(むく)で人懐っこい存在感が一服の清涼剤となりそう。
もし自分の命よりも大切な人の命を奪われたら。その罪が法では裁けないとしたら。自らの手で相手に復讐することは果たして「罪」といえるのか?自問自答しながら、復讐劇の行方を見守りたい。
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