一樹(安田顕)の「一緒にいて楽」という言葉の矛盾【松下奈緒主演・ドラマ『夫に間違いありません』】

一樹(安田顕)の「一緒にいて楽」という言葉の矛盾【松下奈緒主演・ドラマ『夫に間違いありません』】

松下奈緒主演『夫に間違いありません』第2話レビュー

1月5日にスタートした松下奈緒さん、桜井ユキさん、宮沢氷魚さん、安田顕さんら出演のドラマ『夫に間違いありません』(毎週月曜よる10時~放送)。その第2話が1月12日に放送されました。

同ドラマは、行方不明の末に亡くなったはずの夫・一樹(安田顕)が突然帰ってきたことから、その妻・朝比聖子(松下奈緒)の日常の歯車が狂い始めていく物語。一樹の生命保険金で多額の借金を返済し、経営している飲食店「あさひおでん」のリフォームも済ませていたため、一樹が生きていることがわかると、保険金を一括返金しなければなりません。二人の子どもの進学や、家族の幸せを考えると、再び借金生活を送ることはできない――。そこで「“朝比一樹”は、このまま死んだことにするんだ」と返済できるだけのお金が貯まるまで、家族にも生きて帰ってきたことを伏せておくことに。
今回の第2話では、一樹が生きて帰ってきたことを“なぜか”知るキャバクラ嬢・藤谷瑠美子(白宮みずほ)が現れます。瑠美子は聖子に対し、かつて自分は一樹と一緒に暮らしていたと明かします。聖子は当然、一樹が自分たちの前からこつぜんと姿を消した理由は、瑠美子と一緒になるためだったのではないかと考えます。そう問い詰められた一樹は、聖子にこのように言います。

「少しの間、世話になっていたんだ。行く当てもなくて、金もなかったから。楽だったんだよ」。

「一緒にいて楽」は褒め言葉?

『夫に間違いありません』第2話 松井玲奈、余貴美子、中村海人、松下奈緒

『夫に間違いありません』第2話 松井玲奈、余貴美子、中村海人、松下奈緒

一樹と瑠美子の関係性が実際のところ、どのようなものだったのかは現段階では分かりません。ただ、第2話のキーワードに挙げたいのは、「一緒にいることが楽だった」です。

ちなみに第2話中盤でも、聖子の弟・貴島光聖(中村海人)が、婚約者の九条まゆ(松井玲奈)の存在について「一緒にいて肩ひじ張らなくていいっていうか、楽なんだよね」と言います。
『夫に間違いありません』第2話 松井玲奈

『夫に間違いありません』第2話 松井玲奈

それを聞いて聖子は複雑そうな表情を浮かべます。

なぜその人を結婚相手や恋人として選んだのか? その理由として「一緒にいて楽だから」という答えって、よく聞きますよね。私たちも「一緒にいて楽」という言葉を自然と受け入れ、また自分も使ってしまいますが、よくよく考えると、これって褒め言葉になるのでしょうか?

前向きに捉えると、素顔が出せて自然体で接することができる相手ということでしょうか。だから「気持ちが落ち着く」ということかもしれません。でも「楽」と言われて素直に喜べない人もいる気がします。

そもそも「楽」になりたいだけであれば、誰かと一緒にいる必要はないのではないか、とも思えてきます。一人で生活して、好きなものを食べて、行きたいところへ行って、やりたいことをやる。一方で、誰かと一緒にいるということは必ずどこかに制限がかかります。人と一緒にいるというのは、多かれ少なかれ、不自由さが求められるはずですから。

一樹や光聖にしても、「一緒にいて楽」というのは、自分は楽でいたいけど、でも誰かとも一緒にいたいという、ある意味の矛盾をはらんでいるように感じました。

良い意味で視聴者を欺いていくドラマ

『夫に間違いありません』第2話 安田顕

『夫に間違いありません』第2話 安田顕

また「一緒にいて楽」という言葉は、自分に与えられる責任から逃れているだけではないかと感じるのは、筆者だけでしょうか?

実際に一樹は第1話で、失踪した理由について「親父が死んでから、店の借金は減るどころかどんどん増えていくし、店を畳むにしたって、ここでしか働いたことない俺が家族を食わせていくなんて…、そういうのを考えていたら、なにもかも嫌になって」と聖子に打ち明けます。つまり一樹は現実から逃げたのです。家族を持つことへの責任を放棄したと言えます。だから、楽でいられる瑠美子との暮らしを選んだのではないでしょうか。

一樹が父親から店を継いだのも、もしかすると「楽だから」だったかもしれません。しかし結局は経営がうまくいかず、自分が抱えていた弱さやプレッシャーに飲まれてしまったと想像します。一度でも楽な方を選択すると、なかなかその流れに抗えなくなるものですから。
『夫に間違いありません』第2話 安田顕

『夫に間違いありません』第2話 安田顕

そんな一樹ですが、聖子のもとへ帰ってきて、名前も変えて暮らすようになってからは、心を入れ替えたようにも見えました。アルバイトに明け暮れ、給料が入ったら家族に仕送りします。子どもたちと過ごした日々を思い出して、クレーンゲームで取った景品のぬいぐるみをこっそり贈ろうとします。一樹の性根は心優しく、家族思いなのでしょう。

自分の責任を放棄して楽な方へ逃れた現実は変えようがありません。それでも再出発することは叶(かな)います。一樹にもそうなって欲しい――と思ったのですが、第2話後半でその期待が見事に裏切られてしまいます。『夫に間違いありません』はそうやって、良い意味で視聴者を欺いていくドラマなのかもしれません。一時たりとも気を緩めてはいけないとあらためて認識しました。
『夫に間違いありません』第2話 白宮みずほ

『夫に間違いありません』第2話 白宮みずほ

文:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
miyoka
0
夫に間違いありません
カンテレドーガ
カンテレ笑タイム
ハチエモン
カンテレアナウンサーチャンネル
カンテレドラマニア
ウェルチル
カンテレID