都築(長谷川慎)「一生懸命に選ぶこと自体が大切なんだ」“完璧じゃない”からこそ人を助けたい、カオナシ=萩田(曽田陵介)が迎える結末は【ドラマ『顔のない患者-救うか、裁くか-』】

都築(長谷川慎)「一生懸命に選ぶこと自体が大切なんだ」“完璧じゃない”からこそ人を助けたい、カオナシ=萩田(曽田陵介)が迎える結末は【ドラマ『顔のない患者-救うか、裁くか-』】

長谷川慎(THE RAMPAGE)主演『顔のない患者-救うか、裁くか-』 最終話レビュー

外科医・都築亮(長谷川慎)が“命の選択”を迫られてきたドラマ『顔のない患者-救うか、裁くか-』(カンテレ制作)が、3月12日に最終回を迎えました。都築を執拗(しつよう)に追い詰めてきた“カオナシ”の正体が、同僚の看護師・萩田太朗(曽田陵介)だと判明し、彼の悲壮な過去が語られた前回。萩田が都築に突きつけた、最後にして最悪の“命の選択”がどのような結末を辿(たど)ったのかが描かれました。全10話を通して描かれた、本作の真実を振り返ります。

(以降、最終話のネタバレを含みます)

◆「亮ちゃん、私を殺して…」——最終局面の“命の選択”と「1224」

最終回の冒頭、都築はあまりにも残酷な光景のなかに立たされていました。目の前には拘束された妻・美保(さかたりさ)がおり、彼女は「私が死ぬのが一番良いの」と、都築に自分を殺して病院の1,000人の命を救うよう懇願します。一方、狂気に憑(と)りつかれた萩田は「1,000人の命と奥さん、どっち選ぶ?」と笑いながら問いかけ、都築の手にナイフを握らせます。

ドラマ『顔のない患者-救うか、裁くか-』最終話 萩田太朗(曽田陵介)、都築美保(さかたりさ)

ドラマ『顔のない患者-救うか、裁くか-』最終話 都築亮(長谷川慎)、萩田太朗(曽田陵介)

絶体絶命の瞬間、現場に駆けつけた刑事・鷲尾和臣(飯田基祐)の放った銃弾が萩田を射抜きますが、事態は収束しませんでした。病院に仕掛けられた爆弾は萩田のスマホで制御されており、解除にはパスワードが必要だったのです。刻一刻と迫るタイムリミットを前に、誰もが絶望したその時、声を上げたのは元凶であるはずの爆弾魔・朝比奈伊織(高橋侃)でした。自分を復讐(ふくしゅう)の道具として利用し続けた萩田への反発からか、彼は「1224」というパスワードを都築に告げます。皮肉にも悲劇の始まりのクリスマスイブの日付が、最悪の連鎖を止める鍵となったのです。

◆正解のない世界で“光”を選び続ける都築の覚悟

物語の全編を通して、萩田は都築に“命の優先順位”を突きつけ、彼の不完全さを断罪してきました。しかし、追い詰められた果てに都築が辿り着いたのは、自らの“弱さ”を認めた上での強固な決意でした。

「みんなは医者が間違わないものだと思ってる。でも…僕は人間だ。完璧じゃない。迷うし、間違うし、弱い。それでも、考えて、悩んで、無力さに打ちのめされても、人を助けようとする。それが僕の仕事だ」

この言葉は、聖人君子ではない一人の人間としての、都築の血を吐くような叫びです。彼は、命を天秤(てんびん)にかけることそのものを拒絶し、たとえ選んだ道が正しかったのか分からなくても、「一生懸命に選ぶこと自体が大切なんだ」という真理に至りました。

ドラマ『顔のない患者-救うか、裁くか-』最終話 都築亮(長谷川慎)


「選択を後悔しても、その道がどこに辿り着いたかなんて、今となってはわからない」。


ラストに都築が語ったこのメッセージは、医師である都築だけに向けられたものではありません。私たちは日々、無数の選択のなかに生きています。そのすべてが幸福な未来に繋(つな)がるとは限りません。しかしそれでも迷いながら光の方へと手を伸ばし続け、選択し続けること。それこそが、人が生きていく上での誠実さなのだと、本作は深く問いかけてきました。

◆奪われた未来に灯る、それぞれの「再生」

都築の結論がきれい事で終わらなかったのは、周囲の人物たちもまた、それぞれの場所で“光”の方を選び直していったからです。
顔を潰され、ギターを弾く指まで失った弟・都築悠人(伊藤絃)は、それでも死ぬまで音楽に生きる道を選びます。
内通者として利用され、母の手術費を背負わされていた泉みなみ(樋口日奈)もまた、すべてを失うのではなく、母と笑顔で過ごせる“日々”へ踏み出していく。
爆弾魔・朝比奈伊織(高橋侃)も、ただの“悪”として固定されない。萩田に壊され、支配され、地獄を見たからこそ、最後に「萩田の思い通りにしない」と爆弾を止める側へ回る。さらに、介護士に礼を言う所作に、人の心を取り戻し、罪と向き合う入口が見えました。
そして、朝比奈を憎んでいた看護師・坂口麻子(遊井亮子)も、復讐心に飲まれて萩田のようにはならない。表情は固いままでも、目の前の現実に必要な行動を選び、憎悪ではなく“職業としての自分”を踏みとどまらせました。
誰かが完璧に救われる結末ではありませんが、それでも“光”へ向かうことを、登場人物たちがそれぞれに選びとる。それこそが最終回で描かれた希望でした。

ドラマ『顔のない患者-救うか、裁くか-』最終話 泉みなみ(樋口日奈)

◆どうしたら萩田を救うことができたのか

ただ、萩田だけは最後まで“光”を見出すことができませんでした。自らの罪を悔い改める描写もなく、逃亡します。彼がなぜここまで深く“闇”に沈んでしまったのか。それは、彼の養育環境において唯一の光が姉・茉莉(松永有紗)しかいなかったという孤独に起因しています。都築が美保の命を優先した結果、茉莉が救われなかったそのときに、もし彼に寄り添う誰かがいたならば、悲劇は食い止められたのかもしれません。愛する姉を失った絶望のなかで、誰とも痛みを分かち合えず、ただ憎悪だけを栄養にして生きてきた萩田にとって、復讐以外の生きる術が残されていなかったのかもしれません。茉莉と幸せそうに笑い合う幻影が現れるラストシーンは、彼の“闇”がまだ晴れていないことを象徴しているようでした。

ドラマ『顔のない患者-救うか、裁くか-』最終話 萩田太朗(曽田陵介)

最終章は、過酷な葛藤のなかで“光”を求め続けた都築と、憎悪という“闇”に囚われ続けた萩田の対比が、最後まで鮮烈でした。「完璧じゃない人間が、それでも人を助けようとする」——都築の弱さと強さを同時に立ち上げた長谷川慎。喪失に溺れ、正義の言葉で暴力を正当化しながら壊れていく萩田を、恐ろしいほど生々しく体現した曽田陵介。ふたりの高い演技力があったからこそ、本作はサスペンスに留まらない、人間の真理を描く物語として心に残りました。

ドラマ『顔のない患者-救うか、裁くか-』最終話 萩田太朗(曽田陵介)、都築亮(長谷川慎)

文:鈴木まこと
編集プロダクション・広告制作会社で編集・ディレクター・ライターとして活動。年間100本以上観るほどドラマ好きで、エンタメライターとしても執筆中。
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